数多くの車を整備してきましたが、通算でこの故障は2回目の遭遇になりました。しかも2回ともにスバルのサンバーTT型です。
他の車種でこの故障は経験がありません。詳しく紹介します。
事の発端は、足元に針金のようなものが落ちているけど、車の部品か何かなのか?という問い合わせです。
こちらが現物です。足元に妙な針金のような部品が落ちていました。
これはどこの部品なのか?操作系統にはあまり違和感はありません。
この足元に転がっている針金は一体何なのかというと、クラッチペダルのリターンスプリングです。
何をしているかというと、クラッチペダルを踏んだ後にペダルが自動で戻ってきますよね?あの動きをさせているのが、このリターンスプリングです。
しかしオーナーは、操作系統に違和感は感じられませんでした。
通常であれば、ペダルのリターンスプリングが折れてしまうと、反力がなくなるためペダルが戻ってこなくなります。
しかしサンバーのクラッチペダルはワイヤーがミッションまでつながっています。
このクラッチの遊びの部分に影響が出てくるだけになります。
分かりやすく言うと、リターンスプリングが折れていてもクラッチの遊びが少ない状態であれば、違和感を感じない。もしクラッチの遊びが大きければ、ペダルが戻ってこない違和感を感じると思います。
クラッチの遊びはワイヤーで調整します。
そもそも何故こんなリターンスプリングが折れるのか?ちなみにこのサンバーは走行距離が6万キロ程度でした。
以前他のサンバーでも同じトラブルが発生しましたが、その車に限って言えば走行距離は3万キロ台です。
いや、折れちゃまずいでしょと僕は思います。
リターンスプリングはこのような形状をしています。とりあえず中古部品で修理することになりました。
中古のスプリングをよーく観察してみると気が付きました。
手に持っている部分の下辺り、削れているのが分かります。
よくみると若干やせ細っていました。ペダル操作をするとスプリング同士が干渉してすり減ってしまうようです。
特にペダルを真下に踏み込む動作ならいざ知れず、斜めに力をくわえたりすると、スプリングが干渉しやすいことが分かりました。
僕が知ってる限りではサンバーしかこんなトラブルは見たことがありません。状況によってはクラッチが切れなくなる可能性もあります。
リターンスプリングの交換は簡単です。クラッチペダルは14mmのナットでステーに取り付けられているので、外します。
ペダルの中にはブッシュも入っているので、この辺りはせっかく脱着するのなら清掃して給油しておくといいと思います。
スプリングを外して付け替えるだけですが、取り付け部にスプリングが刺さる穴があるので、そこに合致させるのにちょっとコツが必要です。
交換自体は簡単ですが、このような部品が折れるというのにはちょっと納得がいきません。
いろんな車を整備してきましたが、サンバーで2台遭遇しているということろも腑に落ちませんね。クラッチの遊びがきちんと管理されていれば、スプリングが折れても走行は可能なので、オーナーによっては気が付かない人も居ると思います。
20万キロ位走った状態で折れるならわかりますけど、6万キロ位で折れちゃうのはいかがなものかと。
リコールやサービスキャンペーンにならないことを祈ります。それよりもリングギヤの摩耗こそ発生対応のサービスキャンペーンにすべきですけどね。
あれはひどい故障です。修理するのに10万円はかかりますから。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。