Categories: 車検

お客さんとの信頼関係

結構考えさせられたケースです。

タイトルの通り車検が無駄になってしまったことがあります。

長野は車がないと生活に不便な場所といえます。
山間部なんか駅まで片道二十㎞近いなんてザラで、車は生活必需品のひとつであるんです。

事件が勃発したのはそんな山間部のお客様。軽のいわゆる箱バンのサンバーを車検で預かりました。
お客様は高齢のおばちゃんで一人暮らし。車がないと困ってしまうからなんとか
1日車検でお願いとのこと。しかも車の鍵をどこかにやってしまったから鍵も作ってくれと。

サンバーはかなり錆が進行して且ついたんでいました。走行十万キロを超えていました。
代車は怖いから運転できない。慣れた車じゃないと駄目だから早く車検しなければいけません。

まずドアロックはしてなかったのでハンドルのコンソールパネルを外して
キーシリンダーのネジを上手くはずしてハンドルロックを解除して
イグニッションスイッチを直結でまわして会社へ入庫しました。
鍵は運転席のドアのキーシリンダーを外して近くの鍵屋さんに作製を依頼。

サンバーの車検に移りました。
実際痛み具合は半端ではなくオイル漏れも激しい車。マフラーは穴が開いていました。
高齢の一人暮らしのおばちゃんなので、手間ひまかけて、お金を安くしてあげようと頑張ったのです。
マフラーは外して錆びて穴が開いている部分を溶接修理。


タイミングベルトは切れてもバルブをつかないエンジンだったけど、
途中で切れて走行不能になったら携帯を持ってないおばちゃんは困るので交換。
総合的に工賃も安くしてあげたんです。
いざ納車しておばちゃんは大喜びで最大限の賛辞をいただけ、
とても満足に終わった車検だと思いました。が、後日おばちゃんの息子さんに当たる人から会社に電話がきました

「なんてことしてくれたんだ」

一体何が行ったかわからなくなりました。
詳しく理由を聞くとその怒りの真意がわかったんです。
理由はおばちゃんは痴呆症なんだそうでした。車なんか心配で載せたくもない。
だから鍵を隠しておいたのに。老人を騙して高い車検を押しつけてくれてどうしてくれるんだと。
信じられない話でした。一瞬頭がおかしくなりました。鍵がない原因がそんな理由だったなんて…

もう車なんかいらないから廃車にしてくれ

と予期せぬ事態で車検が無駄になったんです。車両は運良く買い手が見つかったので
良かったんですが、なんとも後味の悪い仕事でした。
それにしてもおばちゃんはとてもしっかりしていたように見えたのに

これを期に会社も更にお客様に対する用心深さか増しました。
うちの会社のお客様にはクラッチを3000キロに一度滑らしてしまうお客様がいます。
高齢で耳と感覚が鈍くなり、ふかした状態でのクラッチ操作が原因です。
お客様は直してくれといいますが、ご家族の方とも相談して車を修理しないことにしました。
実際山間部の高齢ドライバーはこういうケースが増えています。家族ぐるみで相談して方向性を決める。
そういう真心を読み取ってもらえなくて離れていくお客様もいますが、やはりしばらくすると戻って来てくれます。
真心と信頼関係というのはとても痛感したケースのお話しでした。

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