12月5日よりとうとう日本でもマツダのスカイアクティブXが発売となります。欧州ではすでに販売されていた同エンジン。
ガソリンエンジンなのにディーゼルエンジンのようにガソリンを燃やす夢のようなエンジンです。
通常ガソリンエンジンは混合気にスパークプラグで火花を飛ばして、燃料を燃やし動力を得ています。これに対しディーゼルエンジンはスパークプラグを持っていません。どうやって燃料を燃やしているのかというと、圧縮圧力で発生する熱を利用して自己着火させています。
ガソリンエンジンを自己着火させるというのがマツダスカイアクティブXです。どこの自動車メーカーが成しえなかった技術をマツダが作り上げた。すごい!
ただスカイアクティブXにはスパークプラグもついてます。これは全ての使用域で自己着火ができるかというと、難しい。特定の回転域や負荷などではプラグを使って通常燃焼も行っている。
SPCCIと呼ばれ、火花点火制御圧縮着火というシステムになります。正確にかけばガソリン車のようにプラグも使うときもあれば、完全ディーゼルのように自己着火させることもあるというエンジンです。
それにしたって大した技術なのは間違いありません。
そのスカイアクティブXの日本バージョンのスペックが公開されました。まず気になる燃費ですが、1リットル当たりWLTCモードで16.2~17.8kmとなっています。
ちょっと詳しくスペック表を見てみます。これはハッチバックモデルを参照に書いています。
一番燃費がいいスカイアクティブXは2WDのFFのマニュアルモデルです。X PROACTIVE/X PROACTIVE Touring Selectionの2WDマニュアルの16インチモデルが17.8kmリットルです。
市街地モードでは14.3kmリットル
郊外モードでは18.2kmリットル
高速道路モードでは19.6kmリットル
いずれも一番燃費のよい2WDマニュアル16インチモデルですね。
これに対して燃費が厳しいモデルは4WDのAT。WLTCモードで16.2kmリットル。
市街地モードでは12.7kmリットル
郊外モードでは16.5kmリットル
高速道路モードでは18.1kmリットル
となっています。
参考までに1.5リッタースカイアクティブGのWLTCモード燃費は16.6~15.8kmリットル。(FFと4WD)
2.0リッタースカイアクティブGのWLTCモード燃費は15.6kmリットル。(駆動はFFのみ)
さらに1.8リッタースカイアクティブDのWLTCモード燃費は18.8~19.8kmリットルです。
続いて圧縮比です。欧州に先行販売されているスカイアクティブXは16.3と、かなりの高圧縮比だったのに対して12月5日から販売される日本仕様の圧縮比は15.0となっています。
参考までにスカイアクティブGは圧縮比14.0。実はこの数字も現在ほかの自動車メーカーでは到達できていない数値です。これをさらに1.0高めているのが日本仕様のスカイアクティブX。ポテンシャル的には16.3が先行して販売されているので、欧州モデルに比べると安全マージンを取っています。
この理由は欧州と日本で販売されているガソリンのオクタン価によるものです。日本のレギュラーガソリンだと、オクタン価が低いので欧州モデルのスカイアクティブXを持ってくると、性能を発揮できない。その為圧縮を落としています。
レギュラーでも使えるし、ハイオクを入れればさらに性能が上がる
「ハイオク推奨」のエンジンとなっています。
まあまあ燃費と圧縮比はわかった。スカイアクティブXが夢なエンジンなのもわかった。
それではそれぞれの価格差はどのくらいか?
まずマツダ3のハッチバックで一番安いモデルの値段は何か?
