車業界の端っこで働く身として、ここ最近かなり大変だなと感じること。それは高齢者とのやり取りです。
スターレットに乗った老夫婦が急に来店、車検見積もりをとってくれ!そのやり取りが大変だった
この前Twitterで思わぬ反応を頂いたこちらの出来事。まさかの230リツイート超!
このケースと同じくして、最近増えてきて困った高齢ドライバーとのやり取りを書いてみます。
目次
アポなしで来店して、話を聞いてほしいので作業後もずっとお店にいるおじいちゃん
今、自動車整備の業界は、ち密にコントロールされたスケジュールで一日を回しています。
僕も各自動車メーカーが協賛してくれている研修に何度もお邪魔したことがあります。スズキの技術研修だったり、ダイハツの勉強会。スバルの合宿など。
その中で、強く印象に残っているスバルの合宿。研修センターで泊まり込みで朝から晩まで勉強漬けです。整備の技術からCS向上の作法やロープレ。店舗管理のタイムスケジュールなど。
作業時間を法定点検は1時間。車検整備は2時間と設定します。Aさんが11時に来店して、そこから車検スタート!13時にはメカニックは車検整備を大方終わらせないといけない。
その13時半にはBさんが法定点検で来店されるので、メカニックはすぐ次にとりかかる。
こんな感じで一人の整備士の作業フローを時間単位で管理します。
その為、お客様にもご理解をいただいていかないといけません。約束した時間にはきちんと来店していただくこと。ここがズレこむと、スケジュールが破綻しています。
お客さんとの信頼関係を元に、残業代を減らしながら質の高いサービスを提供する。
こんな感じなんです。今の整備業界。
しかし、当社によく来店されるA様80歳を越えて未だに現役で運転しています。。突然アポなしで来店。
A「ルームランプがきえねぇんだけどよぉ」
こんな調子で来店されます。おそらくどこかが半ドアになっているんだろうなとドアを点検するとバックドアが半ドアになっていました。
原因を突き止めて、説明をするとそこから話が長い・・・。話の腰を折るわけにもいかず、お相手せざるを得ない状況になります。
もちろんその間、予約のお客様が来店されて、作業時間がどんどんと減っていくわけです。
このA様、たまに来るくらいならいいんです。でも田舎の工場あるあるで、週に2、3回はやってくるのです。
A「なんか後ろの方から音がするんだけどよぉ」
リヤヒーターがオンになっていただけでした。
A「後ろの座席がもちあがらねぇんだよ」
固定レバーを動かしてないだけでした。
こういう高齢ドライバーの絶対数が増えてきているということが現状です。もちろん高齢者であっても仕事をして、タイムスケジュールで動いてる人も居ます。
でも引退されている人は手持ちぶたさなのか、世間話の相手を探すかの如く来店しては油を売ってくる。
パンクしたからすぐに来て!
車のスペアタイヤがなくなったこともあって、余計なレッカーが増えています。
B「パンクしたの!どうしよう!今すぐ来てもらわないと困るんだけど!」
このBさん、僕が記憶をしているだけで4回もバーストでレッカーに行ったことがあります。しかもそれが1年以内で。
困るのが、タントに乗っていてスペアタイヤを積んでいないのです。
ただのパンクなら、とりあえず車載の空気入れで空気を入れて動かすことが可能ですけど、いつもバースト。
毎回のレッカーです。レッカー車が他の救援に行っていたとしても、待ってるんです。JAFや保険会社のロードサービスは知らない人で怖いから嫌だというわけ。
パンクしたタイヤを交換ができない若い人も確かにいますけど、ことバーストという事故に関しては高齢者に多いのが特徴です。
スペアがあれば、レッカー車じゃなくてもいいんです。
特にここの所増えすぎている件なので、主要タイヤサイズの貸し出し用スペアを用意することにしました。
155/65R14など絶対数が多いサイズの工場出張用スペアタイヤを、各サイズストックしておいてとりあえず現場で付け替えて帰ってもらう。
新品のタイヤが組み終わったら来店してもらって、履き替える。こういうテクニックが必要になってきました。
時計が狂ったから5分進めてくれや
このオーダーもものすごく多いです。
「時計が狂っちまったから5分進めてくれや!」
「時計合わせてくれや!」
車検や点検、一般整備時のご用命事項で言われる分には全然いいんです。
困るのは、単純に時計を合わせてくれ!とそれだけの理由でアポなしでくる人。しかも決まって同じ人なんです。
こちらも純正のオーディオならば、何となく時計の合わせ方の想像はつきます。でも社外のオーディオが入っていると、説明書がないとすぐに設定はできません。
しょうがないからスマホでその機種の説明書を検索して・・・合わせる。
こんな作業が多い。しかも決まって同じ人。つまりこの人は、時計を合わせるということを覚える気がないんですよね。
車にオーディオの説明書がある場合は付箋を貼っておいてあげます。でも呼んでくれない。
数ヶ月に1回やってきて
「時計合わせてくれや!」
自分用の付箋になってしまってるよって・・。
若い人から時計を合わせてくれというオーダーは受けたことがありません。必ずと言っていいほどお年寄りです。
年金暮らしだから高い整備出しは払えない!まけてくれ!
