三菱ミニキャブです。
今回はかなりレアな症状でした。
この車両は、油圧警告灯がついてしまったということで入庫。
油圧警告灯が点灯するということは
エンジンオイルの油圧が足りないということ。つまり人間でいうと低血圧状態。
そのままでいくとエンジンが焼きついてしまう可能性があります。
人間だって貧血で倒れちゃうね。
でもって、油圧警告灯が点灯する原因というのは結構あります。
エンジンオイルの量が少ない
オイルプレッシャースイッチが壊れている
オイルポンプの故障
オイルストレーナーの詰まり、オイルラインの詰まり
エンジン事態に何らかの損傷
オイルの量が少ないってのは基本ね。ゲージで量を確認。
オイル上がりや下がりや漏れでオイルが少なくなると点灯します。
プレッシャースイッチは油圧を計測するスイッチ。コレ自体が壊れることがよくある。
オイルポンプの故障。これはあまり聞かないよね。でもまぁ考えられます。
インナーローターとアウターローターがぶっ壊れてるとかね。
ストレーナーの詰まり、これはスラッジがオイルパンに溜まってストレーナーの
吸い口をふさいでオイル自体をあまり吸い上げられなくなっている状態
エンジンに損傷はブロックに亀裂やクランクなどの
機械的損傷
と、まぁそんなこんなでした。
この車はオイルの量はOK。
次に部品も出さなくて作業できるのはとりあえずオイルパンを外してみること。
で、オイルパンを外したんですよ。
そうしたらびっくりよ
なんだこれ?
こんなん初めて見たぞ!
どこのメタルだ?コンロッドメタルにしちゃでかいな。
コンロッドメタルがいかれちゃったにしてはエンジンがらがら言ってないよな・・・
親メタル?
えークランクメタルかいな?
と、思ってじっと観察
そういやこの3G83っていうエンジンには
バランサーシャフトもついていたよな?
バランサーシャフトってのは一部高性能エンジンにつけられている
エンジンの振動を打ち消すためにつけられたシャフト。
タイヤのホイールバランスを考えればわかりやすいけど、
回転するものってバランスが狂っていると振動がでるでしょう?
この振動を打ち消す周期の振動を発生させるのがバランサーシャフト。
つまり相殺されるということですね。エンジンの振動が。
三菱は軽のエンジンにもこいつを採用しているんですよ。
面倒くさいけどミッションを下ろしてみるか
下に移っている丸いのがバランサーシャフト
ここに注目
ガッタガタ
さらによぉくバランサーシャフトを見ると
そう、正体はコイツだったのだ!
この
バランサーシャフトベアリングだったのだ!
これがこんな状態だということは、エンジンのシリンダーブロックの状態も想像がつきますね。
これが原因で油圧が上がらなかったというわけです。
修理方法は2つ
バランサーシャフト、シリンダーブロック、クランク、コンロッド、ピストンを全て分解して全て計測して基準値以外のものは交換、つまりエンジンの腰下をOH
それかエンジンを載せかえるかどっちか!
とまぁなんともすさまじい結果になりました。
この車はほとんど乗らない車です。
度重なるドライスタートによる摩耗が原因だと思います。
3G83のバランサーシャフトはクランク1回転に対し2回転まわりますので、
オイルが完全に下に下がっている状態でセルモーターを回す。
そうするとクランクが回されることによって、タイミングベルトで一緒に回される
オイルポンプが各部にオイルをいきわたらせる。
その行程の間にバランサーシャフトは何回転することになるか?
クランク1回転に対しバランサー2回転。
カム1回転に対しバランサー4回転
と、エンジンの中で一番回転を強いられるシャフトです。
このドライスタートの積み重ねが原因につながったとオーナーには説明。
オイルもほとんど換えたことがないそうです。
つまり相当熱で酸化していて潤滑性能も激減しているでしょう。
恐らく走行距離だけでオイルを換えようと思ったんでしょうが、残念ながらオイルは一度火を入れると
経年劣化するものという認識があまかったんですね。
今回はかなり稀なケースですが、一応皆さんにお伝えしておきます。
以上油圧警告灯が点灯する理由でした。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。