1.5リットルスカイアクティブGを搭載する2WDモデルです。なぜかATとマニュアルが同じ値段で222万1389円です。
これに対して2.0リットルのスカイアクティブGで一番安いのは20Sプロアクティブ2WDで251万5741円。
続いて1.8スカイアクティブDで一番安いのはXDプロアクティブの2WDで279万741円。
最後にスカイアクティブXで一番安いのはXプロアクティブの2WDで319万8148円。
最安いモデルで比較すると、1.5スカイアクティブGの222万1389円に対してスカイアクティブXは319万8148円。ただこの2つを比較するのはちょとまちがっています。なぜならばスカイアクティブXの排気量は2リッターです。
なので、2.0スカイアクティブGの一番安い251万5741円と比較すると、スカイアクティブXとの価格差は68万2407円です。
それぞれ燃費は2.0スカイアクティブGは15.6kmリットルに対して、同スペックのスカイアクティブXは17.2kmリットル。
その差は単純にリッターあたり1.6kmです。10万キロ走行時点で、この1.6kmリットルがどの程度元を取れるかというと、単純計算します。
スカイアクティブGの2.0は10万キロ走行までにガソリンを6410リットル必要とし、スカイアクティブXは10万キロ走行までにガソリンを5813リットル使います。その差が596リットル。これ、ガソリン単価をこれまた単純に155円で計算すると92380円となります。
つまり、スカイアクティブGの2.0とスカイアクティブXを比較すると価格差は68万2407円。スカイアクティブXのほうが燃費がいいんですが、単純計算で10万キロ走行時点で92380円しか燃料コストでカバーできません。
燃料コストで2.0Gとの価格差を埋めるためにはおよそ73万キロくらい走行しないと無理だ!という計算になります。
夢のない話ですが、マツダ3のハッチバックで一番お勧めなのはスカイアクティブDとなります。このエンジンはトルクもあり燃料コストも安い。さらにはガソリンモデルとの差額を7万キロ程度走れば元が取れます。
スカイアクティブXがどれだけすごいエンジンかはなんとなくわかっていただけましたでしょうか?
そもそもなんでそんなに値段が高いのか?というと、従来型エンジンとは部品点数からまったく違います。ガソリン車なのですが、ディーゼルエンジンのように自己着火させている。すなわちディーゼルエンジンに使われているような補機類も装着しています。
まずはインジェクター。通常のガソリン車に使われているものではなくて、どちらかというとディーゼルと同じようなコモンレールインジェクターを使っています。
さらには自己着火させるためには大量の空気を押し込む必要があるので、スーパーチャージャーも補機類として装着されています。
今までスーパーチャージャーというと、ターボと同じような過給機というイメージがありますね。スポーツモデルやスポーツグレードに採用された、エンジン回転の下から過給がかかるものです。
これを安定した燃焼のために取り付けられています。さらには排気ガス処理も同様。ディーゼルのDPFのようなマフラーを備え付けている。これらいろんな部品代だけで、従来ガソリンよりも値段が大幅に上がるのは納得できます。
夢のエンジンを動かすにはそれなりの補機類が必要になるのです。
価格やエンジンについて書いてきましたが、このスカイアクティブXって今後はどうなるの?という点です。
これは最初から完全なエンジンってやっぱりないのです。メーカーも相当なテストを繰り返してきてはいますが、市販化されてみんなに使ってもらわないとわからない不具合だってどのエンジンでも潜んでいます。
なので、燃費などで買い求めるエンジンではないということ。
マツダの夢のエンジンをみんなで育てていく、そういう気概を持ってる人が買えば一番幸せなのかなと。実用を考えてこのエンジンを選んだら後悔するかもしれません。それよりも、どこの自動車メーカーもなしえなかった夢のエンジンを開発したのが、日本の小さな自動車メーカーであるマツダ。
これがすべてです。まだまだコスト的には高いし、たくさんのスカイアクティブXが売れれば徐々に1台当たりの単価が下がってきます。
これから先、スカイアクティブXが成功するかどうかはまだわかりません。出すことに価値があったエンジンで、ここから成長していくものですから。
ちょっと気になるのは、ディーゼルのように煤がどの程度マフラーにたまるのか?という点ですね。スカイアクティブDでも煤問題がありますが、日本のようにストップアンドゴーが多いと厳しいです。
どちらかというと高速道路をたくさん走行する人に向いているエンジンだと思います。早く実車を見てみたい。僕もイチ整備士として、このスカイアクティブXには興味全開です。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。