車検整備が高い・・・。こんな声をリアルタイムでたくさん聞ける時代になりました。車検整備が高いと感じているのは何故なのか?
そもそも昔の車検整備はもっと部品交換が頻繁に行われてきました。各消耗部品の精度も悪く、寿命も短かった。しかし、少し前からニューサービスといものが整備の現場に導入されました。
ニューサービスを簡単に説明すると、今までだったら交換されていた部品があったとします。これら消耗部品の交換をお勧めはしますが、最終的にはユーザーに納得してもらえれば後日整備でもいいというもの。
その際、点検記録簿などに内容を書いて、書面で残しておきます。
整備士がこの車はここまで作業をやったほうがいいな。というメニューを組み立てます。そのメニューから、ここだけはやらないと車検には通りませんよという部位も明らかにしておく。
あとはお客さんにどこまでの整備をするか選んでもらう。当然、交換されなかった部品に関しては、今後このようなトラブルが発生する可能性があるので早めに整備してくださいと伝えるわけです。
このニューサービスが始まってから、車検の売り上げは下がったと実感しています。それでもまだ車検が高いと感じるのは、車の信頼性や各部品の寿命が延びて、そもそも故障しなくなったからだと思います。
ニューサービスが当たり前になった今、車検の消耗部品をケチって交換しなかったらどんな故障が待ち受けているかまとめてみます。
オイルとオイルフィルター。こちらは車検の時に交換しなくてはいけないかというと、そうではありません。
エンジンオイルの量がきちんと入っていて、潤滑不足などにならない状態であれば後日整備に回すことは可能です。
ではエンジンオイルやオイルフィルターを交換しないとどうなるか?
写真のようにオイル交換を怠っていると、エンジン内部にスラッジが溜まっていきます。エンジン内部に傷ができたり摩耗したりして、異音を発生することがあります。
一度エンジン内部から異音が出てきてしまうと修理には高額な費用が必要です。ずーっとオイル交換をしないでいると、エンジンが焼き付いてしまったりして使えなくなります。
最悪のケースは車両火災にも陥ってしまいます。
つづいての消耗品。ファンベルト。交換しないとどうなるのか?ファンベルトは、1本ですべての補機駆動類を駆動しているサーペインタイン方式。各補機類毎に分かれて複数使ってるタイプに分かれます。
どちらも共通して言えることは、ベルトが切れたら駆動している補機類がストップしてしまうということ。車検の時に無理に交換しなくても検査には通ります。
オルタネーターベルトが切れたらバッテリーの充電が止まってしまい、最終的にはエンジンが停止します。
パワステベルトが切れたら、走行中急にハンドルが重くなります。
エアコンベルトが切れたら、エアコンが入らなくなります。
ウォーターポンプベルトが切れたらオーバーヒートします。
サーペインタイン方式の場合、これら補機類全てがストップしてしまいます。ベルト交換はDIYで簡単にできる車種もあればそうでない車もあります。プロにお任せするのがお勧めです。
ガソリンエンジンのスパークプラグ。こちらも消耗部品です。車検時に失火していなければ交換しないでも通ります。
排気ガスの濃度が基準値以上出ていて、プラグが原因であれば交換しないと車検は通りません。単に摩耗しているからという理由であれば、交換しなくても車検はOK。
ではプラグ交換を見送るとどうなるのか?
これはエンジンが失火してパワー不足になります。いわゆる失火したシリンダーが機能しなくなるので、4気筒エンジンなら3気筒になるといった具合。
坂道もまともに登らなくなるし、最悪イグニッションコイルやECUも壊してしまうこともあります。
ブレーキパッドやブレーキシューが減っていたとします。交換しないと車検に通らないのかというとそういうわけではありません。
車検の完成検査ではブレーキパッドの厚みが1mmでも残っていれば規定の制動力検査をパスできる為、交換を見送ることは可能です。
ただ、ここはニューサービスだろうがなんだろうが、基本的には交換をお願いしています。やはりブレーキは命に直結する部位なので、車検が終わってすぐにブレーキが効かなくなったというのは目も当てられません。
現場サイドからはなるべく譲らないで交換をお勧めしたいところです。
もし交換しないとどうなるか?
