町工場ですが、自動車の整備士を10年以上やっていると、いろんな出来事に遭遇します。その中でも今回はエンジンオイルにまつわるトラブルをまとめてみました。
エンジンオイルの交換っていうのは、車のメンテナンスの中で一番頻度が高いものです。このオイル交換にトラブルが出ると、最悪の場合車両火災などにもつながります。
エンジンオイルにまつわるトラブルはどんなものか?
最初に書いておきますが、僕はいまだかつてオイル交換で失敗という失敗は一度もしていません。オイル交換には最新の注意を払っています。
ここで経験していることは、僕が現場で目撃した事件簿です。
まずは定番のメニュー。おとといの出来事です。
お客さんが自分でオイル交換をしたけど、オイルがどうも漏れているようだから見てほしいと車両を持ち込んできました。
確認してみると、見事ドレンボルトからの漏れ。
パッキンを交換しましたか?と聞くと、交換していないとの返答。
エンジンオイルのドレンパッキンは、再利用しても漏れにくいメーカーがあるのも事実です。トヨタやダイハツのパッキンは、再利用しても結構大丈夫だったりします。(再利用しませんけど)
このスバルのものはつぶしパッキンなので、再利用しようものならてきめんに漏れてきます。ドレンパッキンなんか150円弱で買えるので、ケチらないで交換しましょう。
これはよく覚えているケース。新入り整備士が車検整備をしていた時の事です。完成検査を受けようとエンジンをかけて、検査ラインに行くと検査員がとんぼ返りしてもどってきました。
何だと思ったら、オイルがエンジンから噴きだしてくる!というのです。どこからふきだしてくるかというと、エアクリーナーBOXから。
僕はその時他の作業をしていたけど、作業指示書を見る限り何も特別なことはしていませんでした。
とりあえずエアクリーナーBOXを外して奇麗にしてから組み付けてみると、再度噴きだしてきた。アクセルをふかすとオイルが吹いてくる。
原因は何だったかというと、オイルの量でした。作業した整備士は規定量しか入れていないと。もしやと思ってドレンからオイルを抜いてみると出るわ出るわのおよそ2倍の量です。
どうやらエンジンオイルを抜かないで新油を規定量補充していたみたいです。オイルの量が2倍も入ってれば内圧で噴きだしてくるよな・・・。それにしてもお粗末な失敗してるわーとみていました。
オイルの入れすぎがあれば、洪水事件もありました。
これは年輩の整備士が作業をしていました。僕は真向いのリフトで作業をしていたので、目撃しました。
年輩整備士が、オイルの入ったジョッキを片手に自分が作業している車にオイルをいれていた時の事、なんだか床が・・・。
ストップ!と声をかけたときはすでに遅く、床がオイルまみれになっていました。そうです、ドレンボルトを締めていない状態でオイルを注いでいたのです。
オイルってある程度の高さからこぼれても、水のようにバシャバシャ音はしません。無音のまま広がるのです。
これは最近のあるあるトラブルです。
オイル交換をオーダーされて、いつもの手順でドレンボルトを外そうとすると、ボルトの感覚がおかしいです。
そしてオイルパンはアルミ製。オーバートルクが原因で、オイルパンのネジ山が駄目になっていました。
最近のダイハツKFエンジンにものすごく多いトラブルです。ひどいときなんかドレンボルトに液体ガスケットをぬってあったり、シールテープを巻いてごまかしている車両もあります。
結局だれかが修理をしないと駄目なわけで、オイルパンを交換しました。
アルミのオイルパンは本当に注意が必要です。
オイル交換に来た車のエンジン音が変なんです。
ものすごく嫌な打音がしている。ちょっとアクセルを踏むとガタガタガタガタって嫌な音を発生。
異音の原因の多くはオイルの量が少ない時。おそらく最初はオイルが入っていたんでしょうけど、オイルが燃えてなくなっていってしまった。
ダイハツのKFエンジンなんかてきめんです。エンジン音がおかしいなと思ってレベルゲージを抜いてみたら全くついてこない。
オイルの量が少ないと、エンジンにダメージが入りますので定期的にチェックが必要です。
作業がしにくい場所にオイルフィルターがある場合は注意が必要です。
オイルフィルターのパッキンって昔と違って、フィルターから脱落するってことはめったになくなりました。
しかし、オイルフィルターのパッキンからオイルが漏れてくることはしばしばあります。
特にろ紙だけ交換ができるタイプは、パッキンのねじれに注意して組まないと駄目です。
オイルフィルターの部分って油圧がかかってきますので、パッキンがよじれたりすると勢いよくオイルが漏れてくる原因になります。
ドレンパッキンよりもオイルフィルターの取り付け部のほうが、油圧がかかるのでまずいです。
きちんと取り付け面を清掃して、フィルターのOリングやパッキンにオイルを塗布して、ねじれを防ぎながら取り付けてください。
これは僕自身が体験した出来事です。1つ目は、車検で入庫したベンツ。オイル交換がものすごくおろそかにされていた車です。
オイルとフィルターを同時交換して、エンジンをかけたらものすごく白煙が出るようになってしまいました。
入れたオイルはきちんとしたグレードと粘度のものですが、今までオイル交換をしてこなかったつけが回ってきたのか、相当煙を吐くようになってしまった。
結局ヘッドを徹底的に清掃したものの、症状はさほど変わらずといったところでした。
そりゃオイルが入ってなければ白煙ははきませんから。
そして最後が笑えない話です。
こちらも車検整備で、オイル交換をずーっとしていなかったVOXY。エンジンの音もヤバい感じで、とりあえずオイルとフィルターを交換。
排出されてきたオイルの色がヤバいです。もうメタルの色が混ざり合った金色なんです。
これはいつブローしてもおかしくないなと思っていたら、納車に出かけた先でのエンジンブロー。
結局エンジンを載せ替える羽目になったという話です。
エンジンから打音や異音が出ている時って、オイル交換をするのも怖いです。どんな副作用が出るかわかりませんから。
ここまでひどい症状になる前に、定期的にオイル交換をしましょう。
エンジン内部をたまに奇麗にしたいのなら、遅効性のフラッシング剤がお勧めです。
オイルにまつわるトラブルでした。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。