今の車、エンジンオイルの粘度がどんどんと低くなってきています。15年前だったら5W-30でも低粘度といわれた時代でした。
それが0W-20が出たと思えば、0W-16が登場。現在新車充填されている最低粘度のオイルは0W-8まで下がってきました。
昔と比べると考えられないくらいの低粘度です。
現在新車充填されている車のスタンダードなオイルはSNの0W-20やSN Plusの0W-16です。ただし、同じモデルでもターボがついていると5Wー30指定になっているのがほとんどです。
そもそもなぜターボエンジンには高粘度オイルが必要なのか?
NAエンジンとターボエンジンの最大の違いは、ターボがついているかどうかということ。これは当たり前です。
では、エンジン本体はどのように違うのか?一般的にターボエンジンのほうが圧縮比を下げてあります。
例えばスイフトを例に挙げてみると、通常のスイフトはエンジンを2種類積んでいます。1000ccと1200cc。それぞれK10CとK12C。圧縮比は10と12.5になっています。
スイフトスポーツに搭載されてるエンジンはK14Cで1400ccなので単純な比較ができないのですが、圧縮9.9となっています。NAエンジンに比べると圧縮比を落とされています。
この理由はターボの特性を知るとわかりやすいです。
ターボがそもそも何をしているのかというと、排気ガスを利用してコンプレッサーをタービンを回し、通常以上の空気をエンジンに押し込んでいます。
車が自然に吸い込める空気って普通は決まっています。人間でもそうですよね。そこに過給器をつけて必要以上の空気をエンジンに取り込んでいるのです。
NAは自然吸気エンジンと呼ばれています。ターボは自然吸気で吸い込める以上の空気をシリンダーへ押し込んでいます。これにより排気量以上の出力を得ることができるわけです。
その弊害として、燃焼のコントロールが難しくてノッキングが出やすくなる。ノッキングが発生するとエンジンに深刻なダメージが及びます。
せっかくターボをつけて出力を上げてもノッキングがでてしまえば意味がありません。これを防ぐために圧縮比を下げて燃焼をコントロールしています。ノックセンサが採用されるようになってからはターボの圧縮比もかなり上がってきましたが・・
ターボエンジンとNAエンジンの違いは圧縮比が違うこと。それに伴いピストンの形状を変更して圧縮を下げてる車もありますし、ヘッドガスケットの厚みを変更して圧縮を下げている車もあります。
エンジン本体にも若干の変更がかけられています。
ここからが本題。エンジン内部の仕様も若干違いますが、何故ターボエンジンには高粘度オイルが必要になるのか?
オイルの目的はNAだろうがターボだろうが変わりません。主に潤滑と冷却がエンジンにとって最重要です。オイルの粘度を高くする必要があるということは、熱に強くあってほしいということ。
ターボエンジンはNAエンジンに比べると発熱量が高いです。そして、タービンもかなりの熱を発生します。このNAエンジンとの発熱量の違いを保護するために、高粘度のエンジンオイルを使う必要があります。
それにしてもオイルの性能がかなり上がってきているので、昔よりも低粘度のオイルをターボも使っています。
では逆にNAエンジンに高粘度オイルをいれたらどうなるのか?
これははっきり言ってサーキット走行を過激に行うなど、スポーツ走行に特化した使い方をするのであればそれもありだと言えます。
しかし日常使いでいたずらに高粘度オイルを入れるとデメリットのほうが多くなります。まず考えられるデメリットが始動性の悪化と燃費の悪化。特に外気温が低い冬ですね。
高粘度オイルを入れるということは、それだけ抵抗が増えます。オイルによるフリクションが増えるので燃費も悪化するし、朝一番の始動性も悪くなります。
オイル交換を自分でやってる人はイメージしやすい。車を走らせた後オイル交換のためにオイルを抜くと、水のような勢いでジャーと排出されます。それと比べて冷えた新油をエンジンに注ぐときは、オイルが固くてドロドロのためジョッキを使ってもなかなかエンジン内に入りません。
これは何故か?当然のことですけどオイルは熱を加えると柔らかくなります。冬場にギヤオイルを交換する時などストーブの前で温めておけと昔先輩整備士に言われたほど。
発熱量の多いターボエンジンで高粘度オイルを使うのと、そうでないNAエンジンで高粘度オイルを使うのとでは、完全暖機後であっても若干の差が出てくるのがわかります。
それに加えてエンジンを設計する時にオイルクリアランスもち密に計算されています。いたずらに高粘度オイルを入れると、このクリアランスの問題で逆に潤滑不良に陥りかねません。
今のエンジンオイルは低粘度であってもちゃんとした潤滑性能を誇っています。NAエンジンに高粘度オイルを入れたいのであれば、説明書に記載がある粘度域までとしてください。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。