そんなものはやらなくていい!
車検整備で入庫した車の整備内容について、お客さんに説明していると、よく言われます。ただ、その部分を修理しないと厳密にいうと車検に引っかかるため、作業せざるを得ない。
今回は意外な理由で車検にひっかかる部分を紹介します。
何はともあれ、これが車検に引っかかる意外な作業です。
「ワイパーゴムが切れているので、交換させてください」
「そんなもの、やらなくていい!」
「でもワイパーゴムが切れていると車検に引っかかってしまうんです・・・」
「はあ?何言ってんだ!?」
これ、王道的あるあるパターンです。知らない人が大多数で、とてもグレーな部分。でも実はワイパーゴムが切れていると厳密に検査をすると車検が通らないんです。
自動車の前面ガラスに備える窓ふき器は、視野の 確保に係る性能等に関し、視認等その他適切な方法 により審査したときに、前面ガラスの直前の視野を 確保できる自動式の窓ふき器(左右に窓ふき器を備 える場合は、同時に作動するものであること。)で なければならない。 この場合において、窓ふき器のブレードであっ て、老化又は損傷により著しく機能が低下している ものは、この基準に適合しないものとする。(細目 告示第 225 条第 1 項関係)
審査事務規定より引用
実はフロントガラスのワイパーについては審査事務規定にこのようにはっきりと明記されています。
後半の窓ふき器のブレードであって、老化又は損傷により著しく機能が低下しているものは、この基準に適合しないものとする。
この一文が全てを物語っています。ワイパーゴムが切れていて、かきの悪いものは車検に通らないんです。
著しく機能が低下しているものはと書いてあるところが、検査員のさじ加減になります。先っぽが少し切れているけどまあ、ワイパーのかき具合がさほど悪くないものは検査にパスするかもしれません。
でも厳密にいうと車検はNGなのです。
続いてはデフロスタについて。デフロスタってなんだかわかりますか?車のフロントガラスの内側に風を当てて、曇りを取る機能です。
このデフロスタがきちんと使えないと車検が通りません。
具体的にどんな車が問題になるのかというと、昔の車にヒーターの風向をレバーでガチャガチャっと移動させるタイプがあります。
これはワイヤーを介して風向のリンクを切り替えていますが、ヒーターコアにほこりなどが詰まってくると動きが渋くなってしまい最終的には固着してしまいます。
デフロスタとして風が出ないものは車検に通らなくなります。
ちゃんとフロントガラスの曇り止め機能を果たしていないものは駄目です。このリンケージに問題を抱えている車があります。
続いてはタイヤです。基本的にタイヤは残り溝が1.6mm全周にわたってあり、車体からはみ出ていなく、純正サイズから大幅に変わってなければ車検は通ります。
しかし、貨物車は話が変わってきます。
貨物車って、乗用車と違って荷物を載せます。この積載荷重がタイヤの性能でカバーできていないと車検に通りません。
タイヤのサイズ表記に145/12/6PRなどと書いてあるものがあります。この6PRというのが強度を表しています。145/80R12でも80Nといった表記があればまあ大丈夫。
問題は145/70R12など。タイヤの荷重が積載状態の輪荷重を支えきれないと、車検は通りません。
このサイズなら155/65R13など幅の広いタイヤになれば、耐荷重はクリアできると思いますが、もちろん車体からはみ出してはいけません。
タイヤも貨物車になるといろんな制約が出てくるということです。
外してしまってる人も多いですが、前席のヘッドレストがないと車検に通りません。車に積んでおいてあればすぐに装着できるからいいんですけど、たまに外して家に置いてあるという人がいます。
ヘッドレストも前席は取り付けていないと車検に通りません。
あとはちょっとまとめてみます。
・シートベルト警告ランプが切れていると車検に通らない
・エンジンチェックランプが点灯していると車検に通らない
・車体に著しい損傷などがある場合も車検に通らない
細かいところをあげればまだまだありますが、こんなことで車検が通らないの?っていつもお客さんに驚かれるものを紹介してみました。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。