ガソリンスタンドの「不安あおる」整備トラブル相談急増について考えてみた

ヤフーニュースでこのような記事を取り上げていました。

元は毎日新聞の記事なんですが、ガソリンスタンドにて「不安あおる」整備トラブル相談が急増しているという。

今回はこの記事を掘り下げて見たいと思います。若干ツィッターでも触れました。

ガソリンスタンドの売り上げは油外製品が多い

僕も整備工場で働く前はガソリンスタンドで働いていた経緯を持っています。なので、ガソリンスタンド側の言い分というか気持ちもよくわかる。

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今ガソリンスタンドの売り上げってどうなのかというと、純粋にガソリンや軽油、灯油を販売して飯を食っていると思っている人いますかね?

ガソリンスタンドってセルフスタンドでもない限り、純粋にガソリンの販売だけでは成り立たないのが現状です。少しでも売り上げを伸ばすために洗車に力を入れたりそれこそ油外製品を販売して利益を得ています。

今回問題視されているのがこの油外部分。僕がガソリンスタンドで働いていた頃って、ガソリン1リットルあたりの利益が10円ちょっとでした。そこに1日ガソリン3kl売るとします。単純に3万円しか利益が出ません。ここに施設費に人件費がかかってくる。差し引きすれば利益はいくらになりますか?スズメの涙です。

これでは経営が成り立たないということで、スタンドマンはいろんな商品を提案してきます。車ってガソリンがないと走れない。つまり走行距離に応じて必ず固定客が一定の期間中に来店するわけです。

ガソリンを入れている間、多くのフルサービス店ではツーマンセルで営業に出ます。まずは当然窓ガラスをふく。そしてタイヤのエアーチェックを無料で行う。洗車を促してみる。無料点検をすると言ってボンネットを開けてもらう。ボンネットが開いたらチャンス!バッテリーテスターを使ってバッテリーを診断。結果が悪ければ営業。さらには各種オイル類の状態を見て交換を促す。

と一連の動作がこんな感じですね。僕もバイトマン時代はマネージャーに教わってオイル交換をよく売りました。よく交換してくれるのは会社関係ですね。会社関係は自分でお金を払ってオイル交換をするわけではないので、点検の結果悪いと交換させてくれることがほとんどでした。

では毎日新聞の記事で何が問題になっているのか?

交換する理由に対して不安をあおる

記事によると、交換する理由に対して不安をあおるセールスをするという点。そのあとオーナーが馴染みの整備工場で確認をとると、

「まだ交換まで必要ではない」

という判断をされて、国民生活センターに相談すると。このケースが増えていると書かれています。

なぜそこまで不安を煽るのか?これも一部なんだろうけど。

今度は現在整備工場で働いている立場からの視点で書いてみます。

整備工場は、基本的に定期点検・車検などを電話コールしてお客さんと接点を持ちます。今ほとんどの工場がデータベースにて顧客管理をしているので、何年の何月何日に走行距離何キロの時にブレーキパッドを交換した。

といった車の整備記録がデータベース上に残ります。そのデータベースは、年間の走行距離を割り出してくれるので次の入庫までにこの部品は交換しないでももつだろう。という総合的な整備メニューを割り出せる。

不必要な部品まで交換するのは過剰整備にあたります。当然、黄色信号の場合はお客さんにその事実を伝えて選んでもらう。

例えば車検で

「ブレーキパッドが残り4mmをきってます。1年くらいは大丈夫だろうけど次回の車検まではもちません。どうしますか?」

といった感じです。

お客さんは、

「車検まで何もしないから交換しておいて」

「だったら1年後の12ヶ月点検には必ず出すからそのままにしておいて」

「もう廃車にする予定だから最低限にしておいて」

このように選択する自由を持ってもらいます。あくまでも整備ってお客さんの了解を得てからじゃないとやってはいけないもの。

お客さんとの信頼関係を大事にしている工場ほど、そのお客さんにあった整備メニューを考えて伝える。当然キャンペーンなどで何かを売り出したい時はその旨も伝えます。

基本的に整備工場とお客さんの関係ってこんな感じです。

営業力はガソリンスタンドの方が強い

ガソリンスタンドと整備工場。営業力が強いのはどちら?と聞かれると僕はガソリンスタンドだと思っています。

スタンドマンって常にお客さんとの対話をし続けて、営業してきます。対して整備工場は整備士がお客さんと対話する場合もありますが、フロントマンを通して総合的に話を持っていく。お客さんとのやりとりの数で言えばガソリンスタンドの方が多い。

そして各店舗には営業ノルマがあるわけで、必死に販売をしてくるわけです。少々不安を煽るようなことを伝えても数字も欲しい。

僕も一見さん相手だと、ある程度ネガティブな部分も詳しく伝えています。例えばタイヤの状態で、車検は通るけれどヒビが若干はいっている場合など。

もしかしたら走行中のトラブルが発生する可能性もあるって。なぜならば一見さんは車の使い方がよくわからないから。ある程度は車の状態をネガティブ方向に伝えておかないと車検後のクレームに繋がりかねません。

ガソリンスタンドって、整備工場よりも先細りしてくる産業です。ヨーロッパなどはガソリン自動車を作るのをやめるなどと宣言してEVにシフトしてきています。車がEVだらけになったら来店してもらえない。売ろうにも来店型の販売では利益は出ません。

そしてEVはガソリンエンジンに比べて、エンジン関係のメンテナンスがないため、販売できるメンテナンスも限りが出てきてしまう。

押し売りを続けるとお店の評判が下がる

それでは、どのように整備を提案すればいいか?

今はネットの時代です。それこそ不安を煽るような提案は論外です。すぐにネット上で評判が下がってしまいます。

利益を追従するのも当然わかりますが、これから先の営業って基本に立ち返り誠実さを前面に出していかないと後で痛いしっぺ返しをくらいます。

ある一定期間の売り上げを伸ばすといった手法ならいざ知れず、継続的にクレームにつながりかねない提案をしていくのは諸刃の剣。

相手にきちんと選択肢を与えて、納得した上で整備を提供していくようにしないと最終的にはそのお店自体の評判を下げてしまいます。あくまで顧客目線が大事です。

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コメント

  1. nori より:

    いつも楽しく拝見させて頂いてます。

    もう20年ほど前のことですが、とあるGSにて給油したときのこと。
    トイレ行ってる間に何の断りもなく、勝手にボンネット開けられて点検されてました。
    そしてエンジンオイルが汚れてるので、交換を・・・と薦められました。
    この前交換したばかりなんですが、と伝えると慌ててた表情が今でも忘れられません。

    しばらくしてもう一度そのGSを利用したときも水抜き剤やら色々と薦められてきて、それ以来二度と行かなくなりました。

    きっとゴリゴリの押し売り店だったに違いないです。

    そのスタンドは給油時間が異常に長かったのですが、わざと時間がかかるようにしていて、その間に営業するための作戦なのかな?と思ったりしました。

    給油機の給油スピードって変えれたりするんですかね。

  2. MHO より:

    給油機は、僕が働いていたエネオスでは3段階に調節が可能でした。この前出先でフルサービスのスタンドで給油をしたら
    「タイヤが減っていますね〜」と、セールスされました。営業熱心です