エンジンからキュルキュル音!ベルト鳴きがひどい原因がまさかのエンジン載せ替えへ?

お客さんから整備の相談を受けました。

車がひどい音が出る時があるというのです。そのひどい音は夜に会社から家へ帰ろうと、エンジンをかけて走り出した時。ギャーという音がするというのです。

おそらくはベルト鳴きの事を言ってる可能性が高い為、その場で再現をすることに。車の異音は自分の経験をもとに整備すると、たまに食い違いが発生します。

その為、なるべく本人がいる前で再現をすることにしています。

ベルト鳴きの再現は比較的簡単です。エンジンをかける。エアコンを入れる。ライトをONにする。サイドブレーキを思いっきり引く。Dレンジに入れて、その状態でアクセルをあおってあげる。

いわゆるATのストールテストに近い負荷を車に与えてあげる。これをやるとかなりの確率でベルト鳴きが再現できます。

思惑通り、オーナーはベルト鳴きが困っていることが分かったので、修理メニューを提案することに。

ベルトがカチカチで亀裂が凄い!が、それだけではない?

ベルト鳴きの原因って、一番はベルトの劣化があげられます。長らく使ってくると、ベルトが硬くなり、亀裂が入ってきます。

ベルトが細くなってくるので、プーリーとのあたり面が少なくなるためグリップしなくなる。

大半はベルトを交換することで改善します。しかし、ある程度の距離を乗っている場合、金属製のプーリー溝も減ってきます。

どうしてもベルト鳴きを抑えたいのなら、ベルトとプーリーの同時交換が必要になります。

そして、ベルト鳴きなどの相談を受ける場合、僕は必ず純正部品をオーダーしています。

社外部品の中には、材質がイマイチでグリップ力にかけるものがあるからです。

今回は走行距離も8万キロ以上走っていたため、プーリーも交換することにしました。

ベルト鳴きからエンジンの損傷が発覚!?

ベルトとプーリーを交換しようと、クランクシャフトプーリーを外そうとしたら違和感を感じました。

よく見てみると、まさかのプーリーにクラックが入っています。

もしかして・・・シャフトは・・・?

ご覧の通りの有様です。

これが何を意味するか?

何故このようなことが起きているのか?

エンジンはスズキのK6Aです。整備歴を手繰っていくと、一度もクランクプーリーは脱着されていないようです。

プーリーボルトの手ごたえからも、一度も外していないと気がします。

どうしてこんなことになっているのか?

今スズキではR06Aのリコールが出ています。その内容がクランクシャフトプーリーの締め付けトルクが不足しているというもの。

このリコールは最悪クランクシャフトが駄目になるケースがあるので、原因がプーリーボルトにある場合修理代はスズキが保証してくれるようになります。

R06Aのリコールと全く同じ故障が、ひとつ前のK6Aで発生しているのはなんとも気持ちがいいものではありません。

クランクプーリーを見たらキー溝は広がってるしで、クランクシャフトもおそらくは駄目だろうなと。

クランクシャフトの交換すなわちエンジンのOHを意味する

それでは、この後の展開はどうなのか?

クランクシャフトとプーリーがきちんと連結されていなければ、シャフトの動力がオルタネーターとエアコンコンプレッサに伝わりません。

奇跡的に損傷したキーをクランクプーリーから抜けたとしても、おそらくシャフトの傷も広がっているため、今後トラブルが起きる可能性が高い。

ではクランクシャフトを交換すればどうか?クランクシャフトの交換すなわちエンジンのオーバーホールを意味します。

この車種でエンジンの脱着は6.4時間という指数。工賃でおよそ5万円です。

ではエンジンのOHになるとどうか?指数は17.5時間に及び、工賃でおよそ14万円です。

エンジンの載せ替えるとなると、リビルトエンジンを使うのが理想的。K6Aのリビルトが17万円くらい(ネットででまわってるリビルトエンジンの価格)。油脂類などを計算すると、およそ25万円コースになります。

もちろん安い中古エンジンに載せ替えればもっと価格は抑えられます。

ではクランクシャフトを交換するとなるとどうか?エンジンガスケットキットで1万円弱。クランクシャフトや各種のメタル、できればバルブステムシールなんかは最低限交換したい・・・。ウォーターポンプなんかも変えたほうがいいね。

と、計算していくと、リビルトエンジンに載せ替えるのと同等位の価格になってしまいます。

これはクランクシャフト交換の最低限のメニュー。本来ならピストンリングも交換したいしバルブのあたりもいまいちならシートカットもしたいところ。

そうこうしてればおそらくリビルトの方が安上がりになってしまうのが現実です。

知らないところでクランクプーリーボルトが脱着されていて、そこで締め付けトルクが不足していたのが原因なら、緩める時の手ごたえがもっと弱かったはず。

そうではないところをみると、うーん・・・。と悩んでしまいます。

もし今回ベルトの交換だけを提案していたら、後にクランクプーリーがさらに問題を起こしていて、ベルトを変えてもらってからおかしくなった!と僕らが責められたかもしれません。

いくらクランクプーリーは別物ですと主張しても、お客さんは納得しないでしょうね。

今回は最初からプーリーの交換も提案しておいた為、それは防げましたけど。なんとも腑に落ちないエンジンだなって思います。さあ、どうする?

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