僕もフロント業務を数年やったことがあるのですが、統計的に見て整備代を値切ってくる人は高齢者に多いです。
もちろん若い人でも、たまにズバッと言ってくる人はいます。
しかし圧倒的に値引きについては高齢者が多いです。
このことが何故困るのか?僕が住んでいる地域では車が必需品です。山間地に住んでいると病院まで1時間。スーパーまで1時間という場所に住んでいるお年寄りはたくさんいます。
車がないとこまるんです。
こんな人もいます。雪が降る頃にはスタッドレスタイヤに履き替えないと、車はスタックしてしまいます。タイヤ交換をしないと駄目ですよね?
普通なら車にタイヤを積んで、お店にいって履き替えてもらいます。
しかし、高齢者の多くは自分でタイヤを持ち上げられない人がいます。どうするかっていうと、わざわざ車を取りに来てタイヤを積んで履き替えてくれ!というオーダーを要望されるんです。
まあそこまでいくなら現地でタイヤ履き替えサービスをしたほうがいいか!という気にもなるんですけど、雪が深い地域ってクリップナットが痛みやすい。
タイヤを脱着するときにネジが折れることや舐めることがあるんです。
特にホイールナットを貫通タイプで使ってる車。袋ナットなら大丈夫なんですけど。貫通ナットでクリップボルトが飛び出ている部位が錆て、ホイールナットを外そうとするとその錆がネジ山を喰って駄目になる。
こういう事があるので、できれば工場で作業をしたほうがいいわけです。
どうですか?普通のタイヤ交換より何倍も労力が必要ですよね?これを一体いくら請求すればいいのか?
本来通り、出張料金や引き取り料金をもらって作業して・・。と、請求すると、払えないと言われることも。
やはり年金生活だと、収入が限られるから、整備代が家計を圧迫するのはわかります。
でも、普通の作業以上に労力を使ってるから、こちらも通常料金とはいかないです。
自分でできないことが多いと、それだけお金はかかるんです。当たり前のことですけど。
ご高齢ドライバーにお願いしたい事
そして、ここからは整備工場側からご高齢のドライバー様へお願いしたいことを書いてみます。
・整備工場の多くはタイムスケジュールで動いています。それを理解してほしいです。
(オイル交換やら電球切れなどの一般整備は来店されてもOKです。)
・作業が終わった後、お店でくつろいでもらってもいいんですけど出来ればスタッフは他の業務に移らせてほしいです。
(予約のタイムスケジュールで動いている為。暇なときはお相手します。)
・必要以上の作業はその整備士の工賃が発生すると認識してください。
(タイヤを運ぶ作業や車を引きとりに行くということは、整備士の時間を拘束するため別途費用がかかると思って欲しいです。)
・お互い敬ってWIN-WINの関係を築かせてください。
(高圧的な態度は相手にプレッシャーがかかります。お互いが気持ちよく接したいと思っています。)
どうして最近こんなことを感じるのかなと考えてみたんです。昔は車って高級品だったので、免許を所持している絶対するも少なかったですよね。
うちのおじいちゃんも免許もってませんでした。それが今はかなりの確率で運転免許を持っています。都会なら必要のない車でも、田舎では生活必需品です。
そして健康寿命と平均寿命ともに延びています。そりゃこういう時代になってくるよねって。
多分今がピークを迎えようとしているんだと思います。あと10年もすれば車の方がもっと人間をアシストするようになります。レーンキープやらステレオカメラ、ADAS機能によってバーストする人は減るだろうし事故も減る。
今の車はアシストが出来るようになってきてはいるものの、そうでない車もたくさん走っていますから。
僕も自分が後期高齢者になった時は、潔く免許を返納するか、それか車が必要ならば最新の安全技術が詰まった車を乗るようにしたいと心から思います。
人間でミスするところは機械にカバーしてもらう。それがかなわなければ、そうなる前に便のいい場所へ移住するとか考えないと駄目です。
幸い僕が住んでいるところは、歩いていろんな場所へいけます。
スーパーもコンビニも病院も近いです。そう!将来車がなかったとしても何とかなる場所を狙って家を買ったんです。
どこかで何かをかえないと、人に必要以上の迷惑が掛かってしまいますから。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。