ここのところ、毎日のように報道されているビッグモーターの不正行為。
全ての店舗がそうではないと思いますが、一体どこにどのような問題があったのか?
最初にクローズアップされたのは、指定工場の取り消しでした。
これは、車検の完成検査においてスピードメーター検査などを実際に行っていなかった。という問題です。
四輪スピードテスタを備えている店舗なら起こり得なかったと思います。多くの整備工場が車検でスピードメーター検査をする時って、駆動輪のみでローラーを回すタイプです。
うちも検査をするときは、FRやFFなどの2WDなら、駆動輪のみをローラーに落として回転させます。そしてスピードメーターの誤差を読み取る。
4WDになると、純粋な駆動輪以外のタイヤにも補助ローラーを載せないと車が飛び出してしまいます。4WDなので全部のタイヤが回ってしまうからです。
しかし一部外国車などは、駆動輪じゃないタイヤにスピードメーターのセンサがついているものがあるのです。
こういう車の場合は実走行させないとスピードメーターの検査ができない。
きちんと構成された車両を並走して、スピードメーターの誤差を読み取ると言った、ちょっと手間な作業になるんです。これを省略していた。
この検査ははっきり言って面倒です。うちの場合、こういう検査をしないといけない車両は月に1台入ってくるかどうかくらいなので、まあしょうがないよねと思いながら検査しています。
主にはバイクですよね。外国のバイクってまさにこういうのが多い。
今問題になっているのは、板金修理についてです。
これは結構複雑なことが起きているようです。
まず、相手がいたり保険を使う板金修理の場合、ある程度の事故までは画像転送などで協定してしまいます。
例えばこういう傷の場合、写真を保険屋さんに転送するだけでどんな事故で、どこが損傷しているかがすぐにわかりますよね?
修理前と修理後の写真を送れば、保険で対応が可能になります。
しかし、こういうのはどうでしょう?
ここまで大きく損傷していると、どこのパネルとどこのフレームまで被害が波及しているか、現車をじっくりみないとわかりません。
そういった場合は、支払い担当になる保険屋さんのアジャスターが現車を確認にきます。
例えばうちの会社の板金部門で45万円の修理見積もりをしたとします。その価格が適正なのかを保険会社のアジャスターが現車を見ながら同じように見積もりして、見積もりが適正かどうかを見極めるのです。
そのため、保険会社のアジャスターさんの多くは板金経験者だったりします。
逆に保険会社の出した見積もりが安すぎたら、自社の板金部門と立ち会ってもらって、ここのフレームもよく見てよ。曲がってるでしょ?フェンダーエプロンも交換しないとだめだよと。
こんな具合で保険会社さんと交渉するわけです。
そして、合意したら修理に入ると。
ビッグモーターが行っていた不正は、保険会社に水増し請求をしていたということです。多分やらなくてもいい部位まで手をつけていたということなんじゃないかなと。
そこに至るには、厳しい売上ノルマがあったようです。板金って、事故の場合は基本的にここまでやった方がもっと綺麗になりますよ!と言って提案は難しいです。
自損事故の場合、右側が壊れていたとして、左側も擦り傷があった。こういうときは、右側と一緒に左側も直すと、トータルで左側を綺麗に直せますよと推進することが可能です。
例えばこの傷を直す車が、反対側の側面も塗装の剥がれなどがある場合、一緒に修理してしまった方が右側単体で修理するより安くできるんです。
どうしてかというと、塗装工程で2回に分けて修理する場合と、1回で修理をして一気に塗ってしまうのでは手間が違います。
こういう板金なら売り上げをのばしやすいです。事故の場合、相手がいて相手の保険会社からお金をもらうと言った場合は余計な修理は当然認めてもらえません。
ビッグモーターの場合はそこを上手に計上していったんでしょう。
ただし、そこには保険会社のS社と密接に繋がりがあったと新聞社では記事が載っていました。
保険修理で不正疑惑が出てくると、当然保険会社はこの会社は危ないなと避けてきます。すると、ビッグモーターで販売する車両の自賠責保険や任意保険を引き受けたくなくなります。
水増し請求される可能性がありますから。それをあえてS社は引き受けて、自賠責などの獲得件数を伸ばしていたと。
これらを考えると、業界全体の黒い部分が見えてきますよね。今回の板金不正ではS社以外の保険会社が損害を受けています。
ただビッグモーターって、買取部門では他の会社よりも高値で買い取ってくれることが多く、その点では評判が良かったところもあったんですけどね。
ここまで問題が大きくなると、会社として信頼を立て直すのってすごく大変だと思います。内部リークで発覚したとしたら問題は上層部にありそうですね。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。