イモビライザー搭載車のエンスタ取り付けのトラブルについて

僕が１５年くらい整備士をやっている中でわずか２例しかなかったけれど、いずれも苦戦を強いられたトラブルがあったのでご紹介。

トラブルはエンジンがかからないというものなんです。エンジンがかからないわけですが、セルモーターは元気よく回っています。クランキングには問題がないんです。

だけど、エンジンがかからない。これがたまーに起こる。２例ともダイアグコードは何も入っていません。

１台はトヨタ車。もう１台はホンダ車でした。それぞれ若干症状が違ったけれど、先にトヨタ車で経験していたのでホンダ車でその答えに結びつくことができました。

トヨタ車でエンジンがかからなかったというケースは、エンジンスターターが取り付いていました。そのエンジンスターターでエンジンがかからないという相談を受けたんです。定期点検で入庫した車のお客様ご用命事項でした。

一通り定期点検を終わらせたあと、ご用命のエンスタでエンジンがかからない。というところに着手。まずは作動確認から。

エンジンスターターのリモコンを操作して、エンジンをかけようとする。セルモーターはきちんと回ってクランキングするが、全く初爆がないままクランキングの時間が終わる。このエンジンスターターは当社で取り付けたものではなかったんですが、なぜ急にエンジンがかからなくなってしまったのか？

エンジンを始動するための三原則

「良い圧縮」「良い燃料」「良い火花」

これをまずは確認することに。通常の鍵でエンジンをかけるとかかるため、圧縮は問題なしと判断。問題なく走行もできるし特にパワー不足は感じられない。ひとまず圧縮圧力をはかるまでもなく続いて良い火花の点検。

ダイレクトイグニッションを外してそれぞれにダミープラグをつける。アースさせた上でエンスタにてクランキング。すると・・・全く火花が飛んでいない。

エンジンスターターでクランキングすると驚くべきことに火花が飛ばないんです。これは本体がおかしいのか？それともハーネスに問題があるのか？はたまたイモビ系統の不具合か？探っていったら電源ハーネスの不良だったんです。

エンジンスターターってイグニッションスイッチから分岐ハーネスをかませて、ユニットに接続します。このハーネスがなんらかの不具合を起こしていた。ハーネスを交換したら症状は改善できたけど、本体にもなんらかのダメージがある可能性がある旨を伝えて納車しました。

これがトヨタ車でのケース。続いてはまったのがホンダ車のケース。

こちらはたまにエンジンがかからなくなるという症状。困ったことに、症状が確認できた時って、街中でエンコしてる時でした。とりあえず自走不可と判断してレッカーに乗せて工場へ持ち帰りました。

が、そのあとスムーズにエンジンがかかってしまった。再発もできないまま経過観察をしていました。エンジンがかからなかったとき、セルモーターは回っていたんです。走行距離が１３万キロオーバーだったので、燃料ポンプに不具合が出始めていたのか？などと想像を膨らませては見たものの、その後再現ができないままオーナーと協議した結果一度お返しすることに。

そして半年くらいして、またエンジンがかからなくなったというのでレッカーで出動しました。工場へ持ってきて、調べていきました。

イグニッションONで燃料ポンプが動いている音が確認取れたので、一応ポンプは動いている模様。ここで、点火火花が飛んでいるのかをチェックしたら、火花が飛んでいなかった。

４気筒全てに火花が飛んでいなかった。初爆も全くなし。この時点でなんとなく昔遭遇したトヨタ車のことを思い出したんです。イモビライザが機能しなくてエンジンがかからない場合、初爆って全く起きません。

よく鍵を無くしたから作ってくれという依頼があるんですが、イモビ搭載車の場合、登録しないとエンジンがかからない。ドアの開閉やイグニッションON、さらにはセルモーターまで回せるけれど、全く初爆しないんです。

気になって、イグニッションスイッチ付近を分解していくと・・。エンジンスターターのハーネスがありました。もしや・・。と思って分岐ハーネスを外して純正配線に戻したらエンジンが一発でかかった。

原因はこれか・・。イモビライザが搭載されている車でエンジンスターターをつけると、まれに劣化等でイモビ機能に不具合がでることがある。これで２回目の遭遇となりましたが、覚えておくとちょっと役に立つかもしれない豆知識です。

今のエンスタは制御が複雑だから、故障したらこんなところにも弊害が生まれてくるわけですね。文明の利器は諸刃の剣にもなりかねん。

あ、僕の車にもエンスタついてますけど（笑）便利ですよね。やっぱり。猫バンバンできないですけど。