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整備士から見る、「この人に自分の車を整備してもらいたい」理想像は?

自動車整備士をしていると、同僚、先輩、同業者などいろんな人の作業を見てきます。もし、僕が自分の車を整備してもらうとしたらどんな整備士にさわってもらいたいか?

僕が自分の車を整備してもらうとして、重要視するのは2点だけ。

丁寧・正確

これなんです。一つずつ説明していきます。

丁寧な整備士

タイムイズマネーとはよく言ったもので、自動車整備もある程度のタイムスケジュールがあります。当然整備士によって作業の早い・遅いが出てくる。

ものすごく作業の早い整備士もいれば、そうでない整備士もいます。作業が早くて正確なら一番最高なんだけど、ずっと見てくるとそういう人はなかなか出てこない。

だとしたら時間は遅くても丁寧な人がいい。

せっかちな整備士の作業を見ていると、

「おいおい、それで終わり?」

という人も見かけます。例えば車検整備でリヤのブレーキ調整なんかそれがよく出る。せっかちな人はさっとブレーキシューにペーパーをうすくかけて、サッと給油、調整して中間作業に入る。

丁寧な人はブレーキシューの全面にきれいにペーパーを当てて、硬化した部分を削り落とす。ドラムブレーキのブレーキシューをペーパーする意味って制動力を平均化させる目的だったり、ブレーキ泣きを抑えるなどの効果もあります。

こういった見えない部分も丁寧にやってくれる方がいいじゃないですか?

あと大型トラックなどのフルフローベアリング。リヤが二軸になってるタイプ。

タイヤを外してシャフトを外してドラムを外す。この時オイルシールを外してベアリングを取り外して洗浄して新しいベアリンググリスを充填します。

この作業にも差が出てくる。丁寧な人は、ドラム内に入ってるベアリンググリスを全て綺麗にしてからグリスを詰め替える。

せっかちな人はベアリングのみ綺麗にグリスを充填する。こういう見えない場所でも丁寧にやってくれる人。ヘッドカバーからのオイル漏れがあって、パッキンを交換するとき。

綺麗に取り付け面を清掃する人とそうでない人。

作業は遅くてもいい。とにかく作業一つ一つが丁寧な整備士。これがまず僕が望んでる人。

正確な整備士

もう1つは正確な整備士です。この正確っていうのは2つあります。まずは診断能力が正確な人という意味合い。

例えば故障診断をする時に、後輩にも常々言ってるんですけどまずは現象を確認しろって。異音がするという依頼を受けて、異音を聞かないでリフトアップする整備士。こういう人結構多いです。

まずは、故障している音を聞け!ということ。お客さんが直して欲しいと言ってる現象を自分で感じないとダメです。ガタガタ音がするという依頼があったとして、音を聞かないでリフトアップ。

スタビリンクがダメになってるから交換してOK。よくある話です。だけどお客さんが真に直して欲しかったのはそのスタビリンクじゃなかった・・・。

正確な診断をできるという人。故障診断は焦ってはいけません。まずはデータを取るところからスタートしないとだめ。常に出ている音・現象なのか?そうでないとしたらどういったときに出るのか?など。

こういう正確さを持ち合わせてる整備士。そしてもう一つの正確さというと、トルク管理やオイルの量などをちゃんとしている人。

僕は若い頃痛い目を見たので、トルクの男と化しています。重要な部位はとにかく規定トルクを遵守せよ。前に先輩整備士と話をしていとき、

「3G83のクランク?そんなもんハンマーでカーンってやってるだろ?」

このセリフを聞いてアボーーンでした。僕より年が10以上離れてる先輩だったけど、残念な気持ちでいっぱいになってしまった。プライベートで自分の車ならそれでいいだろうけど、お金をもらってやる作業じゃないよねって。

ネジ1本に苦しんだことがない奴は、ネジ1本の重要性が全く分かっていない。これも後輩に口すっぱく言ってることです。

正確な作業っていうのは、オイルをいれすぎない・少なすぎない。ネジをきちんと規定のトルクで締める。タイヤの空気圧も面倒臭がらないでラベルを確認して調整する。下手な整備士なんか、タイヤの空気圧全部250kPaにしてる奴とかいるんです。

作業を終えた伝票をじーっと見て、売上伝票を作っているとKFエンジンなのにオイル交換3リットルとかって書いてくる整備士・・・。

オイル交換だけで3リットルも入らないだろ!入れたら入れすぎだって。ハイゼットじゃないんだから。売上伝票も僕は打ってるので、こういう数量は細かいですよ。だって説明書に書いてあるんですよ。オイルの規定量。それをオーバーして売上伝票に記載してあったら不信感全開です。

僕の机の上にはオイルデータハンドブックがちょこんと置いてあります。こういう細かいところを指摘してくる人も多いんです。あと伝票に最後、ブレーキとタイヤの残量を記載するんですけど、そこも僕はチェックする。

測っている部分で若干違うといえば言い訳で、あろうことか前の車検の時よりも翌年の12ヶ月点検の方がブレーキパッドの残量が増えてることがある(汗)

前に測った人間がいいかげんだったのか、今回測ったやつがいい加減だったのか・・。僕はO型で普段はそんなことはどうでもいいと思うタイプですが、仕事は別。こういう苦情を日常的に受けてるので、後輩には厳しく伝えます。

お前それ、プロの仕事じゃねーだろって。

若い整備士たちと向き合うと、彼らの言い分もたくさんわかります。そういう時にどうやって説得しているかっていうと

僕が今まで痛い目にあってきた失敗談。ネジ一本されどネジ一本。そして、もし自分が整備をされるとしたらどんな整備士に整備されたい?って具体的に想像させています。

自分で自分の車は整備できるだろうけど、お前の車は今日は誰かに整備してもらわないといけないデーが出たとしたら、お前は誰を指名する!?って。

「MHOさん!」

とは言わないけど、そういうことなんです。

整備士にとって大切なのは、この人に整備されたい!って同業者に思われるオーラを持つこと。お客さんは中身がどうなのかってわからない部分、あるじゃないですか。

同業者に認められるところ。いくら手が早くたって危なっかしい整備士にクラッチやタイミングベルトを交換してもらいたくない(笑)

丁寧で正確な整備士。当たり前ですが、これから整備士を志す方がいらっしゃれば、この2つは心の片隅に置いておいてくださいね。

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