久しぶりに漫画のような事件に遭遇しました。
お店にふらふらと現れたのはおじいさん。
「キーが折れちまってよぉ、取ってくんねか?」
と、いうのです。車は今入ってきたはず。キーが折れた?え!?どういうことだ!?と、思いながら、後輩がまずは対応していました。
後輩の一人がシリンダーで注文しないと駄目ですねと、報告にきて、事態が何となく飲み込めた。その時もう一人の後輩もおじいさんに言われて、現車を見に行ったけど
「こりゃ駄目ですね!」
と。
とりあえず、僕はこりゃ駄目ですねで終わるわけにはいきません。
何故ならば、そこから動かなくなった車をどうやって修理するか?今おじいさんはキーを一本しか持っていないだろう。
そのまま帰ってもらうことすらできません。
話を聞くと、キーはもう一本手持ちで持っているというのです。そのキーを貸してもらい、運転席ドアとエンジンのシリンダーが同一なのかを点検。
どうやら全て同じキーです。
何故そんな確認をしたかというと、キーが回らないという事でメインキーシリンダーだけ交換するケースがたまにあるからです。
そうすると、エンジンをかけられない可能性がある。
今回の場合はすべての鍵穴を一つのキーで回せることが分かりました。幸運にもおじいさんが持っていたもう一本のキーは純正のプレートキーです。
純正プレートキーにはキーナンバーの刻印があります。
つまり、純正キープレートのキーナンバーで、純正部品としてスペアキーの注文ができるメーカーでした。
これでやることはただ一つ。キーシリンダーの中で折れているキーを抜いてあげて、スペアキーを注文あげればいいわけです。
とりあえず、本当にキーが中で折れているのかを、シリンダーのシャッターを開けてみてみました。
見事に埋まっています。
取り出す方法は2つ。
・手前からシャッターを開けて磁石などでピックアップする。
・シリンダーを外して裏側から何とか押す。
このどちらかです。ただし、磁石でくっつけるのは手持ちのアイテムでは厳しいと思いました。
かなり細くて強力な磁石じゃないと無理っぽい。事実後輩が一度チャレンジして諦めていますから。
シリンダーを外す作戦に切り替えます。
車はなんのことはない、軽トラックのサンバーです。
シリンダーを外すのは朝飯前だし、何ならシリンダーを分解したこともあります。
ドアの内張をはがしてシリンダーを取り出します。
シリンダー単体にして、折れたキーをサルベージします。
ただし、シリンダーの側面から折れたキーにアクセスするのは不可能です。
一番後ろ端の隙間から、クリップを折り曲げつつ押し出すことに。
この隙間からクリップを差し込んで押し出していきます。
出てきました。
サルベージ成功。
一応キーシリンダーの点検もしましたが、もう一つのキーで問題なくスムーズに回すことが出来るのでOK。
当初の予定通り、あとは純正のプレートキーを注文します。
2240円です。スペアキーを作るにしてはちょっと高額ですが、手持ちのキーを元にスペアを作るには、すり減りすぎているのでしょうがないです。
これが他の車種だと、キーもシリンダーも複雑な形状をしているので、うまくいかなかったかもしれません。
アナログ時代の軽トラだからなせる技でした。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。