MHO ENGINEERING

僕が経験した中で、エンジンオイルを交換してエンジンが壊れてしまうケースが何件かありました。本来エンジンを保護するためのオイル交換ですが、それがきっかけでエンジンが壊れてしまうというのは、本末転倒です。

実際に僕が経験した、オイル交換をして壊れてしまったケースを紹介します。

エンジンから打音がでていた車にオイル交換したら、停止した

忘れもしない出来事でした。車検で入庫してきたVOXY。アクセルを吹かすと、エンジンからガラガラと打音がでてきました。

オイル管理が非常によろしくないことは、エンジンの異音もさることながら、レベルゲージを抜いて確認してもはっきりとわかりました。

エンジンオイルがゲージについてこなかった。

こういう車が入庫してきたとき、注意しないといけないなと今になっては思えます。しかし、当時そこまで用心深くなかった僕は、オイルとオイルフィルターを交換。

エンジンの打音こそ消えませんでしたが、オーナーにその旨を伝えて排ガスを検査すると基準内だったので、車検を続行。

結果、納車時にエンジンの打音がひどくなり停止してしまった。

オイルパンをはがしてみたら、ひどい有様でメタルが粉々になっているのがわかりました。

もし、エンジンオイルを交換していなければ、もうしばらくはもったのかもしれません。

オイルを交換したことで、メタルへ負担がかかり、流動性が良くなったがために異物が各部へ入ってブローしたということだと思います。

エンジンオイルを交換したら、ものすごく白煙が出るようになった

これもよく覚えています。車検で入庫してきたベンツ。

オイルゲージを抜くとこれまたゲージにほんのちょっとしか真っ黒なオイルが付いてきませんでした。

このままではよくないということで、オイルとフィルターを同時に交換。

こちらもしばらくは問題なかったんですが、納車後に車検に出したら白煙が出るようになったという苦情が入りました。

再入庫して調べてみると、オイル交換の作業自体には何の不備もありませんでした。量も適切です。

結局シリンダーヘッドを外して、ヘッドをOHすることになりましたが内部はものすごくスラッジがひどい状態だったということ。

それがオイル交換をしたがために、オイル下がりが発覚して白煙が出たというケース。

もともとオイル下がりを起こしていたけど、オイルが殆ど入ってなかったのでわからなかった。

オイル交換をして翌日にエンジン不調！タイミングチェーンがズレた

このトラブルは最近遭遇しました。というか、これはタイミングが悪いなぁというのが正直なところ。

ＶＷのポロで、オイル交換をしてその翌日にエンジンが吹けなくなってランプがついたとのこと。

診断してみると、明らかにエンジンのパワーが出ていなく不調。もうこの時点でタイミングだろうなって。

内部を詳しく見てみるとやはりタイミングチェーンがズレていました。どうしてこんなことが起こるのか？

まずこの型式のポロはもともとタイミングチェーンが弱くて伸びやすい傾向にあります。オイル交換前までは、そのオイルに馴染んでいたので問題なかったんです。

ですが、オイルを交換したことで始動時の油圧特性が変わった。油圧が立ち上がるまでのタイムラグによって始動時にチェーンのコマズレが起きてしまったということ。

この時は外気温も下がり気味だったので、油圧が立ち上がるまでいつもより時間がかかったのかもしれません。

いずれにしろ伸びてきていたタイミングチェーンもギリギリのところにあったんですが、オイル交換をすることでとどめをさす結果になってしまったということ。

こればっかりは運がなかったなぁとしか言わざるを得ないです。

オイル交換を実施する前に気を付ける事

これは整備士へ向けてのメッセージですが、オイル交換を実施する前によく観察しておくことがポイントになります。

オイル交換をしたことで壊れた！と言われないように、交換前にエンジンの状態を把握しておきましょう。

例えばアクセルを吹かして異音や打音がしないか？オイルを抜く前にゲージをきちんとチェックして、どの程度のオイルが残っていて、どんな状態なのか？

入れるエンジンオイルは純正でなくても大丈夫なのか？

打音が出ているエンジンや、オイルが殆ど入っていないエンジンに関しては交換をする前にお客さんに同意を求めておく事も重要です。

万が一オイルを交換することで、こういうリスクが表面化するかもしれない。そこまで納得してもらえれば交換してもいいと思います。

とかく最後に作業をした人間に責任が回ってきがちな業界ですが、それはただ運がなかったという場合はよくありますから。

そのオイル交換、ちょっと待った！と言いたいです。