ビスカスの故障、ちょっと前のスズキ車で頻繁に発生しました。
ビスカスと聞けば整備士の中では
「うわっ、また壊れた?」
というくらいよく壊れました。あまり特定のメーカー名を書きたくないんですが、スズキのビスカスがよーく壊れてしまいます。
まず、ビスカスの役割とどこについているのか?
スズキの場合は前輪と後輪をつなぐプロペラシャフトの真ん中についています。4WDの車です。
ビスカスが何をしているかというと、前輪と後輪の架け橋みたいなものです。スズキの場合はプロペラシャフトの真ん中についているわけで、前輪と後輪の回転差に対して差動制限をしている。ビスカスの中には数枚のフリクションプレートとシリコンオイルが封入されています。
シリコンオイルの粘性を利用してプレートを繋げたり離したりと差動の制限をかけることが簡単にできるわけです。特にギヤオイルなどを交換する必要もないためメンテナンス性にもすぐれている。
ホンダのバモスやアクティの4WDに乗ったことがある人ならわかると思いますが、バモスやアクティの車庫入れって大変です。なぜならば、バモス・アクティの4WDはプロペラシャフト直結。
バモスでマニュアルの4WDだと、車庫入れをしようとすると車体がスムーズに動かずにギクシャク抵抗を感じてすごく車庫入れしにくくなります。
それをスズキの場合、ビスカスがうまく緩和してくれているわけです。
ビスカスがないとタイトコーナーブレーキング現象と呼ばれる現象に悩まされるのです。
タイトコーナーブレーキング現象は、ブレーキを引きずったような感じになります。車庫入れをしようと、ハンドルを思い切り切り返しながらクラッチをつないで行くと、ブレーキを引きずったような症状が出てしまい、うまく車庫入れするのが難しい訳です。
この現象を緩和してくれるのが正にビスカスカップリングなんです。タイトコーナーブレーキング現象が起こらないように、駆動を制限してくれる。スムーズにタイトコーナーが曲がれるわけです。
ではビスカスが壊れたらどうなるか?これは、ハンドルを思い切りきった状態で旋回しようとすると
「ガコガコガコガコ」
といったジャダーが発生するのがわかります。これはかなり不快なジャダー現象です。
急カーブのようにRがきついカーブになればなるほどです。ハンドルの舵角が大きくなればなるほど
「ガコガコガコガコ」
という音が大きく感じられるようになります。ビスカスが壊れたらもはや交換するしか他ありません。新しい年式のものだったら、保証修理がきくでしょうが実費で直さないといけないケースも出てきます。
もしビスカスが壊れてしまい、交換するとなると一体いくらかかるのか?
部品がめちゃくちゃ高いです。
ビスカスの純正定価が65000円。
ロックナットが270円。
工賃を合わせると実に8万円ちかい費用がかかります。
幸いにも最近はリビルト品も出回ってきました。
相場は4万円前後くらいです。費用を抑えるにはリビルト品を使って修理するのがいいでしょう。
それでは一体なんでビスカスが壊れるのか?その原因はなんなのか?
一連のスズキ車に限って言えば製品不良だった。ということに尽きます。メーカーが保証延長出してるくらいだから。
しかし、ビスカスを長持ちさせたいとなるとどういったところに気をつければいいのか?なんで壊れちゃうのか?
ビスカスの仕組みは、インナープレートとアウタープレートが交互に配置されています。その内部をシリコンオイルが封入されています。前後の回転差が同じ状態では、プレートとオイルが一体となって回転するため、トルクが伝わりません。
回転差が発生すると、シリコンオイルの粘度によって回転速度の遅いプレートを引っ張って増速。回転速度の速いプレートを引き戻す格好になり、トルクを伝えます。
回転差が非常に大きくなると、熱が発生してオイルが膨張。膨張されたオイルによってインナープレートとアウタープレートが密着状態になり直結状態になります。
つまり、ビスカスが差動しつづける時間が長くなると壊れやすくなります。ビスカスが差動している時、シリコンオイルの温度が上昇し続けます。ある一定以上の温度域に達すると、シリコンオイルが急速に劣化して性能を保てなくなる。
すると、壊れてしまうという流れ。エンジンオイルもそうですが、オイルと名がつくものは一定以上の温度を超えてしまうと急速に劣化する性質をもってます。
シリコンオイルでも同じことが言えるのです。
では、どうすればいいのか?基本的なことに気をつける他ないのです。例えばタイヤサイズをきちんと揃えるということ。前後のタイヤサイズを変えて走るというのは言語道断。タイヤが減ってるだけでも外径が変わります。
タイヤはきちんとローテーションして均等に減らしていくこと。減ったからといって2本だけ交換というのはあまり良くない。
あとはタイヤの空気圧を定期的にチェックすること。空気が減ると当然タイヤの外径が変わると同じことですからね。
最近のスズキ車ではビスカスが壊れた!という話はなくなってきたので、ビスカスの製品は向上したのは間違いないと思います。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。