高速道路を走行中、急にエンジンの力がなくなってスピードが出なくなった・・。僕にはまだこのようなトラブルを経験したことはありませんが、これは相当な恐怖でしょう。
もし夜間だったらどうか?追突される確率だって高くなるだろうし、非常に危険です。明るい日中だったとしても、見晴らしの悪い場所でトラブルが発生したら危険極まりありません。
整備士をやっていると、高速道路でエンジンが壊れてしまった故障に遭遇することがあります。今回は2つの例を紹介します。
目次
走行中オイルの油膜切れでエンジン故障
最初の例は、高速走行中エンジンがガラガラ音が発生。路肩に止めてあえなくレッカーとなってきた車両。車は確かスズキのワゴンRだったかなと。壊れたエンジンを分解してみたら、2番シリンダーのコンロッドメタルに異変がありました。
原因はコンロッドメタルの焼き付きです。
クランクシャフトには傷がくっきりと残っています。
問題のメタルはというと・・・このような状態です。ペラペラな状態になっています。
原因はなにか?このコンロッドベアリングにはオイルが供給されているわけですが、明らかに油膜が切れてしまったのがわかります。
高速回転するピストンの軸であるコンロッドに、オイルが回らなくなった為焼き付いてしまった。
エンジン内部ははさほどスラッジが堆積しているわけでもなく、1番と3番は無事でもあるので、もともと2番シリンダーのコンロッドメタルに問題を抱えていた可能性があります。
ですが、結果的には油膜切れによるエンジンブロー。
幸いなのが、メタルが駄目になると高速回転をするピストンがシリンダーブロックを突き破ることがあります。するとエンジン内部のオイルが一気に噴出して車両火災につながる。
この場合は、エンジンの異音が大きくなった時点で停車したことで、最悪のパターンを回避できたということです。
ピストンリング固着による圧縮抜け
続いてのケースは何か?
こちらは、高速走行中エンジンパワーがなくなって、スピードが出なくなってしまった。スピードが出なく危険なのでレッカーで搬入されてきた。
車がトッポでエンジンが3G83です。
原因を追究すべく、エンジンの点検をしたところ2番シリンダーの圧縮が抜けている。
エンジンの見た目にはさほど悪いところは見当たりません。ということで、エンジンを分解して原因を究明することにしました。
ヘッドを外してみると2番シリンダーが若干やけ気味かなという印象。燃焼室にはそこそこのデポジットが見受けられます。
たまにバルブがかけてたりして圧縮が抜けることがあります。
圧縮が抜けるような感じではなさそうです。原因はシリンダーブロックか?
ピストントップもすすけています。全体的にオイル管理などが良くなさそうです。
ピストンを取り出して原因が判明しました。
2番シリンダーのピストンリングが固着してまったく動かなくなっています。
トップのコンプレッションリングとオイルリングがガチガチに固着しています。
ピストンリングが固着すると圧縮が抜けてパワーダウンします。圧縮を保持できなくなるからです。
オイル管理はどうなのか?
ヘッドを外す前ですが、ロッカーアームなどはさほど真っ黒ではありません。
それほどオイル管理が悪かったというわけではありません。
粗悪なオイルを使うとピストンリングに悪影響
現在市販されているエンジンオイルはさほど問題ありませんが、グレードの低いオイルはピストンリングの固着を引き起こすことがありました。
オイルの本来の役割というのは潤滑だけではなく、不純物を包み込んでいくという目的もあります。
エンジンに負荷を与えるとブローバイガスが発生して、インテークに戻される。それらが燃焼室にもどされてエンジンオイルによってふたたびオイルパンへと戻っていく。
この一連のフローにより、オイルは少しずつ汚れていきます。オイルが汚れるのはきちんと仕事をしているという事でもあります。
一つ目の事例での油膜切れも同様です。もしかしたら軽自動車のエンジンです。坂道などで相当な高速回転と高負荷で運転中、オイルの油膜が切れていたとしたら。
たらればですが、高級オイルをその時入れていればしのげていたかもしれない。
どちらにしろ結果論になりますが、エンジンオイルというのはエンジンを保護する最重要な役割をしているのです。
しばらく走行をしている車は、少しずつですがカーボンなどがピストンリングの溝に堆積していきます。
定期的に添加剤を入れることで若干の緩和をはかることもできるので、添加剤をいれる価値はあるかなと思います。
ピストンリングの汚れを全て落とすにはOHしかありません。添加剤で少しでも緩和できるのならコストパフォーマンスは高いです。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。