今回、ちょっと興味深い事例があったので紹介します。
タントでアイドリングストップがうまく作動しないというものです。
症状はどのようなものか?
信号待ちなどでアイドリングストップした時に、再始動ができなかったというもの。
通常アイドリングストップがかかると、ブレーキペダルを離したりするとすぐにエンジンが始動します。
その時どうしたかとお客さんに聞いたら、慌ててシフトをPレンジに入れて再始動を試みたらエンジンがかかって事なきを得たとの事。
これを受けて、預かって原因究明、修理することになりました。
最初話を聞いたときは、半信半疑だったんです。アイドリングストップが効かなくなったの間違えじゃないかなって。バッテリーの劣化かなと。
問診をしたら、明らかにアイドリングストップ時のトラブルなので預かりました。
目次
アイドリングストップはいろいろな条件下で稼働している
アイドリングストップって、賛否両論分かれてきていて、今トヨタでは採用を見合わせるようになってきました。期待できる効果が見込めないということと、メンテナンスの部分で費用がかさんでしまう。
つまり結局低燃費に貢献したとしても、環境下で考えると部品交換が高額だったりして意味がないんじゃないかと。
僕もアイドリングストップはトヨタと同意見で嫌いです。実家の車には搭載されていますけどキャンセルしちゃいます。
そして、アイドリングストップって各メーカーで味付けが違いますけど、概ね同じなのはいくつかの条件をクリアしていないと稼働しないということです。
一番はバッテリー。バッテリーの電圧が規定値以上キープできていないと稼働させません。その他、昔のアイドリングストップはエアコンをONにすると効かなくなったとか、ありました。
メーカーがいくつもの条件を出してそれらすべてを満たしていないとストップさせない仕組みになってます。
アイドリングストップで一番多いトラブルはバッテリーの劣化による警告灯の点灯や点滅です。これは、データモニタで始動時の電圧が何Vを何回下回ったから、バッテリーは寿命なので交換をしてくださいというアナウンスでもあります。
始動時電源電圧低下といったコードであれば、バッテリーを交換しないといけない。
アイドリングストップが失敗するのは何故?
話を戻してタントです。
とりあえず症状再現からスタートします。もう少しお客さんに記憶をたどってもらって問診をしたら、アイドリングストップをした後、セルモーターが回らなくて電気も消えたままだったというのです。
次に候補に考えていた、うまく火花が飛ばないでかぶり気味になって、始動できなかったのかなというものもこれで外れることになりました。
どちらにせよ、すべての話をうのみにはしません。7割位で考えて、あとは実際に自分で体験してみないと真実にはたどり着けません。
テスト走行を繰り返すと、一回だけ症状が発生しました。
アイドリングストップした後、急にメーター廻りが消えて、再始動できない症状がでました。意外と早くでたな・・・。こりゃ確かにおかしいや。
と思って、とりあえず信号待ちで後続車もいるので、シフトをPレンジにして再始動を試みました。すると、反応なし。この時点でピーンと来たものの、信号が赤のうちに再始動できないと後続車に迷惑がかかるので、NレンジにしたりPレンジにしたりを繰り返したらなんとかかかった。
答えはほぼ見えていたので、工場に戻って答え合わせしました。
アイドリングストップがいけなかったわけではなかった
結果、何だったのかというとアイドリングストップ機構の故障ではなかったんです。
もちろん最初の段階で診断機をつなげて、なにか故障コードを拾ってるか確認しましたが、それもありませんでした。
何かというと、原因はこちら。
バッテリーの接触不良です。
事あろうことか、マイナス側の端子が全く締まってなくてゆるゆるでした。
どういうことか?
エンジンをかけて走りだす
↓
アイドリングストップが作動、エンジンが停止
↓
振動でたまたまバッテリーの接触不良に陥って、電源が供給できないバッテリー上がりのような症状になる
↓
シフトなどをガチャガチャすると、振動で接触が直って始動が可能になる
そもそもこのタント見ての通りまだ5000km弱の新車から降ろして間もない車両です。
電装品を見てみると、社外のナビやらいろいろついています。
どこでつけたのかなぁと確認したら当社ではなかったので一先ず安堵しました。
おそらく新車架装時にアフターパーツを付ける業者さんが、最後にバッテリー端子を締め忘れたのかなと。
アイドリングストップが効かなかったんじゃなくて、単純に電源の接触不良だったということ。
ではなんで、普通の走行時も起きなかったのかという疑問ですけど、車のエンジンがかかっているとオルタネーターが稼働するので、バッテリーが接触不良でもエンジンに必要な電力は供給されます。
つまり止まらない。まあオルタネーターの発電を上回る電気を使うと理屈的にストールしますけど、国産車ってオルタの性能が高いのでそれはほぼ起こらない。
(外車は起こります。電動パワステのポロなんかはカーブを曲がった瞬間に何度もエンジンが止まった経験があります。)
アイドリングストップ中は、オルタネーターは当然駆動していないので、その時に接触不良が発生するとエンジンが始動できなくなる。
ということです。とりあえずすんなり症状が出てくれてよかったです。再現できなければ、これは答えまでなかなかたどり着けなかったかもしれません。
アイドリングストップ車はバッテリーを早めに交換しましょう。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。