スズキから115万台規模のリコールが発表になりました。内容は2件です。コイルスプリングが折れてしまう不具合と、クランクシャフトプーリーボルトの不具合です。
それぞれどういった内容か、またどのような問題につながるか説明します。
目次
コイルスプリングの不具合と折れるとどうなるのか?
まず一つ目のリコール内容であるコイルスプリングの不具合について。
これは、足回りを構成する部品です。フロントはストラット形状なので、ショックアブソーバーに組み込まれています。
内容は以下の通り。
フロントサスペンションにおいて、コイルスプリングの鋼材に対する塗料の密着性が不足しているため、砂や小石を噛み込んだ場合に、塗膜が剥がれやすく、腐食が早期に進行するものがあります。そのため、そのまま使用を続けると、コイルスプリングが折損し、最悪の場合、タイヤと接触することでパンクして走行不能となるおそれがあります。
スズキHPより引用
実はこのトラブル一度だけスズキ車で経験したことがあります。MRワゴンだったのですが、コイルスプリングが上部の方で折れてしまいました。
保証期間が過ぎていたということで、実費での修理になりましたがもしかしたらあの車両もリコール対象車に入ったのかもしれません。
山間地で融雪剤をまく地域の車は、錆が進行してたまにコイルスプリングが折れる車があります。それが街乗りであっても起こりえるということですね。
では、コイルスプリングが折れるとどうなるのか?
ストラットのコイルスプリングが折れると、極端にいうと折れた分だけ車高が下がります。ショックアブソーバーは伸縮するのですが、バネが突っ張ってアブソーバーを伸ばしているからです。
バネが折れると、折れた分だけアブソーバーが車の重さで縮みます。つまりその分車高が落ちてしまう。
ローダウンサスがありますが、あれはスプリングの自由長とレートをうまく配分して車高を落としています。
例えば純正のスプリングの自由長が200mmだとします。これに150mmのスプリングに組み替えると50mm車高が下がるということです。
ただこれはバネレートが同じという事が前提になります。柔らかいバネを縮めるのは力はいりませんよね。固いバネを縮めるには力が必要です。これがバネレートです。
たとえコイルの自由長を短くしたとしても、固いバネだったらどうか?車が沈み込まなくなるので、車高が下がらなくなるということです。
今回のリコールでは単純にバネが折れるという事なので、折れた部分で車高が大きく変わってしまいます。
例えば端っこから10cm程度で折れれば10cmの車高ダウンですが、バネのちょうど真ん中で折れてしまったらどうか?ストラットから外れてしまえば極端な話相当車高が落ちてしまいます。
タイヤが干渉してパンクをする。これが走行中に起きたら怖いです。高速道路で起きたら一気にバーストします。
対象が平成25年~27年のワゴンR、ラパン、スペーシア、ラパン、MRワゴンです。台数が480525台となっています。
このリコールは高速道路走行中に起きたら本当に危ないので、早めにリコールを受けましょう。
クランクシャフトプーリーボルトの不具合とは?
写真はスバルのものですが、クランクシャフトプーリーのボルトってどういうものか?これは僕自身とても苦い経験があります。このネジってものすごく重要なネジなんです。
最悪なケースだと、エンジンの心臓部であるクランクシャフトが駄目になってしまいます。もしクランクシャフトが駄目になったらエンジンをOHするのとほぼ同じ状態になってしまいます。
どういうことか?
これがクランクシャフトプーリーです。クランクシャフトから動力を得るために、プーリーを取り付けて、ここからベルトを介して補機類を駆動しています。
オルタネーターだったり、油圧パワステだったり。ウォーターポンプやエアコンコンプレッサー。
これらをこのクランクシャフトプーリーから動力を伝達しています。
エネチャージ仕様車のクランクプーリボルトにおいて、ねじ谷底の形状が不適切なため、耐久性が不足しているものがあります。そのため、締付け軸力が低い場合にクランクプーリボルトが折損してガタが生じ、クランクシャフト位相角度を正しく検出できず、適切なエンジン制御ができなくなり、エンストに至るおそれがあります。
スズキのHPより引用
今回のリコールでは、クランクシャフトプーリボルトの耐久性がイマイチで折れることがあると書いてあります。
この文章だと単純にネジを交換すればいいんだね。で終わるかもしれませんが、末期症状だと本当にマズイです。
ネジが緩むと、シャフトとプーリーに隙間ができます。クランクシャフトは相当なトルクで回転しています。緩んだネジ山を振動で壊しかねないのです。
ネジ側が壊れるのならいいんですが、シャフトの雌ネジ部分が損傷すると最悪のパターンです。クランクシャフト交換となります。
その前に、プーリーにも傷が付いたり異音が発生するはずなので、気が付けばいいです。最大のポイントはクランクシャフトのネジ山が生きているかどうかというところです。
昔、トヨタのライトエースやタウンエースに搭載されていたディーゼルエンジンで3Cというものがありました。あのエンジンのクランクプーリーボルトがたまに折れることがあったんです。
ディーゼルでトルクがでかいので、シャフトを駄目にしてしまうケースがあり、エンジンを載せ替えたほうが早い位でした。
僕自身この3Cのクランクシャフトプーリーボルトが折れてしまったことがありました。ギリギリシャフトのネジ山とキー溝が無事だったので、再利用ができましたが整恐ろしい思いをしました。
こちらも24年から27年製造のアルト、ワゴンR、MRワゴン、スペーシア、ハスラーで、822257台となっています。
こちらは走行中にプーリーボルトが折れたらクランクシャフトプーリーが外れて、補機ベルトも外れます。
するとエアコンが効かなくなり、充電警告灯が点灯。発電しなくなるのでバッテリー容量を使い果たしたら走行中にエンジンが停止してしまいます。
再使用するにはバッテリーが空になってるので、自力では無理で走行不能になります。
あとはクランクシャフトが無事なことを祈るだけです。
いずれにしろエンジンの為にこちらも早めにリコールを受けることをお勧めします。
リコール対象車で実際にコイルが折れたMRワゴンの例
今回フロントコイルスプリングのリコールが発表になった時、一台だけ記憶にある車両がありました。
2年前に修理したMRワゴンです。段差を乗り越えると変な音がするということで調べてみたら、なんとコイルスプリングが折れていた。
その当時、ディーラーにて保証の範囲を調べると新車から3年6万キロ保証だと言われたんです。
しょうがなくオーナーにその旨伝えて実費で修理しました。
コイルスプリングを片側交換すると、普通の工賃計算ですと18000円くらいかかります。
折れたコイルは外れてはいなかったけど。
部品も1週間以上届くまでかかりました。コイルスプリングが特別保証の範囲に入ってないのが疑問でした。
もしこの車のようにリコール前に修理している車があれば、修理費用をスズキに相談してみてもいいかもしれません。
しかし、交換されたスプリングも対策されている部品か定かじゃないので、もう一度作業をしたほうが無難とも言えます。ちなみにこの車、車体番号で検索するとフロントコイルスプリングとクランクプーリーボルトの両方が該当していました。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。