お客さんにたまに聞かれる質問で
「なんで巷には45分車検などがあるのに、車検に2日間かかるんですか?」
というものがあります。
これはもっともな質問で、僕も整備工場に就職したての頃って同じ疑問を持っていました。なんで車検は2日間も預かるのか?
うちの会社ではさすがに45分車検というものはやっていませんが、1日車検というものはやっています。朝預かって、夕方お届けというコースです。
通常の車検と金額が変わるのかというと、特にそういうわけではありません。ですが1日車検が必ず可能かどうかというのは車を預かるまで確証できません。
車検時間を短縮するために何が必要なのかというと、
「交換する部品が少ないほどいい」
ということが挙げられます。汎用品の消耗部品はうちの工場でもストックしています。例えばワイパーのゴムだったりオイルフィルター。よくでる品番のスパークプラグや各種電球類です。
これらストックしている消耗部品のみの交換で保安基準に適合できる状態にできれば1日車検は可能となります。
逆に1日車検ができないなと、頭をよぎる場合。
外装の灯火類が割れている場合。外装灯火が割れていると、部品の多くが純正設定しかなかったりします。するとどうなるか?
社外部品であれば、各種部品やさんでストックがある場合があります。なので、市内の部品やさんを当たったら同日中に配達してくれる。
ですが純正部品だけしか設定がなくて、部品メーカーにメーカー在庫がない時点で部品の到着は翌日以降になってしまう。つまり1日車検が成立しないということです。
45分車検をやっている業者を想像すると、おそらく2人がかりで整備をしてるんじゃないかな。実際に僕はやったことがないので、想像の範囲内ですけど。
整備士が二人いるて、ツーマンセルで作業をすると非常に効率がよくなることがあります。例えば灯火類の点検やタイヤの脱着など。灯火類は一人が点灯させてもう一人が後ろや前で確認する。
タイヤなどは左右対称に作業ができる。
基本となる保安基準に適合しているかどうかを確認しながらどんどんと作業をしていくわけですね。
45分車検が成立するのはおそらく新車からの初車検や2回目の車検くらいまでですね。これ以降になると、部品交換がある程度でてくるので45分で完成検査をするのは厳しくなる。ニューサービスというのがあって、たとえブレーキパッドが1mmしか残量残っていなくてもユーザーにきちんと伝えて了承を貰えば、車検整備で完成検査をしても問題はないんです。車検の検査時に規定の制動力さえ出ていれば。
ちゃんとわかってるユーザー相手ならいいんですが、そうでない人にはあまりおすすめできないですよね。
ディーラーなど決まった車種を車検整備するのであれば、あるいは展示車などがあるので、仮に部品が間に合わない灯火類などでもお客さんの了承を得て、展示車から部品を移植するという手段も最悪できたりしますよね。
車検整備の肝となるのは部品の入手時間。これが第一です。それではなぜ多くの整備工場は車検を2日間預かるか?
うちの会社もスタンダードは車検整備の場合2日間時間をいただいています。この理由はなぜか?
それは車検証の更新作業までをきちんと最後まで行いたいからです。車検整備が終わって保安基準適合証を自動車検査員が証明して、事業上管理責任者が検印を押した時点で車検の検査は終わります。
その時点で適合標章というものを車に貼り付ければ、車は運行できるのです。これが1日車検の場合。
あとは保安基準適合証とOCR、印紙に車検証など一式揃えて陸運局で新しい車検証の更新作業をします。この登録作業の為に時間を余計に1日もらっているわけ。
おそらく陸運局の隣にある指定工場とかならば、1日車検で車検証の発行まで余裕でしょう。ですが立地条件によっては陸事までいくのに時間がかかってしまう。
当社の場合、車検整備で預かったら1日目で整備作業を終わらせて完成検査まで持っていきます。そして翌日の午前中に陸事へいって登録作業をする。出来上がるのが大体午後くらい。
そして納車。このような流れになります。指定工場も登録作業はまとめて行う方が効率がいいので、10台車検が入っていれば登録作業はある程度まとめて陸事へ持ち込みます。
一番怖いのが1日車検で適合標章で出した後のこと。車検証を後日発行したら、本来車検証は車に備え付けなければいけません。
きちんと手渡しをするようにしていますが、どうしても郵送せざるを得ない場合。あとはユーザー様自身の手によって、車検ステッカーを貼って車検証も保管してもらうようなる。
これが確実にできないと次回車検に来た時に、車検ステッカーが貼ってなかったり車検証がなくなっていたりすることがしょっちゅうです。業者はこれを一番恐れていますよね。
個人の車検証ならまだしも、ある程度大きい会社の車だと車検証を再発行するための委任状などにもきちんとした社印を押してもらわないといけない。再発行するだけで余計に1日かかります。
整備工場が二日間車検整備を預かる理由は、新しい車検証を車の中にきちんと納めたいからというところもありますね。
今後車検証がICカードになるという報道が出ていますが、これなら更新作業が楽になるかもしれないですよね。車検整備が終わったら、会社にあるカードリーダライタでデータを上書きして車両に戻す。
わざわざ陸事に行かなくてもICカード車検証を更新できる。車から持ち出す必要性がなくなります。
ICカード車検証が実用されれば新車にICカード車検証入れというスペースが多分できるんだろうな。ダッシュボードを開けてそのくぼみにスライドして入れるとかそういうスペース。
いずれにしろ早く実装されて欲しいです。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。