ちょっと難解な故障でした。
1月に車検をうけたばかりの車でエンジンがかからなくなってしまった。
という問い合わせがあったので、現地に向かいました。
MHOが整備主任で受け入れ検査をして作業指示書を書きました。
その時に、バッテリーテスターにかけたら
「バッテリー要交換」
という電圧ゾーンに入ってしまったので、お客さんに車検時にバッテリー交換をすすめたのです。
オーナーはあまり使わないから、上がってしまったときでいいと車検時にはいいそのまま納車となった車両。
電話ごしのオーナーは、
やはりセルの回りが非常に鈍い
と、おっしゃったのでいよいよ上がってしまったか。
と思い適合するバッテリーを持ってお客さんの家に行きました。
現場について、一応セルモーターの回りを点検
ぐぅうぐぅうぐぅうぐぅう・・
やはりバッテリーが弱いようだ。早速交換に取り掛かった。
バッテリー交換はすぐに終わり、オーナーの前でエンジンをかけようとセルをまわすと
きゅるきゅるきゅるきゅるぐぅうぐぅうぐぅうぐぅう・・・
セルを回しても最初は軽快に回ったもののすぐに回転が重くなりました。
エンジンはかかりませんでした。
トッポは三菱の3G83という3気筒エンジンを積んだインジェクション。
車検をやってから1ヶ月しかたっていない。
どうしてかからないのか?
お客さんに、
「バッテリーは上がっていたけどエンジンがかからない原因は他にもありそうです。」
といったら
「車検やったばかりなのになぁ・・」
と、皮肉を言われてしまった(泣)
当然ですね。とりあえず2月の一番の寒波が襲った日。
エンジンをかかるようにするので、家の中で待っていてください。と告げて、原因追求を始めた。
もう一度セルを回すと
ぐぅうぐぅうぐぅうぐぅう
新品のバッテリーのくせに回転がやや重く感じる。どうしてだろう?
しかもまったく初爆が起こらない。
インジェクションなのにプラグがかぶってしまったのか?それともクランク角センサーでも
こわれちゃったのか?車検やったばっかりでタイミングが悪いなぁ・・・
と思いつつも、プラグを3気筒外すことにした。
トッポのプラグはダイレクトイグニッション。
イグニッションコイルの上にはエアインテークチャンバーが載っているので、
エアクリーナーごと取り外す。
作業しているとめっちゃ寒くて死にそうだった。
プラグを外すとやはり燃料でかぶっていた。
プラグを自分が乗ってきた車のヒーターを全開にして乾かしている間、
プラグを外した状態でプラグホールにウエスをかぶせて少し
エンジンを空回しして、燃焼室内の混合気を追い出すことにした。
きゅるるるるるるるるるるるるるるる
ウエスをかぶせたのは、混合気に何かの拍子に点火しないように。
とりあえず少しはプラグが乾いたので装着。
アクセルを全開にし、エアクリーナーをつけていない状態で
セルを回した。正常であればコレでかかってくれるはず・・・
セルを回すと
キュルキュルボボボボキュルキュルグゥウグゥウ
最初勢い良くセルが回り、少しの初爆を起こしてまたセルモーターの回転が重くなって
エンジンはかからなかった。しかし初爆はあるということは点火火花は起こっている。
くっそープラグの乾かし方が足りなかったかー。
くやしいなー。
もう一度プラグを外すと、また燃料でぐっしょりぬれていた。
再びプラグをよぉく乾かしてチャレンジ!
キュルキュルボボボボキュルキュルグゥウグゥウ・・・
同じように初めはセルが良く回り、初爆してまたセルの回転が重くなりエンジンがかからない。
うーむコレは一体どういうことか。
プラグの中もぬれちゃっているから新品じゃないと駄目か・・・
トッポに搭載されているプラグは
ZFR5F-11
という突き出しタイプのプラグを使っています。
持ち合わせのプラグは
BKR5E-11
普通のグリーンプラグ。
3G83エンジンは、ダイレクトイグニッションになる前は
BKR5E-11を使っていたのを思い出し、突き出しじゃないからピストンにあたることもないし
試してみようと思ってBKR5E-11をつけて試してみた
キュルキュルボボボボキュルキュルグゥウグゥウ・・・
やっぱり駄目。これはもはや故障以外の何物でもなく、
お客さんにことの経緯を伝えて今日一日車を預からせてもらうことに。
会社に戻って積載車に乗り換えてお客さんの家へ。
ギヤをニュートラルにして車をお客さんの家から道路へ押し出した。
お客さんの家は少し下り坂になっていて、頭が道路の方を向いていて
前が下がっている状態なので、一人でも積載の前に運べた。
会社に戻って、プラグを外して
トッポの正規の
ZFR5E-11をつけて回してみたが結果は同じだった。
タイミングライトを装着して点火タイミングを点検したけど異常なし。
ここで整理することにした
プラグをつけかえてセルを回すと
最初は回転が良く初爆がある
後半はセルの回りが遅くなって燃料がプラグにかぶる
一番の原因はプラグに燃料がかぶってしまうことによる点火不良
点火タイミングは良し
点火火花も良し
燃料も来ている
当然圧縮も抜けていません。
インジェクションのくせにかぶってしまう
ここで一つひらめいた。
プラグを付け替えてセルを回すと
最初は良く回るが、次第に回りが鈍くなる
つまりエンジンに抵抗が発生しているということだ!
その抵抗は一体なんなのか?
燃料に上手く点火しない原因は!?
同僚にアクセル全開でセルを回してもらって観察すると答えが分かった。
吸気がされていない
しかし吸気系に異常はなし。
つまり、
排気されていない
ということだ
車をリフトアップして、フロントパイプとマフラーの結合を外して
もう一度エンジンをかけた
キュルキュルキュルボボボボボボボボボボボー
エンジンがかかった。
答えは何かというと、
マフラーが凍っていた
つまりマフラーが凍って排気がふんづまり状態にあるので
吸入負圧が出なく、プラグがかぶってしまったのである。
これは初めての経験だった。
キャブの場合は吸い込まないから燃料が来ないはずだけど
インジェクションの場合はインジェクターが噴射してしまうわけ。
よくよく見ると車検から10kmも乗っていないような状態。
しかもお客さんの駐車場は前が下がって止めていた坂道
燃焼において発生した水がマフラーの中にたまり、
暫く乗らなったせいで完全に凍ってしまっていたのだ。
マフラーを温めて、車両に装着してアクセルを吹かすと
むかーしのヤンキー兄ちゃんが、自分の車のマフラーに水を入れて大噴射させて楽しんでるかの
如く激しく水を噴出すトッポのマフラー(笑)
いやー今回もちょっと悩ましてくれたトラブルでありました。
お客さんにはきちんと説明して、バッテリー代金とプラグ代金のみいただくことに。
加えて前下がりの駐車をやめることと、車から降りる時は少し空ぶかししてから
降りてくれと頼んだのです。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。