車の整備業界ではニューサービスというものが導入されてしばらく経過しました。ニューサービスって何かというと、使用者様のニーズに合わせた整備というものです。
情報提供によるユーザー選択型指定整備とも言い換えられます。簡単にいうと、この車のこことあそこが駄目です。だけどここはやらないと車検に通りませんが、あそこはやらなくても通ります。
しかしあそこを放っておくと後にこういった不具合がありますがいかがなさいますか?
これがニューサービスです。
このニューサービスというものが、とてもいいことだ!と思いますが、仮に諸刃の剣として帰ってくることがあります。
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車検に通れば何もしなくていい!
これは極端な例ですが、一定数このような主張をしてくる人がいます。
「車検に通るんなら何にもしなくていい!金は一切かけるな!」
まだまだうちのお客さんにも、いらっしゃいます。例えばブレーキパッドの残量が1mmでも残っていて、完成検査の時点で制動力が出ていれば車検はパスできます。
でもそれをやっていいのかというと、そうではないと僕は思います。
仮にこのような主張をする人が、自分で整備の技術を持っていて車を熟知しているのなら安心です。車検の引き渡しを終わってすぐに自分で悪い部位を整備してくれるだろうと。こちらも安心ができます。
問題なのは、車に詳しくない人がお金と整備を天秤にかけて、重要な部品交換をやらなくていいと一蹴してくるケース。
僕は会社のOB整備士には、ニューサービスで車検を通すことに大賛成です。場合によっては部品だけ買っておくから車に積んでおいてという元先輩もいます。
ニューサービスで問題なのは、お金第一で天秤にかけてしまう人達への説得です。
ここだけは整備させてほしい部位とは?
僕が整備士になったころって、ニューサービスが導入されるかどうかっていう時代でした。実際にお客さんとのやり取りは整備主任の先輩がやっていました。先輩も頑固な職人ばかりだったので、有無を言わさず部品を交換していた部位もあります。
今考えればその部分っていうのはとても適格な場所。
例えニューサービスであってもここだけは整備させてほしいという部分はどこか?
これはブレーキです。エンジンが不調になることよりもブレーキが効かなくなることが一番怖い。
ブレーキパッドの残量が2mmを切っていたら、絶対に手を加えたい部分です。相手が頑固であっても、ここだけは譲れないとこちらも主張します。それでも納得してもらえないのなら、きちんとアドバイス欄に記載をして、納車時に署名をもらうくらいしたい。
万が一ブレーキパッドが1mm弱の状態でも交換させてもらえない。今は勝手に交換するとお客さんはお金を払わないと主張しかねない時代です。そんなに意地悪な人は少ないですけどね。
ですが、きちんと事前に了承を得ないことには整備をしてはいけないわけです。そこが車検に通らない部位だったらいいわけは立ちますが。ブレーキは残量が減っていても制動力がでれば車検に通ってしまいます。
ブレーキパッドやブレーキシューの交換はもう絶対整備させてほしいところです。
タイヤの摩耗や変形
続いてここだけは譲れない部位。それはタイヤです。車検の基準にタイヤの点検もあります。溝がなかったり著しい亀裂などがある場合は検査でNGを出すこともできます。
しかし、とてもグレーな判定の時がこまります。
タイヤは新品に交換しなくてもいいんです。もしスタッドレスやノーマルタイヤがあれば、そのタイヤで車検を通させてもらえれば。
何も新品を買ってくれ!という主張ではなくて、そのタイヤで走行するとバーストなどの恐れがあるから、違うタイヤで車検をさせてほしいということです。
スタッドレスタイヤの履きつぶしだったり、ほとんど乗らない車だから・・・。と、溝があっても亀裂がすごいタイヤは絶対に怖い。
タイヤも人命に直結する部品だけに、譲れない部位となります。
ニューサービスは人によっては諸刃の剣
ニューサービスが始まる前って、車の車検整備もどこか役所じみたイメージがありました。整備側の人間には職人気質な人が多く、どちらかというとお願いして整備してもらっていたような感じです。
しかし今の自動車整備の現場は真逆です。整備はサービスであって接客業に通じるところがあります。きちんとお客様とコミュニケーションをしながら最適な提案をしていく。
コミュニケーションが苦手な整備士は、お客さんの主張を丸呑みしてしまったりすることもあるかもしれません。
ニューサービスはお客さんにとっていい反面、悪いところもあるということです。
ちゃんと車のメカニズムに則って、ここは絶対に換えておかないと危ないということを理解してもらったうえで、winwinの整備ができれば最高です。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。