現在販売されています、スズキの新型ハスラーなど一部モデル。これらのNAエンジンには新開発されたR06Dというエンジンが搭載されています。
このR06Dというエンジン、従来のR06Aから小変更を加えただけのエンジンなのかなと思いましたが、ほぼ別物になるほどの進化を遂げていました。
しかし、このR06Dが搭載された本当に初期ロットの新型ハスラーとワゴンRは、エンジン内部から原因不明の異音が出るということで一時生産停止となった経緯があります。
調査の結果、ピストンのコーティングに問題があることがわかり、今生産しているR06Dについてはすでに対策されて車に搭載されています。
本当に初期ロットにあたる車を買ってしまった人は、これらエンジン内部の異音についてどうなるのか注目されていましたが、4月下旬にサービスキャンペーンが発表されていました。
目次
エンジンから異音が発生してきたらピストンとシリンダーブロックを交換
最初に結果を書きますと、エンジン異音が発生した場合ピストンとシリンダーブロックを新品に交換してくれるそうです。
順を追って説明してみます。
そもそも最終的な原因は何で、エンジンがどうなってしまうのか?
R06D型エンジンにおいて、ピストンのスカート部に施されている固体潤滑材のコーティングが不適切なため、エンジン運転中に剥がれて、ピストンとシリンダが金属接触することでピストンが摩耗し、異音が発生するおそれがあります。
スズキHPより引用
低燃費を追及するエンジンは、少しでもフリクション(抵抗)を低減する必要があります。そのため、ピストン自体にあらかじめコーティングしているものがある。
写真のピストンはR06Dはありませんが、ピストンスカート部に黒いコーティングがあるのがわかります。
R06Dのエンジンではこのコーティングが不適切で、途中で剥がれてしまう。そしてピストンとシリンダーが接触することで異音が発生するということです。
もちろんピストンもシリンダーも削れていくということなので、両方交換。
該当になるのが、ハスラー11946台。ワゴンR11340台。
オーナーにはダイレクトメールで通知が届きますのでご安心を。保証延長のような期限は明記されていないので、エンジンから異音が発生したら作業してもらえます。
ただこの作業はかなり大変です。時間も1週間くらいは必要になるかなと。
シリンダーブロック・ピストンの交換とは?
ピストンとシリンダーブロックを交換するということは、エンジンOH作業とほぼ同等になります。
作業フローはどうかというと。
エンジンを車から降ろす→オイルパン・ヘッドカバー・チェーンカバーを外してタイミングチェーンを外す→シリンダーヘッドとシリンダーブロックを外す→シリンダーブロックからピストンとクランクシャフトを外して交換する。
エンジン内部の重たいリコールで、記憶に新しいのが86やBRZ、インプレッサ等のバルブスプリング不備リコールがありました。
あれはシリンダーヘッドの作業。今回はさらに奥になるシリンダーブロックです。しかもブロックとピストンを交換するとなっています。
幸いなのが該当数が少ないという事。
ここからは推測になりますが、作業が発生した場合どのような修理方法をするのか?該当数が少ないので、スバルの時のように集中作業センターを設置することはしないと思います。
メーカーのスズキから新品のシリンダーブロック・クランクシャフト・ピストンを組み込んである新品部品を供給されて、ディーラーにて降ろしたエンジンのシリンダーブロックASSYを交換するのかな。
これだと作業する整備士の負担も少なくなります。もしシリンダーブロックとピストンしか供給されないとなれば、組付け精度にバラつきがでる可能性もあるし、OHを経験したことがないメカニックが作業したら二次災害になる可能性もあります。
水平対向エンジンのバルブスプリングリコールの後も、多数の二次災害が発生しました。一番ひどいのはリコール後にエンジンパワーがなくなってショップに見てもらったらバルブタイミングがずれていた・・・。
こんなことだってありますからね。
今の整備士ってエンジンOHを経験している人間なんておそらく2割もいないと思います。
いずれにしても、エンジンから異音が発生してきたら無料でOHしてもらえる!と前向きにとらえるのがいいかなと。
とりあえずサービスキャンペーンが出ていたので、お伝えしておきます。サービスキャンペーンって国土交通省のリコール報告には上がってこないので、メーカーのリコールページから検索をしないと知りえない情報になります。
乗っているオーナーさんにはダイレクトメールが届きますが、販売店には知らない人も居るかもしれないので。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。