エンジンオイルの交換が昔に比べて気を使う必要がでてきました。オイル交換後に車によってはリセットをかけたり、量を経過観察したりしないといけません。
過去にあった事例を交えて、エンジンオイルの量について考えてみます。
最初に紹介するのは一番ひどい事例です。
僕が実際に目で見て現場に居合わせました。
どんな事が起きたかというと、車はスバルのプレオでした。型式はRA2というもので、スーパーチャージャーがついていた車両です。中古車販売で、当時整備士になりたての新人が作業をしていた。
作業指示書に記載されている事項を全て終えて、いざ完成検査!そうしたらいきなりのオイル漏れが発生しました。
その漏れ方がすごかった。オイル漏れって少しずつじわりじわりと漏れるケースが多いのですが、明らかにジャバジャバと漏れてくるのです。油圧がかかっている部分からオイルが漏れているのか?
すぐに検証に入りました。しかし、どこから漏れているかわからないくらいエンジンがオイルまみれになっていた。やむを得ないので各部を分解して清掃・組みなおして様子を見ると、エアクリーナーケース付近からジャバジャバとオイルが吹いてきた。
原因は一体何だったのか?結果を書くと、エンジンオイルの入れすぎでした。オイルの入れすぎっていってもその量は2倍も入っていたんです。どういうことかというと、新人整備士はエンジンオイルを抜いたと思い込んでいたんです。
オイルを抜いていないエンジンに規定量のオイルを再び注入したものだから、その量たるや2倍です。新品のエアクリーナーもだめになるし、エアクリーナーケースもオイルまみれになるしで散々でした。
オイルの量が多すぎると、このように内圧が高まって吹き返してきます。これは極端な例ですが、入れすぎるとエアクリーナー側にブローバイが増えるのでエアクリーナーがすぐに汚れてしまいます。
エンジンオイルを入れすぎると、一体どのような弊害が発生するか?
前述したとおり、オイルを入れすぎるとブローバイが過多になり吹き返してきます。インテーク側に戻されるのでエアクリーナーが汚れやすくなってしまいます。
そして、オイルが入りすぎることによって発生するのがフリクションの増大。エンジンの心臓といえばクランクシャフトです。クランクシャフトが回転して動力を得るわけですが、シャフトの下にはオイルが溜まってるオイルパンが鎮座しています。
オイルパンの形状によっては、オイルを入れすぎると回転するクランクシャフトにかきあげられるようになります。ボートのオールをイメージするとわかりやすいです。回転させるオールに水面が接触すると抵抗になりますよね?
これと似たような状態になり、燃費の悪化などを招きます。
さらに入れすぎると、インテーク側から燃焼室へオイルが入り込みマフラーから白煙が出始めます。
これ以上入れすぎるとエンジンが異常燃焼したりしてノッキングの発生。しまいにはエンジンが壊れてしまいます。
これも実際にあったケースですが、ディーゼルエンジンにオイルを抜かないで規定量を注入。エンジンオイルの量が2倍になった症例も知っていますので紹介。
エンジンが急にふけあがり、ものすごい白煙を出してノッキングを発生。アクセルを踏んでいないのにエンジン回転はレッドゾーンまで上がって、キーをOFFにしてもエンジンが止まらない。
理由は量が多すぎたオイルが燃焼室へ入り込み、燃料として作用してしまったから。オイルが燃え続けてエンジンキーをOFFにしてもエンジンが止まらなくなってしまった。
結果この車はスロットルをふさいで空気を遮断することでエンジンを止めることができた。
一歩間違えば車両火災です。
エンジンオイルの入れすぎは百害あって一利ないということです。
今のクリーンディーゼルはエンジンの性質上燃料がオイルに混入してきます。レベルゲージを点検して規定値以上オイルが増えていたら、燃料希釈で潤滑能力が失われているということでオイル交換をしないといけません。
それを正確にはかるためにもオイルの量は厳守です。
オイル交換をした時にでたらめに量を入れていたのでは、正確に把握できません。
そして、エンジンがくたびれてオイルが減るエンジンに
「どうせオイルが減るから多めに入れておこう!」
と、オイルを規定値以上入れるのもお勧めできません。やはり量は守って、減ってきたら継ぎ足しをするのが正解です。最初から多めに入れすぎるといいことはないのです。
僕はオイル交換をするときにゲージ8分目付近でオイルを入れています。これはエンジンが完全に停止してオイルパンにオイルが戻ってくることを考えての結果です。
最初からFULLまで入れてしまうと、翌朝レベルゲージを抜いてみると量が多く入りすぎていることがあります。
なので僕は8分目くらいでオイルの量はとどめています。さすがにゲージ半分だとオイル消費するエンジンだったら困るので、もう少し入れるほうがいいかな。
オイルの量って、入れすぎるといろんな弊害があるということがわかってもらえたでしょうか?
もしどこかのショップでオイル交換をお願いしているのなら、翌朝ゲージを点検してみてください。ちゃんとFULLになってれば、きちんとオイル交換をしてくれるお店です。ゲージより多かったらいい加減な作業です。
いいお店やいい整備士を見極めるにもオイルのゲージが参考になります。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。