今は使っているエンジン自体が少なくなってきました。タイミングベルト。エンジンの命綱といっても過言ではないベルトです。
エンジンは大きく2分割で構成しています。シリンダーヘッドとシリンダーブロック。シリンダーヘッドにカムシャフトがついています。そしてシリンダーブロックにクランクシャフトが鎮座しています。
タイミングベルトはクランクシャフトとカムシャフトをつないで駆動している部品です。クランクシャフトとカムシャフトはきちんとしたタイミングで駆動しないと、エンジンが不調になるばかりか一発で壊れてしまう。
その重要な部分をタイミングベルトやチェーンでつないでいます。今回は実際にあった整備記録を紹介します。
目次
ヴィヴィオ エンジンがかからない原因は?
僕が整備士になってから3年くらいした時に遭遇した車両です。
エンジンがかからないということで、レッカーで引き上げてきました。一口にエンジンがかからないと言っても、いろんな原因があります。
このヴィヴィオの場合、セルモーターは回るけれどうまく火が入らない状態でした。
初爆はありました。要するにかかりそうになるけどかからないっていう表現がわかりやすいですね。
プラグの火花や燃料系統をざっと確認しましたが、特に異常が見つかりません。初爆はあるけどかかりにくい・・・。もしかして・・とタイミングベルトカバーを開けてみました。
まさかの予感は的中です。エンジンがかからない原因はタイミングベルトでした。
タイミングベルトがコマ飛びを起こしていた。
これにより正規の点火タイミングにならず、エンジンがかからなかったということです。
それにしてもベルトカバーを開けただけでもこの状態です・・。オーナーにはある程度の費用が掛かりそうな旨を伝えてヘッドカバーを開けてみました。
ヘッドカバーをあけるとご覧の通りです。もうスラッジまみれです。
オイル交換をさぼっていた為、このようにスラッジが堆積していました。とりあえず修理するにはタイミングベルトを新品かけてみて、圧縮を測定してみないとわかりません。
そこまでの作業了承を得て先に進みます。新品のベルトをかけて圧縮を測定すると、どうやらバルブクラッシュは起こしていない様子です。4気筒が均一でした。
あとはこのまま修理をするかどうかをオーナーに委ねました。しかしここで新たな問題が発覚。エンジンがかかってはいるものの、油圧があがりません。
どうやらスラッジが相当エンジン内に溜まっている模様で、最低でもオイルパンをはがしてストレーナーを掃除してあげないと焼き付いてしまいます。
全部修理してくださいということで、オイルパンも外してストレーナーも清掃。
入念にフラッシングをして各部パッキンを交換後に修理完了しました。
このヴィヴィオですが、走行距離が10万キロにはまだ満たない状態です。メーカー指定のタイミングベルト交換時期は10万キロです。
どうして早くにコマとびなどを起こしてしまったか?
オイル交換をしないとタイミングベルトに負担がかかる
実はタイミングベルトって、オイル交換などをさぼっていると寿命が短くなります。エンジンオイルの交換をここまでさぼってくると、当然フリクションロスが大きくなってきます。
これがエンジン始動時などベルトにも影響を与えて、ダメージを蓄積してきます。
整備士になるとき整備振興会の講習で講師の先輩に言われたことは
「オイルとクーラントをちゃんと交換してないエンジンはタイベルが切れやすくなるから注意しろ!」
ということです。これは確かにその通りだなと思います。
タイミングベルトがメーカー指定の交換距離まで使えるとするなら、それはメーカー推奨の整備をきちんとしたスパンで行わないと駄目です。
この年代のヴィヴィオならオイル交換だけではなくて、クーラントだって2年ごとに交換しないと駄目ということ。
これらエンジンメンテナンスを怠ってしまうと、タイミングベルトが切れやすくなってしまいます。
おそらくこのヴィヴィオのエンジンがタイミングチェーンだったとするならば、異音が発生していてもおかしくない状態でした。
チェーンが切れるということはいまだかつて経験したことはありませんが、異音はでます。タイミングベルトを使っていないチェーンのエンジンなら異音が発生していたでしょう。
メーカー指定交換時期を最低限守るという事
自動車メーカーが設定しているメンテナンスは、きちんと守らないとこういうケースに発展します。
ただ、たまにメーカー指定距離前でタイミングベルトも切れることがあります。これは部品が明らかに良くない車もあります。
できれば重要な部位に関しては、自動車メーカー推奨交換時期よりも早くに交換することが安心です。
オイル交換をさぼってる車なら、タイミングベルトなどは10万キロ前にいつ切れてもおかしくないので、早めに交換すること。
オイル交換ってこのように他の部分に関しても影響を及ぼす整備です。基本的な整備ですがとても重要なことがわかります。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。