トヨタ バルブマチックエンジンの作動解説

本日はバルブマチックエンジンについて

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バルブマチックという機構は、ホンダのVTECにかなり似ている機構です。
具体的に何をしているかというと、

バルブによって吸入空気をコントロールする

というものが一番分かりやすい説明です。
では、バルブによって吸入空気量をコントロールすると何がメリットなのかというと、

吸排気のときに生じるポンピングロスを低減できるということ

さらに詳しく解説すると、ガソリンエンジンはインテークマニホールドにスロットルバルブを設けて、スロットルバルブを開いたり閉じたりして吸入空気量を今までは制御していました。

ですが、スロットルバルブで吸入吸気量を制御すると、スロットルオフの時にインテークマニホールド内の負圧が上昇する。
そうなると、ピストンの上下運動に抵抗が生じてくるわけですね。このポンピングロスというものは、相当なもので、これを改善するためにバルブマチックが産まれたということですね。

最初はBMWのバルブトニック。
トヨタはバルブマチック
日産はVVELという機構になります。全てバルブによる吸入空気量制御を目指した機構です。

前置きが長くなりましたが、このバルブマチックについて本日は勉強しましょう。
現在トヨタのバルブマチックエンジンで主流は

3ZR-FAE
2ZR-FAE

の2つのエンジン。これから拡大が図られると思います。FAEのAが付くとバルブマチックの型式になります。

クランクシャフトはオフセットクランクを採用しています。ピストンピントクランク軸が平行でない。
少しずれているものです。コンロッドをまっすぐに押す力が生まれて効率があがってるそうです。

今回取り上げるのはZRR75という型式のボクシーに搭載されている3ZR-FAE。
このエンジンのすごいところは可変バルブタイミング機構をデュアルで備えて尚且つ、バルブトニックを搭載していること。

今まで可変バルブタイミング機構はインテーク側だけに使われてきたのが多かった。
それがこの3ZR-FAEにはインテークとエキゾーストの両方のカムシャフトにVVTを取り付け、最適なタイミングに両方コントロールしています。
それに加えてバルブリフト量を制御するハイテクエンジンになります。

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バルブマチック搭載のZRR75Wのボクシー

バルブマチックでバルブリフト量で吸入空気量を制御すれば理論上はスロットルバルブは必要なくなります。
しかしこの3ZR-FAEには電子制御スロットルが備わっている。ではなぜか?

これは、最近のディーゼルエンジンと共通した狙いがあります。それは排ガス対策です。

ディーゼルエンジンにもスロットルバルブはありません。しかし現在のものは、不要なはずのスロットルバルブらしきものを備え付けてきています。

それは吸気しぼりと呼ばれるメカニズムになります。
じゃあ何でスロットルを持たせるのか?

バルブマチックにスロットルが必要な理由はEGRを最大限に働かせるためであるということ。

EGRは排ガスの一部を吸気側に戻す装置です。排ガスを吸入混合気に混ぜることによって燃焼温度の低下を得ることができて、NOxの低減を図ることができる。

しかし、バルブマチックのようにスロットルが必要なくて、もし付いていなかったら。
前述したように、スロットルがないということはインテークマニホールド内は理論上は殆ど大気圧になっている。
つまりバルブの入り口まで負圧が発生していないので、EGRで取り込んだ排ガスを旨くインテーク側に吸い込ませることができなくなる。
なので、EGRを働かせるときはスロットルを閉じて、負圧を発生させているということだそうです。

これに関連した事項になりますが、バルブマチックエンジンはいくらスロットルバルブを持っているといっても従来のガソリンエンジンのスロットルバルブのように閉じているわけではない。
開いている時のほうが多いので、インテークマニホールドに負圧が発生しにくい。負圧が発生しにくいということはエンジンブレーキが弱い・ブレーキブースターの作用が弱い
ということになります。

そのためこのバルブマチックエンジンでは、負圧発生用にバキュームポンプをバルブマチックアクチュエーターの横に備え付けてブレーキングに必要な負圧を発生させています。面白いことにこのボクシーは、ブレーキペダルをがんがんとあおってやると、


