Categories: 日記・戯言

イチ整備士として

僕は自動車整備の仕事に就いたのは、23歳からでした。いわゆる遅咲きというやつですね。何度か書いたことがあるんですが、資格も何も持っていない状態でこの業界の門を叩いた。

それから今はまだ現役で自動車整備士として雇用して働かせてもらっています。同世代の整備士達はほとんど居なくなりました。うちの整備工場は平均年齢が高いので、まだまだ先輩整備士も山ほどいます。ディーラー整備士が30代になったら、フロントか、営業か、それとも工場長になるのか?と、このような選択肢を迫られる中、それはそれで幸せなんだなと思っています。

冷静に自動車整備士という自分を考えてみると、技術面ではまだまだダメダメです。

とある先輩整備士は自分のことを「修理工」と表現してお客さんと会話していました。僕もこの「修理工」なんです。流れる時間の密度の違いで差は広がる一方です。うちの会社にはディーラーから再就職してきた人たちも山ほど居ますが、彼らはやはり凄いと感じる。それは忍耐強さが他の整備士達と違う。それだけ過酷な環境下を戦ってきたんでしょう。

自分より年下の整備士で、自分より手が早い整備士なんか山ほどいます。まだまだ先輩にも追いつけない部分も山ほどあります。それは修理工という枠に当てはめて考えた時ですが。

上には上がいる。それだけは肝に銘じて業務に携わっています。チューニングカーを作っているチューナー達ははっきり言って雲の上の存在です。自動車メーカーの人たちと比較すると、知識ではまったくかなわない。

じゃあ僕らの業界で修理工として働いている整備士が勝っている部分ってどこにあるのかって言うのを考えたんですよ。それは救命救急隊員に近いものを持ち合わせて、広くお客さんとの信頼関係を築いていることかなと。とにかく僕の会社は突発的な出張修理やレスキューが多い。JAFではないですが、それに近いです。いかに現場で起きている車を正確に対処して処理するか?

こんなことがありました。クーラントが漏れちゃっている車を引き上げにいったんですが、レッカー車がない。漏れているのはヒーターホースだった。じゃあバイパスしてしまえ。

シフトレバーが折れた車がありました。到底レッカーなんか入れない場所。どうするか?ミッション側でレバーを使ってDレンジに入れて走行する。

ブレーキホースが破裂した車両があった。これは上流のホースに鉄板ビスを打ちこんで漏れを抑える。やれキーを閉じこんでしまった。わだちにはまってしまった。

エンジンがすぐにストールしてしまう車。どうする?おそらくエアフロが不調っぽいからカプラーを外してフェールセーフにしてしまえ。

エアコンんコンプレッサーがロックしてベルトが切れちゃったんだけど、なんとか走りたい。どうする?短いベルトをオルタネーターとクランクにかけてしまう。

ブレーキランプが切れて困っている人が居たら、自分が乗っている車の電球をとりあえず外してつけてあげるとか。

鍵が回らない車を動かすにはどうするかなど。

こういう現場で発生している問題を処理するのが得意になってきました。静かな工場で黙々とエンジンを組み立てるといった環境にも憧れますが、手持ちの工具はこれだけで、今時分が何を短時間で最大限のことができるか?まさに野戦病院に近い感覚だと自分では思っています。

お客さんと車も覚えています。町中ですれ違った車で、あれは誰の車だとか覚えちゃうんですよ。車種とナンバーで記憶に積み重ねられていく。僕の場合オーナーの顔よりは車とナンバーで記憶していきます。そこにリンクしてあの家の誰の車だ。ということを覚えて行くんです。

イチ整備士として戦っていくためには常に最新の情報を覚えて勉強して行かないといけません。それが面倒くさいと思ったのなら現場を降りるべきなんだろうなと思っています。

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