カーショップや、ホームセンターに行くとエンジンオイルはたくさんの種類を置いてあります。本当、オイルって星の数ほどあるんじゃない?と思えるほど多種多様にラインナップされています。
その中でも、このオイルはこういった車種に向いている!という専用オイルが少なからず存在します。これら、専用オイルは普通のオイルや純正オイルと何が違うのか?
専用オイルを使うメリットは何なのか?
まずよく見かけるのが軽自動車専用オイル。
カーショップで見かけると、普通のオイル缶よりも若干小さいパッケージのもの。
それもそのはず、軽自動車専用オイルとうたってあるものは通常の4L缶ではなくて、3L缶での梱包になっています。
軽自動車でオイル交換をすると、3Lあれば足りてしまう車種が多いです。中には3.2Lだったり、フィルター同時交換で3.4L使う車もありますけど。
普通のオイルとの違いは何か?どちらかというと軽自動車専用オイルは、エンジンの特性がどうしても高回転域を使うので、スイートスポットを高回転域に合わせてきているところがあります。
2000ccと660ccでは3倍の違いになります。これだけ排気量に差があると、同じ区間を同じ速度でキープするにはどうしても回転を上げてパワーを絞り出す必要がありますから。
軽専用オイルなんか・・ってあなどるのはナンセンス。軽自動車のエンジンは小型車のそれよりもよっぽど過酷な仕事をしています。
オイルに求められる性能も高いです。実は軽専用オイルって、性能がいいものが多いんです。
続いては国産車用のオイルではなくて、欧州車専用オイル。EUROなどと書いてあるものが多いです。
こちらは普通のオイルと何が違うのか?
最初に特徴的なのは、欧州車専用オイルって粘度が5W-40というものが多いです。と、いうのもあちらのエンジンオイルで多い粘度が5W-40です。
日本車でスタンダードになっている0W-20や5W-30、0W-16などとは違い硬めのエンジンオイルになっています。
欧州と日本の違いは、一目瞭然。ドイツのアウトバーンに代表される道路にあります。アウトバーンは速度制限がないことで有名。しかも無料です。
どうでしょう?日本に速度制限のないしかも無料の高速道路なんてありますか?ないですよね?ドイツには存在します。そんな道路があったらそれこそGT-Rのような車でかっ飛ばしてみたいですよね。
メディアなどがGT-Rをアウトバーンに持ち込んだなんて記事もたくさんありました。合法的に300km/hの世界を公道で走れるのはアウトバーンならではです。
そして欧州は地続きで車での移動が長い。日本のような島国とは違い国同士も国境でつながっています。日本に比べて一日の航続距離が長いです。
つまり、速度制限のない道路もアリ、航続距離も長い。日本の渋滞などとは別次元でエンジンに負荷がかかってきます。それもレーシーに。
欧州車に求められるオイルというのは、強固な油膜と信頼性です。
途中で油膜が切れてエンジンが壊れてしまうなんて言うのは許されない。
省燃費オイルとは逆の分厚い油膜でガッチリとエンジンを保護してくれないと困るのです。
そして向こうの自動車メーカーはオイルのモニターにセンサーを使っています。日本と比べて非常にロングライフ化されているのも特徴です。
欧州車専用オイルに求められているのは強固な油膜でかつロングライフな性能。
高性能スポーツカーに求められているのと似たような特性になっています。
ハイブリッド車専用オイルはどうか?
今や販売されてる車で多くの割合を占めるようになってきたハイブリッド車。このハイブリッド車に求められるのは2つ。
まずは何といってもハイブリッドといえば低燃費を売りにしています。
普通のガソリンエンジンにハイブリッドモーターやインバーターなどの部品を付属しなければいけません。もちろんガソリン車よりも部品点数が多くなるので高価になります。
それを燃料コストでペイできることを考えているハイブリッド車。
何はなくとも省燃費性能が優先されます。なので、オイルにも低フリクションを求めてきます。
日本車全般が低燃費傾向にあるため、通常のエンジンにも粘度の低いオイルが採用されてきました。もはやハイブリッド専用とは言い切れない感は否めませんが、求めている性能は低フリクションの省燃費オイルであること。
そして、ハイブリッドは頻繁にエンジンを停止したりのアイドリングストップを行います。エンジンが温まり切ることなく、走り終えてしまうこともあります。
この辺りの性能をカバーしているのもハイブリッド専用オイルです。
最後に日産GT-Rに代表される高性能スポーツカー専用オイルについて。
GT-Rに関して言うと、純正指定オイルが日産の内製オイルではなくて、石油元売りのMobile1を採用しています。このオイルについては何度か書いたことがありますが、ざっくりと復習。
もともとGT-Rは日本だけでなく、グローバルを見据えて作られた高性能スポーツカーです。
日産内製のオイルだと、世界で使われる時にすぐに手に入らないということが懸念されていました。
Mobile1であれば、世界各国どこでも容易に入手ができます。その性能も折り紙付きです。
オイルの性能は、その粘度が物語っています。0W-40という超ワイドレンジ。
これはスーパースポーツとはいえ、ある程度環境配慮をして、低燃費であることが求められます。GT-Rのエンジンはシリンダーにライナーを採用していません。
シリンダーライナーっていうのは、シリンダーブロックに筒がはいってるものです。ピストンはこのシリンダーライナーを上下しています。
メリットは何か?エンジンがすり減ってくると、シリンダーライナーを交換すればブロックは再利用できるということ。わざわざオーバーサイズピストンを入れなくても、シリンダー側で調整ができる。
トラックのエンジンってかなり長い距離をつかうので、シリンダーライナーを交換するオーバーホールが一般的です。
GT-Rにはこのシリンダーライナーがないライナーレスエンジンです。普通のオイルではこの辺りの潤滑が厳しいんですが、100%化学合成油のMobile1を使うことで、オイルの性能を上げてエンジンの耐久性をクリアしています。
ちなみにトヨタのスーパースポーツであるLFAもMobile1を純正採用しています。
今の高性能車の特徴は超低粘度から高粘度までをカバーする超ワイドレンジオイルとなってます。
最後に純正オイルと専用オイルは何が違うのかという点について。
純正オイルはそのエンジンが開発されたときベースとされているエンジンオイルです。純正オイルを使ってテストをしているので、信頼性は抜群です。
ただし、その車種専用純正オイルというわけではないです。GT-Rなど特殊なケースを除いては、自動車メーカーのとある純正オイルを使ってテストをして充填してきているということ。
自動車メーカーの中の汎用オイルみたいな位置づけですね。事実、ディーラーなどでオイル交換をする際には、よりグレードの高いオイルをチョイスできるようにもなっています。
純正オイルは信頼性が抜群ですが、専用オイルはさらにストライクゾーンを狭く性能を上げている点も見逃せません。
純正が相当高性能な場合を除き、専用オイルの方がそのエンジンの特性に合致しているケースもあります。もし純正が手に入らなければ、専用オイルを使うという手段はアリだと思います。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。