冬になると非常に多くなる修理依頼。
「ヒーターが効かない」
夏のエアコン修理と全く同じで、車に興味がない人でも体感的にくる故障って我慢ができないもの。
冬にヒーターが効かないと、室内が寒くて嫌でしょう?実は、ヒーターが効かなかったのはずっと前かもしれない。たまたま冬にヒーターを使おうと思ったら故障している。
実は夏場から効かなかったのに気がつかなかったということも多いです。
車のヒーターの原理をまず簡単に理解しましょう。これも幾度となく書いてきたけど簡単に説明します。
まず車のエンジンってガソリンを燃やして中で爆発させています。当然熱を持ちます。この熱をうまくコントロールしないとオーバーヒートを起こしてしまう。
昔の車やバイクなどは空冷といって、走行風をエンジンに当てて熱を逃していた。ただ空冷エンジンだと夏場のアイドリング時などはどんどんと熱が蓄積されてしまう。
これではオーバーヒートしてしまうということで、車は水冷エンジンになりました。水冷エンジンはエンジンの中に冷却水を入れるウォータージャケットという通路を設けてあります。
エンジンのウォーターポンプで冷却水を絶えず循環させて、エンジンの熱を一定に維持するように制御している。
エンジン内部を通って熱くなったクーラントは、ラジエターによって再び温度を下げられます。温度が下がったクーラントをまたエンジンへ戻して熱を下げている。
信号待ちなどはラジエターに取り付けてある電動ファンモーターが回って、車が止まっていても冷却水の熱を放熱させています。
きめ細かな温度管理ができたからこそ、今のエンジンは燃費も良くなり排気ガスもクリーンになりました。
この冷却システムから、室内へクーラントを通してヒーターとして使っています。エンジンの熱で熱くなったクーラントを室内へ導いて、ヒーターコアからブロアファンを使って室内へ暖房の風を送る。
これが車のヒーターのシステムです。
オートエアコンと手動で切り替えるタイプの空調を車種によって搭載していますが、ここまでの流れは同じです。
あとはヒーターコアまで届いているクーラントの熱を、オートエアコンが自動で温度調整をしながら送風するか、人間の手でマニュアルで送風しているかのどちらかになります。
ヒーターが効かない原因としてナンバー1にあげられるのがサーモスタットの不良です。
サーモスタットはエンジンをより早く効率的に使うために取り付いている部品でもあります。
エンジンって、冷えすぎていたら燃料を多く噴射しないとだめなんです。それだと燃費が悪くなりますよね。なので、サーモスタットという弁を冷却ラインに設けています。
エンジンが冷えているときは、サーモスタットが閉じていて早くエンジンが温まるようにしています。冷却水の温度が一定以上まで上がったらサーモスタットの弁が開いて、ラジエターなどへ循環させる。
完全暖機を早くにするための弁というわけです。このサーモスタットが経年劣化で開きっぱなしになってしまう故障が一番多い。
見分け方はちょっとコツが必要。昔みたいに水温計がアナログタイプなら、わかりやすい。走行中に水温計がぐんぐんと下がるようならサーモスタットが開きっぱなしになっている。今の車みたいに水温計が付いていない場合はどうするか?
これは体感的に感じ取ってください。アイドリング時はヒーターがきちんと聞くのに、走り出すとヒーターが効かなくなる。こういう場合サーモスタットが開きっぱなしになっています。
サーモスタットはどのくらいで交換すべきか?
これは10年10万キロを経過したら交換するのがお勧めです。今の車なら15年くらいはもつことが多いですけどね。
ただサーモスタットが弱い車もあります。スズキのエブリィなどはDA64Wはサーモスタットが弱かったみたいで、5万キロ弱で何台か交換した。
10年10万キロが早いなぁと思うなら、スーパークーラントの寿命がきた時点でクーラントと一緒に交換するというのがベストかな。
いずれにしろ長いカーライフでも1回か2回くらいしか交換しない部品です。部品代も2000円程度で買えるので、ヒーターが効かなくなる前に交換してしまいましょう。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。