うんざりしてしまうほどの確率で遭遇します。ダイハツのKFエンジン、オイルパンのドレンネジ山が壊れている車。ちょっとここらでもう一度振り返ってみます。
現在ダイハツ車に搭載されているエンジン、KFエンジン。オールアルミエンジンとなって、EFエンジンから10年以上経過してきたかな?
KFエンジンになってからというもの、オイルパンがアルミ製になりました。今までのEFエンジンと同じ感覚でオイル交換をしてドレンボルトを締め付けると、ネジ山が舐めやすい素材です。
初期型のKFエンジンに使われているドレンボルトは短かいタイプが使われていました。
中期ごろになると、ドレンボルトは長いタイプに交換されました。初期型のKFエンジンで短いタイプのドレンボルトを使ってる車は、オイルパンのネジ山が舐めたとしても、ネジが奥まで切ってあります。
中期以降に採用されている長いドレンボルトに交換すれば、とりあえず締め付けることが可能。
このように奥のほうはネジ山が残ってるのがわかります。中期以降のネジは長いので、奥の生きているネジ山を使って締め付けることができるわけです。
これが最初のリカバリー作戦その1。
中期以降に使われているドレンボルト。長さが違います。
ネジには締め付けるときの基準となるトルクが指定されています。参考までにKFエンジンのドレンボルト締め付けトルクはいくつか調べてみました。
キャストの整備書に記載されているデータです。29.5±5.9N・m (301±60kgf・cm)。
一番新しい新型タントの整備書も見てみましたが、ドレンボルトの締め付けトルクが見当たらなかったです。キャストの数値は最初のほうのモデルのデータです。もしかしたら年式で若干トルクが変わってるかもしれませんが、大きくは変わってないと思います。
では、この規定トルクをどう思うか?
実は規定トルクを守って締め付けてきた車もネジ山が舐めてしまったことがあります。これは僕が知ってる限りの情報です。知り合いの整備士に規定トルクを遵守する人がいるんですけど、KFのエンジンオイル交換でネジ山が損傷した。
何のための規定トルクだよってぼやいていました。
それでは、規定トルクで締め付けているにもかかわらず、オイルパンのネジ山がだめになってしまった・・。これは何故か?
考えられる原因は何か?
・トルクレンチの数値が壊れている(校正をしていない)
・ネジ山にゴミが噛みこんだ状態で締め付けてしまっている
単純に考えればこの2点が有力です。トルクレンチ、必ずストライクゾーンのトルクを示してくれるかというとそうではないのがあります。いわゆるズレというやつ。
高性能なゲージなどはちゃんと数値が適正な値を示すか校正作業をします。特にアナログのトルクレンチですね。デジタルのほうが正確だと思う。
実は規定トルクで締めてるにもかかわらず、強い力で締めていたということですね。あとはゴミが噛みこんで物理的にネジ山をだめにしてるケース。
あとは残念ながらの製品不良だって考えられます。
それではどうすれば、KFエンジンに限らずアルミ製オイルパンのネジ山をだめにしなくて済むのか?
僕は幾度となくKFエンジンやK6Aのオイル交換をしてきましたが、ネジ山を損傷したことはありません。ただオイル交換時はかなり気を使ってることがあります。
・外したドレンボルトのネジ部をパーツクリーナーできれいにすること
・オイルパンのネジ山部もパーツクリーナーできれいにすること
・トルクレンチは使わないで手ルクで締めている
大体の整備士もやってると思います。まずはネジ山部をパーツクリーナーできれいに清掃すること。これはドレンボルトとオイルパン側両方です。オイルパン側はオイルパンの内部にパーツクリーナーがあまり入らないようにきれいにすること。
そしてトルクレンチは使わないで手で締めています。これには根拠というか、実験をしました。僕が自分の感覚で締め付けたあとに、トルクレンチを使って規定トルクで締め付けてみました。
どうなったか?
まだ締まりました。つまり、規定トルクより若干弱めに締め付けていたということです。あまり緩くしめていると、走行中に緩んでしまうことも考えられます。ですが今まで緩んだことは一度もありません。
スズキのアルミエンジンも似たようなサイズのドレンボルトを使っていますが、圧倒的に駄目になりやすいのはダイハツのKFですね。
手の感覚じゃやっぱり怖いという人は、規定トルクの下限値で締めることをお勧めします。キャストで表示しているトルクだと29.5±5.9N・mなので、23.6N・mということになりますね。逆にプラス5.9N・mは止めたほうがいいと思います。本当に。
もしダイハツ車に乗っていて、DIYでオイル交換をする人は気を付けてください。舐めてしまったらタップボルトを使ってリカバリーすることもできます。
タップボルトはドレンボルトよりほんの少し大きいサイズのボルトで、ネジ山を形成しながら、さらにその後はドレンボルトとして使うことができるネジです。
一回舐めてしまったネジであっても、とりあえずタップボルトでトルクをかけることができます。
これはいざという時のために持っておくことをお勧めします。
ドレンボルトが舐めた瞬間って、外す時です。外す時にぬるっとした感覚で、アルミオイルパンのネジ山ごと外れてきます。その前に締め付けた時駄目になってるのですが、外してしまうと、純正のボルトでは締め付けられなくなってしまいます。
もし、今後の作業に不安を持っている人はオイルチェンジャーなどで上抜きするのもいいかもしれません。
僕はS331Gに乗っていますが、このオイルチェンジャーで上抜きしたあとにドレンボルトを外してみたら一滴もオイルが出てきませんでした。
つまりS331Gでは、上抜きのほうがオイルがより多く抜けます。だったらいろんなリスクを冒してまでドレンボルトを外す必要はありませんから。
他のKFエンジン搭載車では試したことがないのでわかりませんが、アトレーワゴンは上抜きのほうが抜けました。
ドレンボルトが舐めてしまうと下手したらその場で走行ができなくなるので気を付けてください。規定トルクも不安が残るエンジンです。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。