駐車場に車を止めておくと、地面にオイルの漏れた滲みがある・・・。
エンジンのどこかからオイルが漏れている。こんな経験がある人は多いでしょう。実際に、車検の時も著しいオイル漏れは検査に合格できないようになっています。
車のエンジンというと、摺動部分の潤滑目的をはじめとして、冷却させたり密封させたり、エンジンオイルには様々な役割があります。軽自動車でおおよそ3リットル弱、小型車で3リットル〜4リットル程度。普通車だと5リットル以上オイルがエンジンの内部に入っています。
エンジンは各種パッキンやオイルシール、ガスケットなどを使って、外部へオイルが漏れ出さないように密封されていますが、ある程度年式が経過してきたり距離を走ってくるとどうしもオイルが漏れだしてきます。
その原因はパッキンしている部品は主にゴム製品。このパッキンが長年の熱などで硬化していき、弾力を失ってします。すると外部へ漏れだしてくるわけです。
代表的なオイル漏れ発生箇所をまずはあげてみます。
・ヘッドカバーパッキン
・ドレンパッキン
・オイルフィルターのパッキン
・オイルパン
・カムシャフトオイルシール
・クランクシャフトオイルシール(フロント・リヤ)
・タイミングチェーンカバーのパッキン
・ヘッドガスケット
・オイルポンプなどのオイルシール
・ディスビや各種センサの取り付けOリング
ざっとあげただけでも、オイル漏れが発生する箇所はこんなにあります。それぞれどの程度修理代がかかってくるかを見ていきましょう。
エンジンオイルからのオイル漏れ。一番代表的な漏れどころ。それはヘッドカバーのパッキンです。
ヘッドカバーというと、別名ロッカーカバーパッキンと言われたり、タペットカバーパッキンともいわれています。簡単に言うとエンジンの一番上のカバーです。ここにはゴムパッキンを使ってオイルが漏れ出さないようになっています。
長年使ってくると、パッキンが硬化してオイルが漏れてくる。交換作業はヘッドカバーを外してパッキンを交換する。部品が2000円〜3000円くらいです。工賃は車によっては様々。
すぐに外せるヘッドカバーだと工賃5000円もしません。ただ、エンジンのレイアウトによってはインテークマニホールドを外さないといけない・・。など、そういう車は工賃も跳ね上がります。
ヘッドカバーパッキンからのエンジンオイル漏れ修理代の相場は7000円〜4万円くらいになってくると思われます。特にV型エンジンのヘッドカバーパッキンは費用がかかります。
単純だけど結構多いのがドレンパッキンからのオイル漏れ。
オイル交換をする時に、オイルを排出させるドレンボルトを外します。その時、ドレンボルトのパッキンを再利用すると漏れてきます。
トヨタやダイハツなどのパッキンは再利用してもなかなか漏れない優秀なパッキンを使っていますが、潰しパッキンを使ってたりすると必ず交換しないとダメです。
ドレンボルトのパッキンは100円〜200円くらいのもの。オイル交換と一緒に必ず交換するようにしましょう。
特殊なワッシャを使ってる場合、あらかじめ持参していかないとお店側でパッキンを持ってないケースもあります。三菱のアイとかがそうです。
ドレンボルトのパッキン交換はオイルも抜けちゃうので、修理代の相場は3000円〜8000円程度になってきます。
オイルフィルターからのオイル漏れを見てみましょう。
オイルフィルターはエンジンオイル2回交換に1回交換することを推奨されている部品です。エンジンオイルのゴミを取り除くろ紙です。この部品にもゴムパッキンが使われています。ここからオイルがもれることがあります。
オイルフィルターからのオイル漏れは、単純にフィルターを交換する必要があります。漏れてくる原因は取り付け時に、エンジン側をきれいに清掃しなかったり、新しいパッキン部にオイルを軽く塗ってから組み付けないなど取り付け時に問題があります。
たまに製品不良も考えられますが、ほとんどが人為的なミスで漏れてきます。
オイルフィルターのオイル漏れ修理は部品で1000円〜3000円程度、そこに工賃と若干オイルを補充するので、2000円〜7000円程度になってきます。
続いてオイルパンからのオイル漏れです。オイルパンというのは、エンジンオイル止まってる時にオイルが入っている容器です。
エンジンが始動すると、オイルストレーナーからオイルパンの中に入っているオイルが吸い上げられていきます。このオイルパンですが、オイルがもれることがあります。
オイルパンからオイルがもれる原因は3つ。
・錆びて穴が開いてしまう
・ぶつけて穴が開いてしまう
・パッキンからのオイル漏れ
オイルパン自体に問題がなければ一度取り外して組み直すようになります。
オイルパンのパッキンは液体パッキンを使っていることが多いです。
液体ガスケットを塗って組み付ける。
オイルパンからのオイル漏れ修理費用は、部品代が3000円〜2万円くらい。ここに工賃とオイル代が入ります。工賃は様々です。
オイルパンの修理代は15000円〜5万円くらいかかってきます。
カムシャフトのオイルシールからのオイル漏れ修理。
こちらは、結構作業的には大変です。まず、カムシャフトのオイルシールというのはどこか?エンジンには大まかに2種類のシャフトがあります。
心臓部分のクランクシャフト。クランクシャフトの動きに合わせて吸気・排気バルブを開閉しているカムシャフト。
このカムシャフトとエンジンの接続部分にゴムパッキンであるオイルシールが使われています。このオイルシールが硬化してオイル漏れを起こす。
カムシャフトオイルシールの交換は必然的にタイミングベルトを取り外す必要があります。なので、相当じゃじゃ漏れでない限りは、タイミングベルトの交換と一緒に交換するのが工賃を浮かせるコツです。10年10万キロをめどに交換するということですね。
タイミングベルトを外して、ベルトがかかっているスプロケットも外す。
すると、オイルシールが見えるので引っこ抜いて打ち込みます。
