先日エンジンハンチングなどの不調を修理した車ですが、再び同様の症状がたまに出るようになったというのでクレーム処理しました。
悲しいことに整備クレームとなってしまいました。
先日、エンジンが不調になりエンストを起こす。そしてエンストを起こすからブレーキが効かなくなるということで修理した車両です。
このムーヴはオイル管理がひどくて、ありとあらゆるところが詰まっていました。
バキュームホースやブローバイホースはご覧の通り。詰まりまくっている。
ヘッドカバーのブローバイの出口もスラッジで詰まっている。
こんな状態だから正常に負圧を発生することもできない。そして決定的だったのがここでした。
プラグホールパッキンの劣化によるプラグホール内へのオイル漏れ。このオイル漏れにより、たまにエンジンが失火をおこしていました。失火が起きて、そのままストールしてしまう。
なので、前に行った整備では、ブローバイやバキューム系統の洗浄、そしてヘッドカバーを交換するところまで。
この車はプラグホールパッキンが交換できないタイプで、ヘッドカバーをASSYで交換する必要があります。
いずれにしろヘッドカバーも詰まっていたので新品にするに越したことはありませんでした。
エンジンの失火とバキュームホース類の清掃を施して納車。症状は改善されたんですが、どうやらこれら以外にも違う部分が故障し始めていたのです。そこまで気がついていなかったので、再整備となりました。
症状としては、ごくたまに低速で走行中、ブレーキング時に軽いノッキングのような失火のような症状が起こり、その症状が起こった瞬間はインテークマニホールドの負圧がなくなるのか、ブレーキブースターが全く効かなくなります。
つまりブレーキが効かなくなってしまうわけです。思い切り踏めば効くんですが、ブレーキ倍力装置が働かなくなってしまう。
とりあえず、さらに深部まで清掃を施してみることにしました。
ここから先は物理的な故障が発見できるまではクレーム整備です。
まずはスロットルボディとISCの通路をできる限り清掃してみる。
スロットルボディを外したら、インテークマニホールドにオイルが溜まっていました。相変わらず悲惨な状態です。徹底的に綺麗にすることにしました。
ISCも分解すれば通路の清掃は可能な構造でした。
こういったパッキン類は部品代が安いので助かります。
スロットルを綺麗に清掃。
この故障の原因が、各部通路のつまりによるストールというのをまずは払拭させねばなりません。
ISCの通路もピカピカにしました。ロータリーの部分に引っかかりは全くなし。機能的には何の問題もなさそうです。
黒いソレノイドバルブでロータリーのシャフトを回して通路を開けたり閉じたりする構造です。
ガスケットは2枚。
エンジンにドッキングします。これで症状が治るのか治らないのかがポイントです。
結果、症状が治らなかったんです。どうやら僕が考えていた故障とは別物の故障のようです。ですが、この時点である程度の仮説を立てることができ、原因がわかりました。
それはこれです。
DVVTのソレノイドバルブ、もしくはDVVTユニットの不良。
症状を再現して、冷静に考えると、エンジンストールする際にノッキングを起こすんです。そしてブレーキの負圧が足りなくなり、ブースターが働かなくなりブレーキが効かなくなる。
この可変バルブ機能というのが行っている制御は主に2つ。
エンジンスタート時と高い負荷時にバルブタイミングを遅角に制御しています。
そして、中間域ではバルブタイミングを進角させて、バルブのオーバーラップを多めに取っている。
つまり、エンストが起ころうとしている時エンジンに何が起こっているか?
遅角へ制御されないといけないバルブタイミングが進角のまま固定されているということでした。エンジンが止まろうとしているのにバルブタイミングはオーバーラップのままなので、負圧が発生しなくて正圧に近くなっている。その状態だとインテークマニホールドに負圧が発生できないのでブレーキブースターが働かなくなってしまう。
これが僕が結論付けた答えなんですが、では、DVVTのソレノイドバルブとDVVTユニットのどちらが壊れているのか?これを診断するのはそんなに難しくありません。
ソレノイドバルブにつながるカプラーを外した状態で試してみればいい。これでも症状が治らないようだったらDVVTユニットが怪しい。
ソレノイドバルブは働かない時は遅角のままです。つまり、カプラーを抜いていてもさほどエンジンには影響がない制御で固定されているわけです。
試してみた結果、症状は完全に治りました。ソレノイドバルブを再度外してプランジャーの動きをマイナスドライバーで押して確認したら、一部引っかかるところがありました。
やはりオイル管理が不十分でスラッジなどが抵抗になっているのでしょう。
エンストを起こしている時はちょうどオーバーラップさせる油路で切り替わって、そのまま固着していました。それを、マイナスドライバーで押して最初の位置に戻してあげれば正常に戻ります。
逆に、マイナスドライバーで油路をオーバーラップさせる場所に動かして固着させたままだと最初からエンジンがノッキングを起こして不調です。当然ブレーキもききませんでした。
今回の件で惑わされたのは
1、オイル管理が著しく悪くて、プラグホールへオイルが洪水のように溢れて実際にダイレクトイグニッションが失火していたこと。
2、各バキュームやブローバイホースが物理的に詰まっていたということ。
こういった物理的なエンジンの不調が発生している裏で、静かにバルブタイミングも狂わされていた。ここで惑わされてしまいました。
オーナーに事の経緯を伝えて、ソレノイドバルブを良品にクレームで交換して作業は終了となりました。
OBD2の診断機でデーターモードを詳しくモニタリングできる年代だったらここまで惑わされなかったんですけどね。ある程度勘を働かせないといけない車で、いい経験になりました。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。