たまにこういう問題に遭遇します。
車検や点検で入庫してきた車で当社管理ユーザーでない車両。前回の整備歴など詳細が不明で、オイル交換をいつしているかわからない。レベルゲージを抜いてみたら、オイルが汚れているように見えるので、オーナーにいつ交換したかを聞いてみたら
「先週交換したばかっりだよ!」
もしくは
「オイル交換をしたばかりで不要なのに交換されてしまった」
という苦情。
僕が自分で整備をする車両は、必ずオイル交換の有無を聞くようにしています。例えば定期点検でキャンペーン中は、点検に入庫してくれればオイル交換をサービスにする。
今回はキャンペーン中だから!ということで、お客さんの了解を得ないままオイル交換に踏み切る整備士がいます。うちの会社にもいます。僕は若い頃、これで失敗した整備士を間近で見ていたので、無料で交換ができるとしてもお客さんに聞くようにしています。
というか、作業で入庫した時にある程度聞いています。作業が始まってからの時間帯ではお客さんに連絡が取れなくなることだって多いです。入庫時にある程度の筋道を立てておかないとトラブルの原因になります。
オイル交換は無料でできる。だったら交換してもいいじゃない?と勘違いしてしまう整備士がたまにいます。
そもそもお客さんの中に、オイル交換をしてほしくない人がいることを知らないからです。
オイル交換をしてほしくないお客さんは、一定数存在します。そのほとんどが車好きの人。自分でオイル交換をしてしまう人で、もちろん工場で入れる無料のエンジンオイルよりもグレードの良い化学合成油などを入れている場合。
高いオイルを入れていたのに、安いオイルに交換されてしまった・・。
そもそもオイル交換は頼んでいない!整備士トラブルあるあるです。こちらがいくら無料で交換ができると言っても、交換してほしくない人がいるということを忘れてはいけません。
逆に、自分でお客さんに怒られて苦情を言われた整備士はこういう失敗はしないものです。
このオイル、どう思いますか?
見た感じ黒く汚れているように見えます。では、このオイルはどの位の走行距離を走った後に交換したものだと思いますか?
答えは0kmです。
この写真の廃油はYouTubeで撮影をしている180SXから抜いたエンジンオイルです。YouTubeを見てくださっている人なら、なんとなく覚えているかもしれません。
180SXはナンバーが付いてないので、車庫から出ていないんです。
つまり1kmたりとも走っていないエンジンから抜いたオイルです。
1kmも走ってないのになんでこんなに汚れているの?と疑問になりますよね?これが時に整備士を惑わせる原因になります。
交換したばかりのオイルが汚れる原因は2つ。前回交換してからかなり期間や距離があいていた。エンジン内部が汚れていたということ。
そして、オイルの清浄性が高くて、汚れを早く落としているということ。
エンジン内部が汚れていると、新油を入れたとしてもすぐに新油も汚れてきます。特にオイルフィルターを同時交換していないと、フィルター内に残っている古いオイルと新油が混ざり合うことで、より汚れが目立ちます。
清浄性が高いオイルは、汚れを早く落としてくれます。代表的なのがフラッシングオイルです。フラッシングオイルって、普通のオイルに比べて水のようで粘度がかなり低いのが多いです。
フラッシングオイルは、即効性と遅効性がありますが、即効性のものは灯油に近いです。エンジン内部の潤滑やその他の性能よりも、清浄性を重視して作られています。
即効性フラッシングオイルは指示通り入れたら、アイドリング状態でオイルフィルターと同時交換でオイルも新油にしないといけません。
エンジンオイルにも清浄性を強く持っているオイルであれば、交換後に汚れが目立ってくるのもうなずけるということです。
そもそもエンジンオイルが汚れる原因って何なのかという事。
オイルが汚れる理由はたくさんあります。エンジンって高速で回転、摺動する機械で、それらをオイルが潤滑、密封などの役割をしています。
そしてエンジンは燃焼をして動力を得ています。
オイルは燃焼したエンジンの燃えカスやブローバイガス、不純物、金属粉などを包み込んでいます。そして、オイルもごく微量ですがシリンダー内で燃えています。これらの燃えカスなども混じっていくので、少しずつ黒くなっていきます。
オイルが汚れているというのは、オイルがきちんと働いている証拠でもあります。
そして交換後のオイルがすぐに黒くなったからと言って、潤滑能力が落ちているかというとそうでもありません。
オイル交換前と交換後、整備士をしながら様々なオイルの状態を見てきましたが、一見黒く見えるオイルでも、表面がつやつやしているものは交換後間もないオイルです。
この見分け方が目が肥えてこないと難しい。色が黒いから交換というのは誤りです。
オイル交換の目的って、使っているオイルが不純物や燃えカスなどを包みこみ、熱や酸化によって劣化が始まり本来の潤滑能力を発揮できなくなるからです。
オイルってすごく難しくて奥が深いです。はっきり言って、一般の街乗りユーザーであればメーカー指定のスパンで指定のグレード・粘度のものを交換していれば問題ありません。
しかし、一定以上の負荷をかける走行などをする場合は、オイルが汚れていなくても交換をしないといけない場合も出てきます。
サーキット走行などで油温が130度を超えてくると、潤滑能力が低下するので、オイルの色が奇麗であっても交換をしないと駄目なんです。
見極めが難しく、オーナーに問診しないと簡単にオイル交換はできなくなります。そのお客さんと長く付き合うことで、使い方を周知していればトラブルには発展しません。
一見さんなどは丁寧に問診をするところからスタートしないと、オイル交換一つでトラブルになります。それを体験している整備士は、車だけではなくお客さんの事も考えているので安心できる整備士です。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。