ちょっと興味深い事例があったのでご紹介します。それはハンドルロックについて。あまり意識してハンドルロックをかける人は少数派だと思います。
大多数の人は、ハンドルロックの機能は何となく知ってるけど使っていない。たまに車を停めるときにハンドルロックがかかってしまい、解除するのに手間取ってしまった。
僕も含め、ほとんどの人がこんな感じで車をつかってるのではないでしょうか?
車屋さんをやっていると、主にご高齢ドライバーさんから
「ハンドルが動かなくなった!すぐ来てほしい!」
という依頼が舞い込んできます。電話で話をしていると、どうやらハンドルロックがかかっていることがうかがえます。冷静にハンドルロックの解除方法を教えて、実践してもらうわけですが、中にはどうしても解除できない人が残念ながらいるのです。
そんな場合はやむを得ず出張でハンドルロックを解除しに行きます。
ハンドルロックの解除って、車の操作の中で結構難しくてコツがいる動作だと思います。説明書にはどうやって解除方法が書いてあるのか見てました。
僕が今乗ってる車の説明書には、巻末のさくいん欄にハンドルロックの項目は書いてない。ではどこに書いてるのかなーとぺらぺらめくってみたら発見。
運転装置の使い方という項目のアドバイス欄に
キーがLOCKからACCの位置に軽く回らないときは、ハンドルを左右に動かしながらキーを回してください。
このような文章がちょこんと記載されているだけです。ハンドルがロックされるとかそういった記述は一切ありません。つまり、暗黙の了解としてハンドルロックが存在しているようです。
ハンドルロックの解除に苦戦する人もいるので、改めて解除方法を書いてみます。
ハンドルロックがもしかかってしまったらどのように解除するか?
ロックがかかった状態だと鍵が回らなくなります。これはキーシリンダーとステアリングシャフト部でロックをかけていています。キーシリンダーが簡単に回せないようにシャフトのくぼみとシリンダーが連結してしまう仕組みになってます。
ロックを解除するにはどうするか?
コツとしては、キーを回す方向へ少し力を加えておく(強い力を加えると鍵が曲がりますので注意)→ハンドルを左右どちらかに動かしたり戻したりする。
このような動作をするとガチャンと解除ができます。
#ハンドルロック解除出来ない人多い#ハンドルロック pic.twitter.com/GAfSs9VXZS
— チームMHO (@teammho) February 8, 2020
実際にハンドルロックを解除する動画を撮影してツィッターにアップしてみました。
こんな感じでやっています。
動画を見てもらえればわかると思いますが、実はハンドルロックがかかる位置って決まってます。必ずそこの位置でしかロックしないんです。
これはステアリングシャフトのくぼみ位置が決まってるから。
僕が乗っている車は、キーを抜いた状態で左側へ15度も回せばロックがかかっているのがわかります。
その位置を超えていればハンドルを一周近く回したとしてもロックがかかりません。
この特性を理解すると、イヤーなハンドルロックを回避することができます。
もし、あなたがハンドルロックの解除に苦手意識を持っているなら普段から練習しておきましょう。
まず自分の車はどこの位置でハンドルロックがかかるのかを覚えてください。左へ30度回した状態なのか、45度回すまでロックがかからないのか?
