新車を買ったとき、ここの所議論になるのが、
「ならし運転」
ちょっと前までは、製造過程の精度があらかったので新車の場合エンジン内部に鉄粉が沈殿しやすくなる。その為、ならし運転をして最初は早めにオイルを交換する。
このようなことを言われてきました。最近では機械精度も抜群に上がって、ならし運転は必要ないという意見も多数でてきています。
一体どちらが本当なのか?日本が誇る高性能スポーツカーの説明書を読んでみたら、なかなか興味深い内容が記載されていたので紹介します。
目次
そもそも慣らし運転とは何?
そもそもまずは慣らし運転とは何なのか?
冒頭にも書いた通り、新車ってエンジンに限らずすべてが新品です。エンジン内部の細かい部品やミッションのギヤなど、新品がなじんでくるまでの間に鉄粉が通常より多く出てくることがある。
そのままの状態で走ると、エンジンやミッションなどの寿命を縮めてしまうので、新車時には慣らし運転を心掛けようというものです。
具体的には1000km走行まではエンジン回転を3000回転弱までしか上げないで乗るなどといったやり方が、都市伝説的に言い伝えられています。
共通して言えるのは、エンジン回転数は最初からレッドゾーンまで使うのはNG。走行距離を重ねるにつれて解放できる回転域を決めて慣らしていく。
当然間にはエンジンオイルとオイルフィルターを交換して鉄粉を除去するといった具合です。
日産GT-Rはならし運転必要と記載あり
まずは日産が誇るスーパースポーツのGT-R。結論から書くと、GT-Rの説明書にはならし運転が必要であるとはっきり明記されています。
一部抜粋すると
エンジン本体やトランスミッションなどのパワートレイン系部品、サスペンション、ブレーキまわりなど、この車両の持っている性能を十分に引き出すためには、慣らし運転が必要です。
日産GT-R 取り扱い説明書より引用
GT-Rはならしの方法まで事細かく説明書に記載されています。
~500kmまで
・アクセルペダルは半開までに抑えて、ゆっくりと踏み込んでください。
・エンジン回転数は3500回転以下に抑えて走行してください。
・不用意な急ハンドル、急ブレーキ、悪路走行は避けてください。
500km~1000kmと1000km~2000kmまでの制限も説明書に記載がされています。しかし、エンジン回転数に関する記述は~500kmまでの3500回転制限だけ。
そして2000km時点でアライメントを点検・調整してくださいと書いてあります。昔のようにエンジンだけのならしではなくて、車全体のならしを細かく記載しています。
しかし、初期段階でエンジンオイルの交換は何キロで行いなさいといった記載は見当たりませんでした。
NSXの説明書に慣らしの記載はない?
続いてホンダが誇るスーパースポーツのNSXです。このNSX、実車をまだ見たことがありません。写真はK20AエンジンでNSXとは関係ありません。あしからず。
NSXの説明書を紐解いていくと、結論を先に書きますが慣らし運転については何も記載が見当たりませんでした。
NSXの場合高性能なハイブリッドになるので、また取り扱いが違ってくるのかもしれません。しかしちょっと興味深かかったのがエンジンオイル。
NSXの指定エンジンオイルはエクソンモービルのMobile1 0W-40となっています。これ、GT-Rと同じではないですか。ホンダも日産も自社開発のオイルではなくて、Mobileの高性能オイルを指定オイルとしています。
この理由は、Mobile1というオイルはどこでも手に入るオイルであるという点。例えば、日本で海外のちょっとレアな車に乗ってる人がいるとします。純正指定オイルがあって、そのオイルを取り寄せようとすると本国オーダーで1週間以上かかる・・・。
こういった不具合を取り除く意味もあり、Mobile1というオイルを選んでいるところがあります。海外のスーパースポーツメーカーでもあるポルシェ。こちらもMobile1を指定しているのです。
スーパースポーツクラスになると、本国だけではなくてグローバルに販売が展開される。そういったとき基本的なメンテナンスであるオイル交換をストレスなくできるように、どこでも手に入るMobile1をチョイスしているという経緯もあるのです。
それにしても余談ですがNSXのオイル量、オイル交換のみで7.3リットル。フィルター同時交換で7.9リットルつかうようですね。オイルの量もすごい。
そしてNSXで気になったのは慣らしではなくて保管方法。1か月以上車を乗らない時はこのように保管してください。ということが細かく記載されています。
スーパースポーツカーは普段使いの足にはならないので、たまに乗るという場合が多いですからね。
スープラの説明書には慣らし運転と書いてある
それでは出たばかりのトヨタのスープラ。こちらはどうか?