カムシャフトのオイルシールは部品こそ1000円もしないものですが、工賃が相当かかります。
カムシャフトオイルシールの交換費用は3万円〜10万円程度かかります。DOHCならカムシャフトは2本あります。さらにV型エンジンになるとシリンダーヘッドが2こあるので、最大で4つカムシャフトのオイルシールが使われています。
クランクシャフトのオイルシール。フロント側です。フロント側というのはタイミングベルト側。
クランクシャフトのオイルシールはフロント側とリヤ側に分かれています。このタイミングベルト・チェーン側のオイルシール交換。もれる原因はカムなどと同じ。固くなって漏れます。
交換する費用は、タイミングベルトを使ってる車なら、タイミングベルトを外す必要があるのでそこそこの費用がかかります。
クランクシャフトオイルシールの交換費用は、タイミングチェーン方式のエンジンだと1万円程度で済むこともありますが、タイミングベルトを使ってるエンジンだと工賃がかかります。
1万円〜5万円弱はかかってきます。
続いてクランクシャフトリヤからのオイル漏れ修理。これは大変です。どうして交換が大変なのかというと、ミッションを取り外さないと交換ができない仕組みになっているからです。
マニュアル車であれば、ミッションを下ろしてクラッチディスクとカバー・フライホイールを外します。するとようやくクランクシャフトリヤオイルシールが見えてくる。
なので、リヤクランクからオイルが漏れてきたらマニュアル車の場合一緒にクラッチもOHするのがオススメです。どうせミッションを下ろしてクラッチをOHするんだから。
AT車の場合もやはりミッションを外してフライホイールを外す。そうしてリヤクランクのオイルシールを交換するようになります。
リヤクランクオイルシールの交換費用は3万円〜10万円ほどかかってきます。
タイミングベルトではなくタイミングチェーンの車。この車の場合、チェーンケースである別名フロントカバーからオイルが漏れてくることがあります。
パッキンは液体パッキンを使ってるのがほとんどです。カバーを外してシーリングして付け直す。
しかしこのタイミングチェーンカバーを外すには、ヘッドカバーのパッキンを外して、オイルパンを外して、クランクシャフトプーリーを外して・・。などと相当な工程を含みます。
エンジンによってはエンジン自体を脱着して交換しないといけないものもあります。
タイミングチェーンカバーからのオイル漏れ修理は3万円〜10万円程度はかかってきます。大変な作業です。
長年エンジンを使ってくると、漏れてくるヘッドガスケット。このヘッドガスケットという部品はエンジンを2分割したシリンダーヘッドとシリンダーブロックを密封しているガスケットです。
ここからオイルが漏れてくると、タイミングベルトならベルトを外す必要があります。タイミングチェーンも同様です。修理費用はタイミングチェーンのほうがかかってきます。
新品のガスケットは5000円くらいから部品代がかかります。ただ工賃はかなりかさみますし、タイミングベルトやチェーンなど一緒に交換したほうがいい部品もたくさん出てきます。
ヘッドガスケットの修理費用は5万円〜20万円程度かかってきます。車によってはやはりエンジンを下ろさないと難しい車もあります。
オイルポンプのオイルシールですが、これも基本的にカムシャフトやクランクシャフトフロント側のオイルシール交換と同じ工程になります。
部品代はやはり1000円程度のものですが、交換するのにタイミングベルトを外すといった必要がでてきます。
オイルポンプなどオイルシール交換費用は3万円〜10万円程度はかかります。
エンジンにはその下にもOリングや細かいパッキンなどが使われています。
・ディストリビューターのOリング
・サキューラープラグパッキン
・オイルレベルゲージOリング
これらパッキン類は大体が1000円前後の部品です。交換工賃は3000円〜1万円ほどかかかってきます。
長文になってしまいましたが、エンジンには様々なパッキンやオイルシールが使われていること。それらパッキンが熱で固くなりオイル漏れを起こすこと。
修理代にはそれぞれ費用がかかることがわかっていただけたと思います。ただ現場で働く整備士として、明らかにこのオイル漏れ修理は現実的じゃないな・・。と思うこともあります。
例えば20年以上走っていて、あと1回車検を通したら乗り換える予定。タイミングチェーンを搭載したエンジンのミニバン。
この車検を通したら次の車検までには代替えをする。わかってる車に多大な費用をかけて修理するのはどうかと・・。こういう時、オーナーと相談して、エンジンを綺麗に洗浄してオイル漏れ止めの添加剤を入れる。
添加剤を入れて、驚くほど漏れ止め効果がでる場合があります。何万円もかけて修理するより、添加剤を入れて各オイルシールの弾力を回復させる。そうすることでオイル漏れを止めることができるとしたら、そちらをオススメさせていただいています。
オイル漏れをきっちり直すのであれば、手間がかかっても直す。代替えなどを検討しているのならとりあえずエンジンを洗浄して漏れ止めを添加して車検を通す。
いろんな方法があります。もし車検でオイル漏れを直さないと通せませんと言われたら、洗浄して漏れ止めを入れておいて下さいと相談するのも一つの手段です。
それと修理に踏み切る場合、一緒に交換したほうがいい部品があれば整備士ときちんと話し合って作業を進めてもらいましょう。リヤクランク交換時にクラッチをOHしなかった。のちにクラッチが滑ってまたミッションを下ろさないといけなくなった。
工賃が2回かかる。こういうケースはよくあります。高額なオイル漏れ修理の場合は、一緒に交換できる部品は一緒に交換しちゃうのが後々に費用を抑えるコツになってきます。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。