今どきの車はちゃんと電子制御されているからオーバーヒートなんかしませんよね。と思ってる人は多いと思います。
しかしそれは間違いで、今の車でもオーバーヒートは起きるんです。原因はさまざまですが、多いのは電動ファンの故障。走っている最中はいいんですけど、信号待ちでファンが回らずにクーラントを吹いてしまう。
あとはサーモスタットの不良だったりファンベルト切れなどが多いです。
今回紹介するのはスズキのエリオ。ちょっと珍しい症例でした。
オーバーヒートしたから助けてほしいと言われ、レッカーしてきました。
エンジンをかけようとしたら嫌な音がしていたので、すぐに停車。エンジンをかけると異音が出ています。どうやら何かのベアリングの異音の様でした。
クーラントを見ると、ラジエター内には規定量入っている。それでオーバーヒートしたのは何だろうと思いましたが、エンジンの異音を聞いてからまずは補機ベルトを外してみた。
ウォーターポンプ単体を手で回してみたらかなりガタついていました。
クーラントが漏れていないのが不思議なくらいのガタツキです。ウォーターポンプが不良なのは間違いないので、オーナーにエンジンのダメージはどの程度か不明だけどとりあえずポンプは不良だから変えさせてほしいと連絡。
ポンプのみが不良なら交換で済みます。エンジン本体にダメージが入っていたら、最悪ヘッドを降ろす可能性も伝えて了解をもらいました。
エンジンはタイミングチェーンなので、ウォーターポンプの取り外しはさほど手間ではありません。
プーリーとマウントを外せばポンプ単体になります。
ウォーターポンプの羽が折れている?!
ウォーターポンプの軸を触るとかなりのガタツキです。
そしてポンプを外してみてオーバーヒートの原因がはっきりわかりました。
どうでしょうか?なんとポンプのインペラが数枚なくなっています。
おそらく軸にガタツキが出て、エンジンと接触することで折れてしまったんだと思います。
これではいくらポンプが回転したとしてもクーラントを圧送できません。
国産車でこんなふうになったのは初めて見ました。外車のウォーターポンプはインペラが樹脂製のものを使ってるメーカーがあり、同じようになっているのはみた事があります。
でもこちらはアルミ製ですからね。
新品と比較するとこの通りです。
液状ガスケットをぬって新品のポンプを取り付け。
あとは元に戻すだけ。
心配していたエンジンへの吹き返しは見られなかったので、ウォーターポンプの交換だけで済みました。
もしクーラントのサブタンクに吹き返しがくれば、ヘッドガスケットが飛んでいます。
ちょっと珍しいエリオのオーバーヒートでした。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。