いすづのエルフです。クラッチをOHしてきました。

エルフ。型式はSKG-NMR85ANです。3tくらいの車です。

ふそうのキャンターは同クラスのクラッチOHは何度か経験してきましたが、エルフは初めてです。ワクワクしながら作業開始。

型式はちょっと違いますが、同じエルフのクラッチOH動画です。

クラッチをOHする時は、バッテリーのマイナスを外します。これはセルモーターの脱着が必要になることがほとんどで、ショートを防ぐ為。

いろいろなクレームを経験してきた自分、まずは車両の状態をチェック。ラジオのチャンネルや時計は現在どのようになってるか?バックカメラはないけど、パワーウインドウのオートがある。

全てを修理前と同じ状態に復元するため、メモしておきます。

この車体はヒルスタートスイッチが付いている。そしてDPDも付いている模様。DPDが付いているということは、マフラーがでかいだろう。

リフトアップする前に上から外せるものは全て外しておけ!これは10年以上前の工場長から叩き込まれたこと。リフトの上下は最小限で行うのがモットーです。

この手の車はダンプカーだと背中が空くので非常に作業がやりやすいです。ですが僕がOHするのはいわゆるコンテナ車。通常のトラックよりも作業スペースが取りにくい。

初見で感じたことは、キャンターよりもエンジンがせりあがってるイメージ。ミッションへのアクセスがしにくい。

上から見えるミッションのベルハウジングを締め付けている14mmのボルトを外しておきます。確か3本。それとセルモーターを締め付けている19mmも外す。セルモーターのネジにはハーネスを固定している14mmのナットもありました。

この辺りを全て外してリフトアップします。

縦置きミッションですが、軽自動車などに比べると比べ物にならないほどでかいミッション。

そしてマフラーでかい・・。一応作業をする前にファイネスでマニュアルを一読しておきましたが、マフラーの脱着は書いてなかったので、外さなくてもミッションが降りる?のかなこれ・・・

プロペラシャフトを外す前に、当然のことながらフランジとマーキング。これをしておかないと、バランスが崩れてしまいます。

マーキングをしたらプロペラシャフトを外しにかかります。17mmです。

第一ポイントはここ。センターブレーキです。大型車はミッションの後ろにセンターブレーキというものがついています。これはいわゆるサイドブレーキです。

乗用車のサイドブレーキってリヤをワイヤーやらモーターできかせています。

大型車になると、リヤまでワイヤーを伸ばすのもよくないのかミッション後方にドラムブレーキをつけてます。ここからワイヤーを介してサイドブレーキレバーに繋がっている。

つまりサイドブレーキを引くと後輪じゃなくて、ミッションをロックする仕組みです。センターブレーキといいます。

多くの車はクラッチをOHするときにこのセンターブレーキをバラさないといけない。少なくともキャンターはそうでした。

しかーしこのエルフはえらい!ワイヤーをブレーキから切り離せるのです。

この部分。ワイヤーが二分割になっていて切り離せる。

これでセンターブレーキをバラさなくてもミッションを下ろすことができる。ワイヤー分割式じゃない場合、サイドブレーキのレバーとミッションが繋がってるため、センターブレーキを分解してブレーキシューからワイヤーを外さないといけないのです。

この工程が手間なのです。エルフえらい。

シフトワイヤーを外します。2本ですね。

ピンで繋がってるだけ。この辺りは軽トラックとほとんど同じ。

そして各種カプラーを外していきます。バックランプスイッチとかです。2〜3個くらいでした。そんなに多くありません。

見えにくいですが、セルモーターを外しにかかっています。セルモーターでかい。

セルモーターも外した状態です。

ここでじーっと周りを観察すると、やはりマフラーが邪魔になる。フロントパイプのみネジをフリーにしておくことにする。ガスケットを追加で注文。絶対にミッションを下げた時に干渉する位置にあると思う。

ミッションジャッキを正確にセット。降ろした瞬間にミッションがずれるとドッキングする時に大変になります。

僕はでかいミッションを下ろす時はミッションジャッキとミッションを鎖でぐるぐる巻きにします。なぜならば、僕は会社で労働衛生の役をやっているからです。労災ゼロは当たり前です。作業中はちゃんと帽子をかぶれ!安全靴をはけ!先輩自ら後輩にその姿を見せる(笑)

しかしいつも事務所にいる先輩がトラックのクラッチをOHする姿が珍しいらしく、ところどころでギャラリーに来られる始末・・。

ふふふ。見えたぞクラッチ。それにしてもでかいなぁ。

さあ感傷に浸ってる場合じゃない。

このエルフのクラッチOH、作業指数は4.7H。この時間内に終わらせられなければいっぱしの整備士ではありません。まだ2時間もたってないからペース的には余裕です。

クラッチです。走行7万キロ程度。確かに減っている。乗った感じ滑った感はないんですが、オーバーホールしてくれという先方のオーダーなので。

プロはすごいなぁ。確かにディスク減っとります。先にパイロットベアリングを交換。特にガタつきやゴロゴロ感はありませんでした。

困ったことにクラッチセンター出しのツールがない。あるんですけどサイズがない。

しょうがないからテープでクルクル巻き。プライベーターのOHのようです。

自作クラッチセンター出しツールを装着してみました。

クラッチカバーは当然対角線状に何回かに分けて規定トルクで締め付ける。

規定トルクは40N・mです。

カバーを取り付けたら針金を引っこ抜きます。でかいクラッチになるとこういう安全ピンのような部品が付いてることがあります。

カバーのバネを針金で抑えておいて、締め付け後に解放するという感じです。

続いてレリーズベアリングを交換。

さらにはレリーズフォークの支点になっているピボットも交換。22mm。

組み付けOK。

それではドッキングします。

センターはバッチリ決まっていました。しかしやはりヘビー級なので、ミッションを押してもなかなか前にすすまない。規定の位置にドッキングさせるのに時間がかかった。

邪魔で外したスポンジくんなどを組み付けて復元しておきます。

あとは元に戻して終わりです。ちなみにサイドブレーキワイヤーの固定プレートの取り付け方が間違えて、終わった後にサイドブレーキを引っ張るとスカスカでした。

センターブレーキを分解してないのになんでこんなにスカスカになるのだ?と思ったら、プレートの取り付け位置が若干ずれていました。

規定の位置に戻してOK。

昔に比べて年をとると慎重には事欠かなくなります。テスト走行を重ねてその後に、再度ネジの締め付けを当たりました。

そして完成をしてもらって洗車して終了!4.5時間程かかりました。ギリギリセーフ。

多分後輩にやらせれば3時間くらいで終わるでしょう。

体力は衰えてきたけど、楽しかった。やはり重整備は楽しいね。

参考までにクラッチの大きさを比較してみます。左がエルフ。右が軽自動車の。

こんなに大きさが違う!さすがはエルフ!

いすづに電話すると、保留音がエルフのCMの歌が流れるんです。はーしーれはしれーいすづーのトラック〜って。

あの歌、好きです(笑)

エルフのクラッチOHでした。やはりフロントパイプはネジを外して動かせるようにしておかないとミッションにぶつかりました。フロントパイプのガスケットは用意しておきましょう。

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