車の取り扱い説明書やメンテナンスノートには、その車に使われるべきオイルが記載されています。もちろん新車充填されているオイルは指定されている純正のオイルです。
エンジンオイルを選ぶ基準というのは、グレードと粘度を考慮する必要があります。グレードというのはSL・SM・SN・SNPlusと、アルファベットが進むにつれて性能が上がっています。
そして粘度は0W-20といった表記で、ざっくり説明するとオイルの硬さを表しています。
写真の日産GT-Rなどは、0W-40の100%化学合成油、Mobile1が純正採用されています。
説明書やメンテナンスノートに記載されているエンジンオイルを使うことは、自動車メーカーにとって、そのエンジンの性能保護を約束してくれるものです。
もちろん、メーカーが推奨しない使い方をした場合などはこの限りではありませんが。
普通に車を使っている中で、メーカー指定のオイルを使うという事は保証を受けるうえでも重要になってきます。
多くの自動車メーカーはエンジンの保証を5年10万キロという期間でつけています。5年経過してしまうと、エンジンの故障は保証にならないということです。
走行距離が伸びてきたエンジンには、指定オイルよりも硬めのオイルを入れることで、エンジンの性能を復活させることができます。
その理由は何か?
まず、0W-20というオイルが指定粘度だとします。指定オイルをベースに、そのエンジンの油路やクリアランスが計算されています。エンジンのクリアランスって、本当にわずかな隙間です。
ダイヤルゲージやマイクロメーターなどを使って計測されるほど、細かい隙間で調整されています。
エンジンを長く使ってくると、オイルが潤滑しているとはいえ摩耗してきます。金属が高速で接触しているわけですから、いくらオイルで潤滑しているとはいえクリアランスが広がってくる。
すると、新車当時は0W-20のオイルをベースに組まれているエンジンクリアランスが、使い込んでくると広がってくる。すなわち気密性や圧縮が落ちてくるわけです。
すり減ったエンジンに新車当時のオイルを使い続けると、気密性や圧縮などを保持しきれなくなってくるという事になります。
ここでお勧めなのがオイルの粘度アップ。例えば0W-20指定のエンジンなら0W-30を入れることで気密性を保持できてパワーロスを防ぐことができるというわけです。
では、5W-30オイル指定のエンジンに、0W-40を入れるのはどうなのか?最初の5という番手を0に落とすのはあまり推奨できません。純正指定よりもオイル自体が柔らかくなるため、やはり気密性の問題がでてくるからです。
Wの部分はウインターグレードで、低温冷間時のサラサラ度を表しています。
この数字をさらに下げてしまうと、オイルクリアランスが逆に広がって油圧不足に陥るなどの弊害が出てくる可能性があります。
走行距離がかさんでくると、エンジンがオイルを食うことがあります。オイル上がりとオイル下がりで、燃焼室内にオイルが入り込みマフラーから白煙がでてくる現象です。
オイル上がりはシリンダーとピストン・リングの問題で、オイル下がりはバルブステムシールの劣化によって引き起ります。
エンジンがオイルを食うようになると、オイルの番手を底上げすると、オイル消費が緩和されることがあります。
実際に僕が乗ってる車は5W-30が指定グレードですが、あえて15W-50という硬いオイルをいれて実験してみました。
するといつもなら1000km走行時点で、オイルレベルゲージの半分くらい減っていたオイル消費がかなり緩やかになりました。
写真は2000km走行時点ゲージです。まだ8割程度はオイルが残っていることになります。このくらいの減り幅だと、途中でオイルを補充する必要もなくなります。
5W-30を15W-50に極端に粘度アップするのは実験しているだけで、お勧めはしません。しかし、オイルの粘度を上げることで確かにオイル消費が減ったのは事実です。
低粘度指数は同じにして、後ろの数字を多くすると効果が見込めます。
走行距離がかさんできたら、純正指定のグレードよりも固いオイルを入れることで、エンジンの気密性保持とパワーロスの低減。更にはオイル消費を緩和させるという効果が見込めますのでお勧めです。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。