ブレーキがきかない
車検で預かった平成7年式のハイゼット。
お客さんは気づいていないようだけれど、うちの工場の整備士に言わせると
「ブレーキが利かない」
という。
ボクは試乗をしたわけではなく、リフトアップした状態で
「どうだ?おかしいだろう?」
などと言われたけれど、何がどのように効かないか全く分からないでいた。
後輩にどのようにブレーキが利かないのかを聞いてみたら
「踏みしろがなくて、全然とまらない」
とのこと。
この日ボクはどうしても作業を完成させないといけないハイエースを抱えていたので、できれば他の同僚たちで受け入れ、整備をしてもらいたかった。
しかしそうは問屋が卸さないというのがわが社であるので、何故か僕がこの日一番程度の悪い車両2台の受け入れ検査をすることになった。
受け入れにボクの名前が入ってしまうので、昼休みを返上して原因を究明することにした。
リフトアップしてある車両。後輩からのメッセージ。
先輩は
「ブースター交換するか?」
などと言っているが、ブースターを試験しても不具合が感じられない。
ブレーキペダルを踏んだ状態でエンジンをかけ、負圧が利いてきたらペダルが少し沈む。
このようなブレーキブースターのテスト方法などいろいろな本に書いてある。
どうやらブースターが上手く機能していないと思われる。
そして、ブースターは故障していないというのが僕が出した結論だ。
ブレーキ倍力装置。通称ブレーキブースター
交換するのはなかなか大変そうだ。
でも壊れていないと思う。
ブースターはエンジンの負圧を利用して、ペダルの踏力を増大させる。
ブースターにつながる負圧のホースを試しに抜いてみた。
そうしたら、エンジンは思惑通りストールしそうになった。
でもちょっとおかしいなぁと思った。それは吸入負圧がちょっと弱く感じた。
そこで、荷台のフードを開けて確認したら原因が判明した。
この車両はインテークから色々な負圧をいろいろなものにおくっている。
この負圧のホースのほとんどに亀裂が入っていたり、中には外れていたりした。
原因はエンジンの細かいバキュームホースであった。ここで吸入負圧がとられて
ブレーキブースターにかかる負圧が弱くなっていた。
バキュームホースを交換する作業指示を出して、試乗してもらうとブレーキは直ったとのこと。
この日、ボクはハイエースを仕上げたかったが部品が違っていた。
なんてこったである。
とにかく自分の仕事に責任を持ってもらいたいということ。
簡単にお客さんの車の部品を換えないで貰いたいということを同僚に言っておいた。
ブースター換えて直らなかったなんて洒落にならぬ。
しかもお客さんはその事実にすら気づいていないのであるから。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。