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AT車でも積極的にサイドブレーキを使う重要な理由

今、車って8割程度はAT車になってきています。マニュアルミッションは一部のスポーツカーやスポーツモデル、商業用途の車にしか搭載されなくなってきました。

オートマ限定の免許を保持している人も随分と増えてきたし、それはそれで時代の流れ。

今回はちょっとAT車のサイドブレーキについて考えてみます。

AT車でサイドブレーキを使うかどうか?

例えば、オートマに乗っている人で駐車時にサイドブレーキを使う人ってどの程度いますか?

僕は車の整備工場に就職する前は、駐車時には必ずサイドブレーキを引くようにしていました。工場に就職してサービスカーに乗り込んだ時に気がついたことがあります。

同僚が駐車時にサイドブレーキを使っていないということ。Pレンジに入れて止めてあるだけなんです。このとき

「AT車でサイドブレーキ引かないで止める人がいるんだ・・・」

と、ちょっとした驚きがあったんです。それから15年も整備士をやっているとAT車でサイドブレーキを引く・引かないというのを使い分けるようになってきました。

平坦な道に止める時は、ギヤをパーキングに入れるだけでサイドブレーキは引かないこともあります。当然坂道に車を止める時はサイドブレーキをかける。

理由があって、頻繁に出入りする際サイドブレーキまで引くのが手間と感じるということ。そして整備士になってATの内部構造を勉強したので、Pでも平坦な道ならサイドブレーキは引かなくてもいいかなって思えるようになったこと(坂道をのぞく)

お客さんの家に車を引き取りに行って、預かってみるとやはりサイドブレーキを使う人もいればそうでない人もいることがよーくわかりました。

ではAT車でサイドブレーキって坂道以外引かなくてもいいのか?ということ。

ここから先は僕はAT車でも積極的にサイドブレーキを引くことをオススメする理由をあげてみました。

AT車でサイドブレーキを積極的に引いて欲しい理由

AT車ではPレンジに入れるとミッション内部で機械的にギヤがロックします。マニュアル車でギヤを入れた状態で停止したのと同じような状態になるということ。

平坦な道であれば、車が動くということはほとんど考えられません。それでもAT車でサイドブレーキを積極的に引いて欲しい理由は何か?

  • 使わないとサイドワイヤーの動きが渋くなる
  • 勾配がついた所に止める際、Pレンジだけだとミッションに負担がかかる

この2つになります。1つずつ説明します。

サイドワイヤーの動きが渋くなる

サイドブレーキの多くはワイヤー方式を取っています。サイドブレーキのレバーやペダルから機械的にワイヤーを介してリヤブレーキに繋がっている。

サイドブレーキのレバーやペダルを操作すると、ワイヤーを動かしてリヤブレーキをロックさせる仕組みです。

このサイドワイヤーですが、やはり動かさないでいると渋くなってしまう。山間地などでは動かさないが為にワイヤーが固着してまったく動かなくなることがよくあります。

車検の検査でブレーキのテストがあります。前輪後輪、サイドブレーキをそれぞれの軸重に対してどの程度の割合制動力が出るかというテスト。

サイドブレーキは車の重さに対して20%以上の制動力を確保できないと車検に落ちてしまいます。

ずっと使っていないサイドブレーキはワイヤーが渋くなって動かなくなることがあるんです。少しでも使っていると固着を防げるんですが、たまに車検落ちする車がやっぱり出てくるんですよ。

その為に少しでもサイドブレーキを使ったほうがいいということ。現代の電子制御サイドブレーキになっている車は別ですけどね。

電子制御サイドブレーキはペダルやレバーがスイッチになってるだけで、リヤブレーキにモーターがついている。それをレバーやペダルなどのスイッチを使って動かしているだけなので、ワイヤーをつかってません。

サイドブレーキのワイヤーを動かす・各リンク系統をたまには動かすことできちんと作動するように維持するというのが1つめの理由

傾斜があるところでPレンジで止めるとミッションに負担がかかる

少しでも傾斜があると、車は動きますよね?

実はAT車のPレンジは、ミッションの内部を機械的にロックさせるようになっています。

坂道で車を止める

Pレンジに入れる

若干車が下がってから「カチっ」と音がしてロックする

厳密に言うとこういった流れになります。これが意味するものは何か?

ATのPレンジでロックするところって場所が決まってるわけです。例をあげると360度回転する間に1箇所ロックする場所があるといったイメージ。

車を停車した時、Pレンジにいれたとします。

その場所にはロックの爪がかかる場所がありません。ではどうなるかというと、車が少し下がることによって、ミッションのギヤ内部が回転します。

そしてロックするくぼみまで到達してカチャとロックする。

ではロックしたらどうなるか?

車には坂道で下がる力が働いています。それをミッション内部の小さなギヤでロックさせているだけ。これを解除するには、車の重みがかかってるギヤをシフトレバーで無理やり解除させる。

ここでいうミッションに負担がかかるというのは、ロックさせているギヤ部分です。

たまにお客さんから

「シフトレバーが動きません」

といった電話がかかってくるんです。そういった時必ず聞き返すのが

「それは坂道で止めていますか?」

との問いかけ。9割は坂道でパーキングに入れてロックされているんです。車の重みがミッションのロックギヤにかかっている為相当な力でシフトレバーを動かさないとPレンジから他のギヤにシフトできない。

解除したとしても

「ガキン」

といったかなり大きな音がして、ぶっ壊れたんじゃないかって不安になるほどです。

ミッションの負担もかなりのものになりますし、坂道ではサイドブレーキをきちんと併用するようにしましょう。

坂道でAT車を止める手順

それでは坂道でAT車を止める手順はどうなのか?

これは簡単。順番を覚えればOK。

止めたい場所まで移動してブレーキペダルを踏んで保持

サイドブレーキを強めにかける

Pレンジに入れる

ポイントはブレーキを踏んだ状態のままサイドブレーキで車をロックさせること。その後にPレンジにいれます。

なぜこうするかというと、この動作をすると厳密にいうとミッション内部はロックされていないんです。Pレンジに入れてギヤがロックする位置に動く前にサイドブレーキで車自体を動かないようにする。

坂道でPレンジにいれて、ミッション内部のギヤをロックさせる前にブレーキでロックしておくわけ。もしミッション内部のギヤがロックまで入ったとしても、車にかかる下がる力はブレーキによって緩和されているので、次のシフト操作に力はいらなくなります。

長くなりましたが、AT車でサイドブレーキを積極的に使って欲しい理由の2つめです。

サイドブレーキの戻し忘れには要注意

ここまで説明して、AT車でもサイドブレーキって必要なんだーってわかってもらえたと思うんですが気をつけて欲しいのは

「サイドブレーキの戻し忘れに注意してほしい」

という点。特に車をシェアして乗る場合、一人がサイドブレーキを引く癖があってもう一人がそうでないと、そうでない人はサイドブレーキを戻さないで乗り出す可能性もある。

これは注意するしかないんですが、サイドブレーキを引きっぱなしで走ると当然ブレーキが発熱して最悪車両火災にも発展しかねません。

サイドブレーキの戻し忘れだけには気をつけてください。

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