これを知っているだけでとても役に立ちます。何故ならば、車のキーを抜く前にハンドルの位置をロックがかかる場所からずらしておけばいいわけです。
僕が乗ってる車だと左側へ15度回すとロックがかかってしまう。つまりハンドルを若干右に切った状態でキーを抜く。すると左側15度の位置まで距離があるので簡単にはハンドルロックがかかりません。
自分が乗ってる車のハンドルロックがどの位置でかかるかを知っておきましょう。そしてその場所を回避してキーを抜いておく。これが普段使いでハンドルロックから回避する方法です。
ハンドルロックって解除するのが大変だからいらないな・・。
そんなこと言わないで!ハンドルロックがかかる意味って何故だかわかりますか?当然ですけど盗難防止ですね。
鍵がない状態でハンドルを動かすとロックがかかる。
もしあなたの車が盗難にあいそうになったら・・。車の盗難は自走で盗まれるパターンと、キャリアカーに載せられてしまうパターンがあります。どちらであってもハンドルロックがかかってしまえばそう簡単に盗難にあいません。
まあそんなことは百も承知で盗難されてしまうのが実情ですけど。時間稼ぎにはなるのです。ハンドルロックって、機械的に解除することも可能です。その為にはキーシリンダー部を物理的に外さないと駄目。
その作業をしている間当然時間がかかるので、目撃されるリスクが上がるわけです。
自分の車は盗難にあってもらいたくない!当たり前のことですけど。盗まれやすい車に乗っていて、高価な車だとターゲットにされやすいです。こういった高価な車種は車を停めるときに必ずハンドルロックをかけることをお勧めします。
ハンドルロックって煙たがれる半面、頼もしい存在でもあるんです。
最後にハンドルロックがらみの事例を2つ紹介。
1つはまさに昨日の出来事です。定年退職はされている60代くらいの女性ドライバーさんから
「車に乗ろうとしたらハンドルが動かない。かれこれ1時間くらいロックを解除しようとしてるけど駄目だからすぐきてほしい!」
という電話がありました。話を聞いていると確かにハンドルロックがかかっている模様です。ただ、本人はハンドルロックの解除法もちゃんと理解しているようなので、すぐに現場に行ってみました。
車の車種名は伏せておきますが、電動パワステ車でした。昨日の外気温はマイナス8度。かなり寒い日でした。
車の状態を確認すると、確かにハンドルがロックされている。
おっと、車にキーが付いていないのでお客さんからキーをもらって解除に入る・・。
しかし、ハンドルを左右に振りながら鍵を回そうとしても・・・何かが変。
ハンドルは回らないけど鍵が回るんです。
???普通ハンドルロックがかかっていると、キーが回りません。でもこの車キーが回る。
え?と思ってそれではとエンジンがかかるのか試してみると普通にかかる。ただしハンドルはロックされたまま。
ええ?どうやらキーシリンダーとステアリングシャフト部が壊れているのか?この場でコラムを分解しに入ろうか!?いろんなことが頭をよぎったけどあることを試してみることに。
それはエンジンがかかった状態で、車庫内を少し前進しながらハンドルに強い力を与えてみるということ。
すると
「ガキン」
という音がして、ハンドルの固着が解除できました。
このことから考えられるのは、この車はハンドルロックがかかっていたように思えたけどハンドルロックではなかったということ。
考えられる原因はステアリングのシャフトかモーター部が固着してしまっていたことが原因であった。
その原因は2つあります。この車、昨日の夜から外へ止められていました。外気温がマイナス10度を超えた中長時間にわたり止まっていたため、凍り付いていた。
もう一つ、この車実は台風19号で若干の水没をしていた。電動パワステのモーターが車両外側の低い位置にあるんです。水没した時、電動パワステモーターもおそらく水につかってただろうと。
つまり、電動パワステ内がさび付いて固着してしまっていたか、リンク系統が凍り付いていたのかのどちらかです。おそらくは前者だと思います。リンクが凍り付いたなら1時間も頑張ってればさすがに凍ったシャフトは動くようになるだろうと。
ハンドルロックがかかっているかと思いきや、実は電動パワステの不具合だったというパターンです。
もう一つ似た事例を経験したことがあります。昔カプチーノに乗っていた時の事。しばらく放置されていたカプチーノを久しぶりに動かそうとしたら、エンジンキーは回るけどハンドルがまったく回らなかった。
なんとステアリング系統が固着してたんです。思い切り力を加えてハンドルを回したらなんとか固着が外れました。
車は使わないとハンドルも固まってしまうといういい経験になりました。
ハンドルロックは急いでいるときはめちゃくちゃ焦ります。焦らない為にも暇なときにあえてロックをして解除する練習などをしておけば、大丈夫です。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。