電子制御された今の車は、ノッキングを起こすことって珍しくなってきました。ノッキングっていうのは、エンジンをふかそうとアクセルを踏み込んだ時に
「ガラガラ」
といった金属音のような異音が発生する現象です。ディーゼルエンジンのガラガラ音に似ていますが、もっと甲高い音です。
ノッキングというのは異常燃焼です。通常ガソリンエンジンはスパークプラグの火花で混合気を燃焼させ、燃え広がっていきます。しかし、プラグの火花以外のところから混合気が燃え広がって、プラグが起こした火炎伝播と干渉することで甲高い音が発生します。
症状がひどくなるとエンジン本体が駄目になる事もあります。
目次
セルは回るがエンジンがかからない
先日、セルは回るけどエンジンがかからないという相談が入りました。
現場に駆けつけてみると、確かにセルモーターは回っています。そして初爆はあって、エンジンがかかりそうな感じもあります。
車はダイハツ車でエンジンはKF。
プラグがかぶっているのかなと思って、取り外してみたけど完全にかぶってるというほどでもありませんでした。
くすぶり気味だったプラグを清掃して、長めのクランキングをすると何とかエンジンが始動。
なんとかエンジンがかかったらアイドリングが不安定で、アクセルを踏み込んでみると
「ガラガラガラ」
という激しいノッキングが発生しました。今どき珍しいほどのノッキングです。
とりあえず工場へレッカーで搬入して、原因を一つずつ調べていきました。
ノッキングの原因は?
ノッキングの症状がこれほどはっきりでるのも珍しいです。しかも3日前までは何ともなかったという車です。
一体何が原因か?プラグを再度取り外して、パワーバランスを試してみましたが、やはり特定のシリンダーで不調が起きているわけではなく、全域で不調・ノッキングを発生しています。
ノッキング時にバックファイヤなどが起きるかというとそうでもなく、負荷をかけるとガラガラガラとノッキングする状態です。
点火系は一旦置いておいて、続いて燃料系統の点検に入ります。
もちろん最初から怪しいとにらんでいたのは燃料です。OBDでセンサをモニタリングしていても、リーンや失火という表立った数値が出てきません。
燃料タンクを外してポンプを点検してみると、ポンプは奇麗です。ただ決定的だったのが燃料の臭い。明らかに純粋なガソリン臭ではない臭いがしています。
燃料タンクの燃料を全て抜き取って、新しいガソリンを入れてしばらくアイドリングさせているとみるみるエンジンの状態がよくなりました。
アクセルを踏み込んでもノッキングは止みました。原因は粗悪燃料でした。
オーナーに問診をしてみると、3日前にガソリン携行缶に入っていた燃料を車にいれてみたということでした。
そもそもその携行缶に入っていた燃料が、ガソリンであったかどうかすら怪しい臭いです。
今まで調子よかった車が、急に調子を崩すということは、何かしら故障以外の原因がある可能性もあります。特にガソリンは古くなってくると腐ってきます。
劣化してくるとネバネバして、燃料系統を詰まらせることもあるので注意が必要です。
結果、燃料ラインを洗浄して修理完了となりました。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。