「負圧が不足しました」ということで、ブレーキ警告灯を点灯させます
。負圧が復活したら消える。
この負圧が不足したためにブレーキ警告灯が点灯したら、バキュームポンプを整備しないといけない。
通常20万キロ程度はもつそうです。

バルブマチックの話しに戻りますが、バルブリフト量を制御するためのアクチュエーター

バルブマチックアクチュエーターは、電動のモーターを使っています。油圧制御では細かく制御できないため、DCブラシレスモーターを使っています。
これにより1回転98ステップという細かい制御を可能としています。

ちなみにモーター1回転は0,65mmのバルブリフトに相当します。これを98で割ると、最小値で0,0068mmというリフト量になります。
最大値はモーター10回転分の65mmのバルブリフトを実現しているそうです。

めちゃくちゃ細かい制御がなされています。

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バルブマチックエンジンのカムシャフトハウジングASSY

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左手前がバルブマチックアクチュエーター。中にDCブラシレスモーターが見えます。
ハイブリッドモーターと似たようなものだそうです。
このモーターが回転することによってバルブリフト量が変化する

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青い丸がスライダと呼ばれる機構。これがアクチュエーターが回転すると左右に動きます。
そうすると、赤丸の遥動アームと呼ばれる部分が下へ行ったり上へ行ったりします。
遥動アームがバルブを押します。遥動アームが上下することで、バルブのリフト量が変化するといった仕組みです。
黄色い丸はローラーロッカーアーム。カムシャフトに接触する普通のロッカーアームです。

実際に手でバルブマチックアクチュエーターを動かしてみます。
作動が分かりやすいように、10回転まわして戻します。

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モーターを10回転時計回りに回すと左画像のシャフトが伸びてくる。
それに伴いスライダと呼ばれるヘリカルギヤが右へ移動遥動アームが上の方向へ戻ってきているつまりバルブとの距離が遠くなるのでリフト量は小となります。

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モーターを10回転元に戻すとと左画像のシャフトが縮んでくる。
それに伴いスライダと呼ばれるヘリカルギヤが左へ移動遥動アームが下の方向へ移動しているつまりバルブとの距離が近くなるのでリフト量は大となります。

これは10回転バルブマチックアクチューエーターをまわした最大の移動になります。
これを1回転98ステップという超細かい作動を制御することをしています。

これがバルブマチックのバルブリフト量を変化させる仕組みです。

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ちなみに、バルブマチックアクチュエーターのカバーはこのような回路で覆われています。
うかつにエンジンルームをスチーム洗浄するとすぐに回路がパンクするので気をつけましょう。
動作確認のために、直結で電源を入れるなんてこともモーターの基盤を破壊する危険がかなり高いのでやめましょう。

ちなみにこのバルブマチックですが、部品は全てASSY交換となります。
どのくらいASSYかというと、何も細かい設定はなくて、カムシャフトハウジングASSYという

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これが部品単体となるそうです。価格は82110円。平成21年度での部品価格。現在は値段が若干変更になっているかもしれません。

バルブマチックはオイル管理が命です。もしオイル交換を怠れば、バキュームポンプも壊れちゃうだろうしいろいろな弊害が生まれて高額な修理になってしまいますのでこまめにオイルを交換しましょう。

本日はトヨタのバルブマチックエンジンの作動についてでした。

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コメント

  1. 修理屋35歳 より:

    バルブトロニック、バルブマチック等のシステムは勉強不足でした。わかりやすくて納得できました。さらに突っ込んだことは自分で調べてみようと思います。
    技術が進歩するごとに、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの差がなくなっていく気がします。根本的なスパークプラグの有無、だけの差になってきた感じもしますね。

  2. MHO より:

    今度のスカイアクティブRが興味津々です。
    それにしても10年でエンジンもかなり進化しましたよね

  3. 修理屋35歳 より:

    モーターショー行きました。やはり、RXのコンセプトカーにはたくさん人がいましたね。2年後のモーターショーには、開発段階のエンジンが登場していたらいいなと思います。スカイアクティブGとDの技術がロータリーにも活かされると思うと、すごいものができるんじゃないかと期待してしまいます。

  4. MHO より:

    スカイアクティブRは楽しみですね〜