これはブレーキパッドが終わってしまうと、急にブレーキが甘くなります。ブレーキパッドの地金でローターを削ってしまうため、ブレーキを踏んだ時のペダルタッチもガガガと違和感を感じます。
ドラムブレーキも同じです。ブレーキが急に効かなくなり、ペダルタッチが悪くなります。高速で走行しているときにブレーキが終わったら一発で事故に直結します。
車検に通るとはいえ、交換をしておいてほしいところです。
マニュアルミッションやAT、CVTのオイルやデフのオイル。こちらもある程度の距離を走行すると交換をお勧めされる部位です。
いずれも車検整備は量がきちんと入っていて問題なければ、交換しなくても検査は通せます。
それではミッションオイルやデフオイルを交換しないとどうなるのか?
まずはミッションです。ATに関して言うとシフトショックが大きくなったり、変速がおかしくなることがあります。さらに無視して使い続けると内部にスラッジが溜まってしまい、シフトアップしなくなるなどといった症状につながります。
CVTも異音が発生して駄目になってくるものも多いです。
デフに関して言うと、うなり音が最初し始めます。それを無視して使い続けると走行中ロックする可能性もあり危険な状態に陥ります。
これら駆動系の修理はとても高額になりえますので、そうなる前にも油脂は定期的に交換したいところです。
2年の車検ごとに交換が推奨されている油脂として、ブレーキフルードがあります。ブレーキフルードって、交換しなくても車検には通ります。
ではブレーキフルードを交換しないでいるとどうなるのか?
まず、フルードは吸水性があるので長年使ってくると沸点が下がります。すると、峠道などでべーパーロック現象を引き起こしやすくなってしまいます。
さらに、ブレーキのキャリパーやホイールシリンダー内に錆が発生してしまい、フルードが漏れたり、ブレーキが錆で固着したりします。
ブレーキフルードをきちんと交換しておけば、そう簡単にフルードが漏れることはありませんし内部が錆びることもありません。
ブレーキフルード交換をケチっているとブレーキの故障に直結してくるので、できれば車検ごとに交換したい油脂です。
車のエアクリーナーやエアコンフィルターはどうか?
まずエアクリーナーはエンジン内部に空気を取り入れるためのフィルターです。エアコンフィルターは室内に取り付けられているフィルターです。
役割がそれぞれ違います。
エアクリーナーを交換しないとどうなるか?フィルターが目詰まりを起こすと、エンジンが不調になります。エンジンがエンストしたり、ハンチングを起こしたりする原因になります。
エアコンフィルターは走行には問題はありませんが、室内がカビ臭くなり雑菌の温床になったり、エアコンの風量が弱くなる車もあります。
どちらも目に見えた不調が表れてなければ車検には通ります。
車検のタイミングで交換が推奨されているクーラント。ロングライフクーラントなら車検と同じ2年ごとの交換推奨。
新車に充填されているスーパークーラントなら最長で11年使えるメーカーもあります。しかしスーパークーラントであっても、そろそろ交換時期を迎えてきている車が多い。
もしクーラントを交換しないとどうなるか?
クーラントを交換しないと冷却ラインが錆びてきます。不凍効果は持続するものの、防錆効果は劣化して内部が錆びてきます。
ひどい話、錆がラジエターに詰まってオーバーヒートする車もあります。クーラントのエア抜きは失敗するとこれまたオーバーヒートを引き起こすので、できれば交換したい言われたらお任せしてほしい部類です。
最後に紹介するのがタイヤです。タイヤの検査には2パターンあります。残り溝が規定以上残っていること。著しい亀裂や損傷がないこと。
これら2つに問題がなければ車検は通ります。特にタイヤは高額な部品になるので、即決で交換お願いしますとは言えない部品です。
タイヤが劣化しているとどうなるのか?一番怖いのが走行中のバーストです。残り溝が残っていたとしても、タイヤが固くなって古くなると、走行中にバーストすることがあります。
経験済みです。残り溝が基準以上あったとしても、整備士がこれはまずいなぁと指摘してきたタイヤは早期交換をお勧めします。
その後にバーストした車を何台も目撃しています。
以上、車検で交換を推奨される各消耗部品。交換しないとどうなるかを記載してみました。交換しないでいいのであれば、それに越したことはありません。
ですが、お勧めする以上理由があります。交換をケチって余計なトラブルにつながらないようにしましょう。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。