今や見かけることが少なくなりました、スバルが作ったプレオ。
「ラジエターのランプが付いて、全然加速しなくなった!やっとの思いで駐車場にとめた!」
という、一報を受けて預かりました。
そもそもプレオにラジエターのランプって付いてたかな?
と思い、現場でまずは様子見。
オイルや水回りがちゃんと入ってることを確認して、エンジンを始動させてみました。
エンジンは始動ができて、チェックランプが点灯しています。
しかし明らかに失火しているような状態です。
アクセルを踏み込んでも、吹け上がらず。
エンジンルームをパッとみたときに、プラグコードは交換されているように見えました。この場でパワーバランスをするのもアレでしたので、工場へ持ち帰りました。
診断機をあてて、故障コードを読み取ると、ちょっと意外なものが出てきました。
P1512のISC信号2系回路(LOW)というものです。
ISCバルブです。今までスバルの軽でISCの故障に遭遇したことはなかったので、慎重に診断をしていくことに。
試しに、ISCにつながるカプラーを抜いてみたら、これらのコードが一斉に入力されてきました。
この年代のダイアグは大したパラメータが読み取れないので、必要箇所のみメモをして消去してみたら、また同じP1512のみ出ました。
エンジン不調の症状は、一発死んでいるような失火症状に非常にそっくりです。
気になってパワーバランステストをしましたが、どのシリンダーも正常に機能していることを確認。
ISCを本格的に点検することにしました。
このISCっていう部品は何をしてるのかっていうと、アイドリングの空気量を制御している部品です。
中はモーターのようにコイルが入っていて、各端子間に電気を流すことで、バルブの突き出し量を変化させて、空気通路を広げたり狭めたりします。
整備書のフローに従って診断していきます。
1 ISCバルブの電源電圧点検
2 ISCバルブとECU間のハーネス導通点検
3 ISCバルブとECU間のハーネス絶縁点検
4 ISCバルブの点検
とはいえ、診断のやりにくさがあるので、先に1と4を点検しました。
ISCに繋がるカプラの2番とボディーアース、5番とボディーアースを計測すると、バッテリー電圧がきちんとかかっています。
ではISC本体は・・と調べると、基準値は29Ωに対して、無限大となっています。
まあここまでの結果であれば、ISCが内部で断線をしているね!となります。
が、しかしこのISCっていう部品はスズキなどであるあるなんですけど、断線やらショートすると逆起電力が働いてECUをパンクさせることがあります。
実際問題、診断フローを追っていくと最終的にはECUの交換となります。
ちなみに部品の値段はISCは13200円。ECUは66700円です。
どうですか?外せない診断です。
診断は外せないので、診断フローの2番と3番についても長めの配線を使って診断した結果はシロでした。
つまりISC本体が壊れている。と結論づけられます。
そういえば・・・と部品庫をがさごそあさっていると、超昔に発注したのか同型のISCらしきものがありました。
ラッキーです。これに付け替えればあっという間に結果がわかる。
チェンジニア的な診断ですみません。で、付け替えてみました。結果、症状治らず・・・。
というか、全くアイドリングせず・・・。
え、?・・ISCの故障じゃなかったのか?ただちょっと違ったのが、エンジンチェックランプが点灯しなくなったということです。
故障コードを読むと、何も入ってきません。
どういうことだろう?余計にわからなくなりました。が、自分がちゃんとした段階を踏んで、診断したんだからと再確認してみました。
すると、部品庫に入っていたISCを単体テストすると、こちらも抵抗29Ωじゃないといけないのに対し、無限大・・・。おーいこいつ、こわれとるやないか・・・。誰だ?こんなぶっ壊れたISCを部品庫にあたかもつかっていいよ的な状態で保管しておいたのは・・。
ということで、結果はどうだったのか?
長い前置きになりましたが、整備士ってこういう不確定なことで頭を悩ませながら、診断をしていくのをリアルに描写してみました。
結果、ISCの故障でした。
お客さんにはISCとECUの両方の交換が必要になる可能性もあると伝えておきました。それでも直してくれ!となるのであれば、もちろんISCだけで直れば費用もかからずOKです。
とはいえ、正常なISCじゃないとECUの故障まで完全にシロであると判断するのが難しいため、見積もりは両方を記載。
しかしよくしたもので、新品のECUは製造終了していました。おーい。本当にECUまで壊れてれば直せないじゃないかー。部品屋さんには中古のECUも当たっておいてもらいました。
そうしたら見つかったので、修理は可能だなと。
とにかく13200円のISC交換で直りましたのでよかったです。
それにしてもISCが壊れると、エンジンが失火したのとほぼ同じような症状になるのは初めて経験しましたね。
アイドリングが不安定っていうよりはモロに失火してる?ってそういう状態だったので。また勉強になりました。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。