説明書には慣らし運転は必要であると記載があります。ただしGT-Rのように細かく記載されているかというとそうでもありません。
一部抜粋します。
慣らし運転
一般事項
可動部品は互いになじませる必要があります。以下の注意事項は、車両の最適な耐用年数と経済性を得るのに役立ちます。
トヨタ スープラ 取り扱い説明書より引用
内容はエンジンやミッション、デフについて。
2000kmまではエンジン回転数4500回転を超えないようにとかいてあります。当然キックダウンなどといった急の付く動作も控えるように書いてあります。
2000km以降はエンジン回転数と速度を徐々に上げるようかいてあります。
タイヤは300kmまで、ブレーキは500kmすぎるまでは控えめにと。
エンジンはBMW製ですが、ちゃんと慣らし運転が必要ですと書いてありますね。じゃあオイルはMobile1なのかというと、トヨタ純正オイルでした。
0W-20 C5 for TOYOTA Supra
こちらが指定されています。最後にスープラの文字がついてるので専用開発されるオイルになるのでしょうか?
ものすごく長く使われるJPNタクシーはどうか?
高性能スポーツカーだけでなく、タクシーも1つ調べてみました。トヨタが出しているJPNタクシーです。タクシーって相当な距離を使う車です。
慣らし運転の必要性が事細かく書いてあるんじゃないのか?と調べてみたら、記載はありませんでした。
JPNタクシーの説明書を一生懸命探しましたが、慣らし運転の項目は見つからなかったです。普通にメンテナンスをしていれば長持ちしますからね。
このあたりが僕ら一般ユーザーが参考にするヒントが隠されているのかもしれない。
結果、慣らし運転は必要なのか?
ここまでスーパースポーツとタクシーの慣らし運転について書いてきました。
それでは我々一般ユーザーが乗る車について、慣らし運転は必要なのかどうなのか?この答えはこれしかありません。
「やったほうが間違いないけれど、昔ほどの重要性は薄れてきている」
まず慣らし運転ですが、できるのならやったほうがいいと思います。間違いなく。僕が新車を買ったらやります。だって新車です。高いですよ。長持ちしてほしいですから。
しかし、昔と比べてやはり機械精度は非常に高くなってきています。なので鉄粉がたくさん出るとかそういう意味合いでは慣らしは必要なくなってきているのかなと。
僕は新車点検が入庫してきたとき、お客さんにはやはりオイル交換をお勧めしています。環境を考えると1000km程度の走行でオイル交換!?と聞かれることもありますが、おまじないを込めて、1000km時にオイルとフィルターを同時交換する。
軽自動車なら5000円弱の投資になるわけですが、これでエンジンがこの先長持ちすると思えば安いものなのかなと思います。押し売りじゃないので最終的にはお客さんに選んでもらいますけどね。
慣らし運転、やったほうがいいのは間違いない。これは各メーカーの取り扱い説明書をみてもちゃんと明記されています。
中古車だって慣らしは必要!
ここまでは新車の話でした。もしあなたが中古車を買ったらどうでしょう?
僕は中古車にも慣らし運転が必要だと考えています。その理由はなぜか?前オーナーの使い方がわからないため、自分の使い方に徐々に慣らしていく必要があるから。
例えば前のオーナーがバリッバリの走り屋さんで、エンジンをものすごくぶん回す人だったらあれですけど。
お年寄りが乗っていて車庫保管だった車に多いのが、エンジンがもっさりと重たく感じるもの。昔のキャブ車のほうが体感ができたのですが、高回転域をほとんど使われていなかった車に対して、次に乗る人間がいきなりエンジンをレッドゾーンまでぶん回すとするとどう思いますか?
車としてはびっくりしますよね。予期せぬトラブルが発生する可能性もあります。なので僕は中古車を買ったら必ず行う慣らしがあります。
エンジンオイル
オイルフィルター
ミッションオイル
デフオイル(トランスファ含む)
最低限可動部のオイルは総とっかえして、自分仕様になじませていきます。その後ブレーキフルードとパワステフルードなども交換してしまう。
今までどういった使い方をされてきたか不明なので、油脂類は購入した時点でゼロに戻してやる。ここから自分好みに慣らしをしていく。
一種のおまじないみたいなところがあります。当然中古車店で交換してくれている場合もあるのでその時は必要ないですけどね。
中古車にだって慣らしは必要なんだよ!という余談でした。
Mobile1というオイル、僕は入れたことがないのですがいろんなメーカーから評価されているので今度入れてみようかなと思ってます。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。