大規模リコールとして発表された、スズキの完成検査リコール。
該当者が車検で入庫してきたので実施してみました。
改めてこのリコールはなんだったのか?
新車時の完成検査で、ちゃんとした資格を持っていない人が完成検査をしていた。という内容になっています。車検の継続検査をする時は、自動車検査員という資格を持った人間が検査を実施して証明しないといけません。
ただし、検査をする過程で補助者をつけることは可となっています。車なら一人でスイスイ検査できちゃうけど、バイクになると不慣れな検査員もいます。そういう場合、検査助手にバイクの免許を持った人間についてもらうこともある。
スズキのリコールはこういったものの延長で、最終的に補助しているような人がやりだしてしまったのかもしれない。
現在メーカーのリコール文であるプレスリリースだと、さほど悪質には感じ得なかったわけですが、閲覧者様から情報をいただいて再確認したところ、以下のような内容でした。
ここはまずいなと思うところを引用させていただきます。
2. 四輪車の各検査項目などにおいて指摘された点 四輪車の各検査項目などにおいて、下記 1)~10)の不適切行為が指摘されました。これらについては、保安基準への適合性の確認が適切に行われていなかったおそれがあ ると考えております。 なお、不適切行為が行われた時期に関しては、一番古い時期については 1981 年 6 月 頃との供述が、一番新しい時期については 2019 年 1 月頃との供述が得られています。
1) 制動力検査における不適切行為
① 不合格とすべきものを合格として処理する行為
② 一部の検査項目について検査を省略する行為
③ メインブレーキの制動力検査で不適切な方法により合格の結果を得る行為
④ メインブレーキの制動力の検査において、踏み方を変えたり強く踏んだりする 行為及びパーキングブレーキを強く引いて合格の数値を出したりする行為
⑤ パーキングブレーキの制動力検査で不適切な方法により合格の結果を得る行 為
⑥ ブレーキの引きずり検査をドライブに入れた状態で実施する行為
⑦ 車両重量が正しく計測されていないにもかかわらず、そのまま検査を実施した 行為
⑧ 制動力検査に合格はしたものの、完成車チェックシートに計測値とは異なる数 値を記入する行為
2) 走行・速度計検査における不適切行為
① 不合格とすべきものを合格として処理する行為
② 一部の検査項目について検査を省略する行為 13
③ 作業手順に従わない検査方法により合格判定の数値を得た行為
3) かじ取り角度検査
① 不合格とすべきものを合格として処理する行為
② 最大転舵角が検査規格より小さく合格とならないときに、手で車体やタイヤを 押すなどして合格の数値を出させる行為
4) 前照灯主光軸検査における不適切行為
① 不合格とすべきものを合格として処理する行為
② モニタに合格判定が出る前に検査完了ボタンを押して合格として処理する行 為
③ ヘッドライトテスタと車両の間に手や体をかざし、光を遮った状態で測定し、 合格の結果を出させる行為
④ 車体を持ち上げたり押さえたりして合格の結果を出す行為
5) サイドスリップ検査における不適切行為
① 不合格とすべきものを合格として処理する行為
② 規定速度よりも速い速度でサイドスリップテスタを通過し、意図的または結果 的にサイドスリップ量が合格の結果となるようにする行為
③ サイドスリップテスタの通過中にメインブレーキまたはパーキングブレーキ を使用する行為
④ モニタが正常に作動しておらず、検査結果及び数値も表示されないにもかかわ らず、合格として処理する行為
⑤ サイドスリップテスタがロックされた状態で検査を行う行為
⑥ 2 名乗車で検査を行う行為
⑦ 検査結果は合格であったものの、完成車チェックシートに計測値とは異なる数 値を記入する行為
6) 外観・構造検査における不適切行為
① 一部の検査項目について検査を省略する行為
② トランスミッションオイルについて不合格とすべきものを合格として処理す る行為
7) 下回り・エンジンルーム検査における不適切行為
① 排出ガスコントロール装置のシステムチェックについて不合格とすべきもの を合格として処理する行為
② 一部の検査項目について検査を省略する行為
8) 不良発見時の取扱いに関する不適切行為
① 上司の指示により不合格であるものを合格として処理する行為 14
② 完成車チェックシート上の不良の記録改ざん
③ 不良対策書の発行懈怠
9) 完成車チェックシートの記入に関する不適切行為
① 他の検査員が記入した不合格の数値を合格範囲内の数値に書き換える行為 ② 記入漏れのレ点及び数値を記入する行為
③ 検査前にレ点を記入又は合格印を押印する行為
10) その他の問題点・不適切行為
① 電装検査の一部の検査項目について検査を省略する行為
② 欠品がある車両等の検査
スズキ プレスリリース
僕も認識が甘かったです。すみません。
ちゃんと情報は精査してから表に出すように、これから一層心がけます。情報をくださった閲覧者様、ありがとうございました。
ということで、リコール作業です。スバルや日産でも同様なリコールが出たわけですが、この手のリコールは1回でも車検が通ったら終わりになります。なぜならば、車検の継続検査で車の状態が保安基準にきちんと適合していることを、自動車検査員が証明しているからです。
実際にリコールが出たのが4月。3月中に4月登録の車を前倒しして車検をしてしまった場合、これはスズキのメーカーから車検基本料金などが返金してもらえる内容です。
そして、車検とリコールを同時に行う場合、通常車検時にかかる費用の2項目
24ヶ月基本整備代
検査費用
こちらが保証という事にしてほしいとスズキに言われています。あくまで強制ではなく、基本金額などは工場によってまちまちなのですが、普通に車検をとるよりは費用がお安くなってきます。
24ヶ月基本整備代
検査費用
この項目について、うちの工場はこの2つを合算して保証としています。なので、リコールを1台行ってもそれに見合う工賃収入にはなりません。
逆に、この24ヶ月基本整備代と検査料を合わせると3万円を超える整備工場が存在します。すると、リコールを協力してあげている整備工場が赤字になってしまうという意味不明のシステム。
中にはそういう工場があって、スズキへブーイングが言っているそうです。
ちなみに、日産とスバルの完成検査リコールはそれぞれメーカーが直接お客さんへ返金をしました。スズキの場合なぜか車検をした工場からお客さんへ返金をしないといけない。
はっきり言ってスバルや日産の方が工場側からすると処理は楽でした。中にはメンテナンスをパックしている工場もあるため、車検時の整備代金をすでにもらってる人もいます。そういう人には最初から返金しないといけない。
一応整備工場からリコール処理が終わって、スズキより着金になってからでないと返金ができないですから。
もう意味不明。返金のやりとりは直接スズキとお客さんの間でやってもらいたい。
嘆いていても仕方がなく、
リコールNO.4487作業終了。終わった車は運転席ドアのストライカ付近にシールをはります。
続けてもう一台。
今の車検って、とにかく入庫前に全てリコールを把握しておかないといけないです。もうそれが膨大な量で、それぞれ処理の仕方が違うしすごく負担になっています。
ディーラーでしかできない作業もあるし、その場合また後日入庫してもらわないといけない。このあたりも整備工場へ協力を求めるのなら、きちんと引き取り納車代くらい負担するべきだと考えます。
代車出してリコールをディーラーに持って行って、1日作業なのにもらえるマージン0円。ほとんどのリコール実態がこんな感じです。作業をしているディーラーはメーカーから作業台をもらえるけど、車を販売している販売店はボランティア。
手間だけかかってやりきれませんよ。メーカーさん。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。