その日は特別寒い日だった。
ちょうど、日直当番の日。
スズキのKeiにのったおばちゃんが来店
「ヒートオーバーしているんですけど、工場はやっていますか?」
と、突然たずねてきた。見たことのない人で、どうやら車が故障したから
通りがかりのMHOの工場に来店したみたいでした。
一体何が起こったのかと、現車を見てみると
水温計の針がHに近い場所をさしている。
「オーバーヒート??」
この日は1月の中でも特に寒い日でした。
「ヒートオーバーになっちゃったから、ヒーターも我慢して走ってたんですよ」
とおばちゃんは説明してくれた。とりあえず、エンジンを止めないといけないし、
時間がないということなので代車を借して、工場へ入庫。原因を突き止めることにした。
整備履歴は当然なく分解整備記録簿に至っては1枚あるだけ。
どうやら毎年格安車検で通していた模様。いやな予感がしました。
F6AのSOHCターボです。前にこのエンジンのヘッドガスケットを交換した経験があるので
最悪ヘッドまで開けることは簡単だ。
オーバーヒートが起こる理由というのは、エンジンが適正に冷却されていないことにある。
オーバーヒートの原因は
電動ファンの故障
ラジエターの冷却不足
過負荷連続運転
ウオーターポンプのインペラが壊れて冷却水が回っていない
サーモスタット不良
と、大きな原因としてはたくさんあります。
走行距離は8万キロちかい。どれもこれも可能性ありでした。
エンジンを冷やしてラジエターキャップを外してみると、大まかな原因が分かった。
これは・・・と思い、冷却水を抜いてみた
原因はおそらくコレだろう。ラジエターが錆汁でつまり気味だったということだ。
定期的に冷却水を交換していなくて、防錆機能がなくなり、
エンジンのウオータージャケットが錆びて、冷却ラインが錆で詰まってしまった。
実際冷却水を抜く前にどのくらい補充できるか試してみた。
そしたら1リットル近くエンジンの中に入ったのだ。
錆で通路が狭くなり、冷却不足に陥っていた証拠。
こうなりゃまずはお金をかけないでどこまで直せるかを試してみる。
ドレンを締めて
エンジンをレーシングして暖機。
電動ファンが回ったらエンジン停止
しばらくして水を再び抜く
キャップを締めて、レーシング。そしてまた抜く。
この水を入れ替える作業を地道に10回ほど行った。
解体屋からFC3Sを買ったときを思い出す。冷却ラインの洗浄をやるために
同じことをした。4回くらい繰り返した。でもやはり錆汁だったな。
因みに1回洗浄しただけで、オーバーヒートは解消された。
今は水温は安定しています。
10回繰り返した後、おばちゃんに連絡したら
「オーバーヒートが解消されればいい。お金は極力かけないで」
ということ。出来ればラジエターキャップとサーモスタットは新品に換えたいと言うと
「なおってれば換えなくていい」
といわれた。ちょっとがっくり。一応キャップはテスターで動作を確認しておいた。
仕方がないので、最後にクーラントを注入
ラジエターが冷却不能になるほど内部が錆びていたんだから、
ウオーターポンプも無事ではない可能性がある。
もしかしたら近いうちにポンプが壊れる可能性を示唆して整備は終了となった。
しかし車検は来年で、タイミングベルトも交換しないといけない距離に到達するであろう。
タイミングベルト交換時には必ずウオーターポンプを交換してくださいと。
ことの経過を記したメモを車検証の中にそっと忍ばせておいて、
もし次は違う業者だった場合のメッセージとした。
ということでオーバーヒートの原因でした。
オーバーヒート診断
ラジエター洗浄
エンジンウォータージャケット洗浄
ラジエターキャップ点検
クーラント交換
で、工賃が3000円。部品代が1500円でした。部品はクーラントです。
以上4500円也
もうもどってくるなよーKei。がんばれよーKei。
おばちゃんはお金がもっともっとかかると思っていたらしく大喜びでした。
当然クーラント交換の重要性も伝えておいた。画像も見せてあげた
ヘッドが飛んでいなくて良かった・・・
クーラントは定期交換しないといけません
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。