車検や法定点検の時、ブレーキの残量を計測します。そして、その残量を点検記録簿に記載されてます。
ブレーキパッドであれば、残りの残量が5mm以上あれば1年はもつ。ブレーキシューの場合は残量2mm以上あれば同様に1年はもつ。
車検や点検時、残量が十分にあるから大丈夫と判断されるブレーキですが、長らく交換されていないと思わぬトラブルを引き起こします。
こちらは実際にあったケースです。
車は三菱のキャンタートラックです。車検で入庫してきました。ブレーキパッドの残量はキャリパーの隙間から見ても、まあ十分にあるかなと。
ただキャリパーなどが極度に錆びているため、気になってブレーキを脱着してみました。
ここまでひどいブレーキパッドって、あまり見かけません。こんな状態でよくもまぁブレーキが効いていたものだと感心していたのもつかの間。
なんとブレーキパッドのローターと接触するパッド面と地金が剥がれ落ちてしまった。もしこれが走行中だとどういうことが起こるのか?
考えうるに、摩材が剥がれ落ちたブレーキパッドは、斜めにローターへ押さえつけられて走行中に固定不十分で暴れだします。
そのうちにキャリパーから脱落する可能性もあり、最悪の場合ブレーキを踏んでもパッドが脱落した状態にあるので、ペダルがスカスカになっていたかもしれません。
それか剥がれた摩材の部分がローターやホイールに挟まって、急ブレーキがかかるということも考えられます。
いずれにしろ速度が出ていたら非常に危険な状態です。
なぜこのような事が起こるのか?
ブレーキパッドの製造は地金と摩擦材に分かれます。地金を作って摩材と接着させるというイメージです。パッドメーカーによっては地金の上に摩材を形成していく手法もあるそうですが、概ね地金と摩材は接着されている。
一体物ではないので、剥がれ落ちるということは起こりえるということです。
ブレーキパッドでは僕は2回経験しました。ブレーキシューでも経験があります。
年間の走行距離が1000kmくらいの車になると、10年間経過しても1万キロ弱です。こんな使い方をされている車もたくさんあります。
10年くらいなら、剥がれ落ちるということはあまり考えにくいですが、20年を経過して一度も交換がされていないブレーキは交換したほうがいいと思います。
理由は地金と摩擦材の接着が心配だからです。
走行中にブレーキの摩擦材がすっ飛んでいてしまったなんていうのは危険です。
錆がひどい車なら10年くらいで残量があったとしても交換したほうが安全です。
地金と摩擦材が張り付けられているということはブレーキパッドでもシューでも同じです。
例えば古い車だと、ブレーキライニングの張替え作業というのも一般的に行われています。
かなり古い旧車などで、ブレーキシューの設定が廃盤になっている・・・。そんな時はシューからライニングをはがして新品に張替えをしてくれるんです。
地金のシューがしっかりとしていれば、摩擦材であるライニングは張り替えて使えるということですね。
大型トラックなどではシューとライニングがリベットで固定されているものもあります。
ブレーキの残量がまだまだしっかりと残っているとしても、このようにブレーキの摩擦材が剥がれ落ちることが稀にあります。
安心を求めるのなら、残量が残っていてもある程度の期間を経過したら新品にすることをお勧めします。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。