昨日のことですが、タンクローリーが入庫してきました。内容はオイルのランプが点灯したということです。
調べてみると、オイルの量が問題だったようです。コモンレールディーゼルで、オイルが燃料希釈されてランプを点灯させたということ。
今では、エンジンオイルの管理が非常にシビアになってきています。ここでは、オイルの入れすぎによるトラブル事例を3つほど紹介してみます。
目次
エンジンがふけ上がり、停止できないトラブル
まずはこんなことってあるんだね。というトラブルです。
整備ミスも整備ミスです。これは実際にあったトラブルです。日産のキャラバンで、エンジンがディーゼルを搭載していたモデルです。
車検で入庫して、整備が終わったあとエンジンを始動したら異変が発生。なんとエンジンがレッドゾーンまでふけあがってしまった。
これはまずいという事で、キーをOFFにして止めようと試みるも、キーをOFFにしてもエンジンが止まらないまま、レッドゾーンを保ったままふけあがり続けていた。
このままではエンジンがぶっ壊れるということで、吸気を絞ってなんとか停止させることができて原因を調査したらまさかの展開です。
エンジンオイルが相当な量入っていました。その量たるや2倍なんて言うもんじゃないほどです。
オイルが入りすぎていて、シリンダー内へオイルが入り込んでしまった。ディーゼルだからオイルを燃料として燃え続けてしまったという驚きのトラブルでした。
ここまでオイルを入れすぎるケースはほとんどないと思いますが、こういうこともあるんだという一例です。
整備工場だとエアツールでオイルを圧送することができるので、オイルを入れるストッパーが効かないで張り続けていたため、このような事態につながったようです。
エンジンをかけて、しばらくするとエアクリーナーがオイルでぐっしょり
続いてのケースです。これは僕も現場で一部始終を目撃していたのでよく覚えています。新米整備士の整備ミスでした。
車はスバルのプレオです。車検で入庫したんですが、一通りの整備を終えて完成検査に入るところでした。
車を検査ラインに移動させると、当時の検査員から車両が戻ってきた。
聞けば車がオイルまみれで吹き返してくるという。調べてみると、エアクリーナーもオイルでぐっしょり。
どういうことなのかと、指示書を振り返ってみるとオイル交換以外特別なことをしていない。とりあえずエアクリーナーケースを洗浄して組みなおし、もう一度エンジンを始動させるとまたもエアクリーナーケースから吹き返してくるオイル。
この時点でピンときて、一旦オイルを抜いてみると出るわ出るわのエンジンオイル。
実に2倍もの量がエンジンから抜けてきました。
原因は何かというと、オイル交換をする際にオイルを抜かないで新油を規定量いれてしまったということでした。
オイルが2倍も入っていると、少し負荷をかけるとオイルが吸気側へ即効で吹き返してきます。中間検査をするときも、ゲージが見えにくくて発見が出来なかったというオチでした。
オイルの入れすぎでO2センサのトラブル
これもまれにあるケースです。
エンジンチェックランプが点灯したので、コードを読み取ってみるとO2センサ系統の異常でした。センサ自体が駄目になってるのか、電圧の変動などを調べてみたらどうやらセンサはきちんと動いている様子です。
具体的に空燃比をモニタリングしていくと、どうもリーン(薄い)状態がままあるようでセンサが反応していました。
それでは、どうして空燃比が薄くなっているのか一つ一つ当たっていくと、原因はインジェクターが詰まっていたから。
通常10の状態でないといけない部品がその半分の5位しか仕事ができないとしたらどうでしょう?
今のインジェクターはマルチホールインジェクターで、噴射孔は非常に小さいです。このインジェクターが詰まっていた原因は、ブローバイの吹き返しが原因でした。
つまり、恒常的にエンジンオイルを入れすぎていたため、内圧が高まって吸気側へ戻され、それがインジェクターを詰まらせてO2センサが反応したと。
このように、オイルを入れすぎると思わぬトラブルを引き起こすことがあります。
コモンレールディーゼルは燃料でオイルが希釈されるので注意
今のディーゼルエンジンは高圧のインジェクターを備えています。
その性格上、燃料がシリンダーへ混入することがあります。シリンダーへ流れてきた燃料がエンジンオイルを混ざってくると、オイルが燃料希釈して潤滑性を失ってきます。
潤滑の失ったオイルで、エンジン内部を保護しろというのは無理な話で、現在のディーゼルエンジンにはオイルが希釈されたらレベルゲージで確認をするか、ランプが点灯するなどします。
オイルが規定値以上に燃料で希釈されて量が増えたら交換しないといけません。
つまりオイル交換時のオイル量はシビアに調整しないといけないわけです。エンジンオイルの交換は年々複雑化されてきています。
今では軽自動車であってもオイルを交換したら、リセットをかけないといけません。
オイルの入れすぎは百害あって一利なしです。当然燃費も悪化します。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。