リコール、毎日毎日いろんなメーカーがたくさん出てきますね。
リコールという制度自体はいいことです。車を買ったあとに、製造時での欠陥が見つかったために無償修理をするということですから。
しかしリコールの対応に追われる現場という立場から、本日は書いてみます。
車というのは自動車メーカーが製造します。そして販売するのが自動車ディーラー。皆さんが車を買いに行っているメーカーのお店は自動車ディーラーです。
そのメーカーの自動車を販売するディーラー権を取得した会社が、トヨタだったり日産だったり自動車メーカーのロゴマークをつけてディーラーとして販売しています。
運営母体は普通の株式会社ってところですね。我々町工場と呼ばれる整備工場はどうか。車を販売している所は、各自動車ディーラーに車を業販してもらいます。ディーラーがお客さんに提供する金額よりも安い金額で車を卸してもらうんです。
自動車ディーラーにとっても、他の整備工場へ業販するのは悪い話じゃない。利益率はうすいけれど、販売台数は伸びるわけですから。
ここまでが自動車の販売の話です。では本題のリコールにうつります。新車って150万円する車だとしたら原価はいったい幾らなのか?これは僕もわかりかねますが、それこそ原価は半分くらいなんじゃないのかなと想像します。
150万の車に対して原価が75万円。この75万円分を自動車メーカーがディーラーへどの程度の金額で新車を卸すか決める。当然この75万円の中にはリコールが出た時の為の費用も混じってるわけです。
新車販売前に再三テストを繰り返したとしても、不特定多数に使われると思わぬ共通の故障がでるかもしれない。そうしたらリコールをしないといけないでしょう。その費用は自動車メーカーがキープしておかないと。
そして実際にリコールが出たら、リコール部品は自動車メーカーが各ディーラーへ配布します。そして当然ディーラーとしては、時間を割いて該当部品を交換したりするのだから自動車メーカーに工賃を請求するわけです。
自動車ディーラーは、リコールが出たらメーカーから費用が出る。では町工場はどうか?これはね、8割以上は出ません。
2割はでるのか?というと、リコール作業を町工場でやらせてくれるケース。今ですと、スズキのエンジン停止不具合リコール、ワイパーモーターのリコール。ダイハツでいうとリヤシャフトオイルシール交換作業。スバルではクランクプーリーなどなど。
ディーラーから必要な部品を取り寄せて作業を済ませ、ディーラーに工賃を請求すると。これならいいんです。通常の指数より安い工賃になりますが、一応作業代金として儲けがでる。
困るのが、ディーラーでしかできないリコール作業です。これが最悪。お客さんの立場でいうと車を買った整備工場にまず相談の電話が来ます。リコール通知は自動車メーカーから直接届くんですけどね。
「リコールの通知が来たんだけど・・」
この電話が来たら、まずは内容を調査します。自動車メーカーのHPに車体番号を入力してなんのリコールかを確認します。
そしてディーラーに問い合わせます。その作業は部品がもう入荷しているのかどうか。ここがまず一つのポイントです。エアバッグなどだと部品の供給がまだ間に合っていないので、実際に通知を受け取ったとしてもリコール作業を受けられない。
だったら通知なんか出すなよ・・。って思うけど、一応リコールが出ているというアピールをしておかないとそれが元で事故が起きたら自動車メーカーも立場がヤバい。なので部品が間に合っていようがいまいが通知はオーナーに届けられます。
部品が来てない場合、ディーラーに優先してとってもらうように予約をします。
そして部品が入荷したら、お客さんとディーラーの都合をあわせるわけです。仮にお客さんが火曜日しか車が空いていない。という。だけどディーラーは火曜日が休みだ。こうなると、当然作業を受けることができないでしょう?
どうするんだってディーラーに文句を行った所で定休日だからしょうがない。工場代車を出して、他の曜日にお客さんにズラしてもらうわけです。この板挟みが非常に苦しいんです。当人同士で話してもらえれば、この日は空いてる、この日じゃないとだめだって予定はすぐに組めます。
ですが、板挟みだとお客さんの都合を聞いて、ディーラーに予約をいれる。その日にディーラーが作業できないというと、またお客さんに電話をして他に空いている日がないかを聞く。その繰り返しでようやく日程が決まる。
お客さんにそのままディーラーに行ってもらうわけにも行きませんから、こちらから車を引き上げに行くんです。そしてディーラーまで車を搬入して、また納車する。
これだけの労力を費やしても1円にもならないリコールが山のように出てくるのです。
整備振興会にも、相談が来ているようで町工場に負担がでかすぎる。せめて搬入代金などを自動車メーカーから工場へ支払ってもらいたいと。
さらにはこれからはエアバッグリコールを終わらせていないと車検を受けることができなくなるという。
もうリコールって本当に頭痛の種でしかないのであります。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。