三菱のデリカスペースギアで、型式がPD6Wというものです。
今回入庫してきたのは、4WDのインジケーターランプの前輪側だけ点滅しっぱなしになってしまうというトラブルを修理して欲しいという依頼です。
このタイヤのマークの4WDの表示灯ですが、4WDに入れた時はきちんと4つのタイヤのランプが点灯します。ですが、2WDに戻した時に、前輪側の2つのタイヤのランプが点滅しっぱなしで消えないというもの。
現状を確認するために、リフトに乗せてタイヤを空転させてみた。そうしたらどうも4WDが完全に抜けてないような印象を受けました。
センターデフロック機能には問題はなさそうです。
このデリカスペースギアはオートマミッションで、4WDにするときはサイドブレーキの横のレバーを動かすことで切り替えます。
レバーの手応えからすると、機械的にミッション内部を切り替えているとみて間違いないでしょう。2WDに戻した時に前輪のタイヤを回してみると、完全に2WDにもどっていないこれが原因でインジケーターランプが点滅しているんでしょう。
実際にミッションの上部を見てみると、シフトを検知するポジションスイッチが3つも4つもついていました。おそらくこれらのスイッチでミッションの内部などを検知しているということですね。
ここで一旦整理すると
・4WDには問題なく入る
・2WDに戻した時に完全に戻りきらないでいる(前輪のインジケーターランプ点滅)
という2点です。
整備振興会のファイネスという整備書を閲覧できるサービスで検索してみたけれど、このデリカスペースギアの整備書は登録されていなかった。何も情報がない中での修理となりました。
4WDを切り替えると、ミッションの内部が機械的に切り替わって、フロント側のプロペラシャフトが回転する。そこで、しばらくして左右のタイヤが直結されています。このフロントのデフのところにアクチュエーターが付いていました。
おそらくここに問題があるのが原因なんでしょう。左右のタイヤの接続をバキュームで行っているみたいです。それではと、ここのフロントデフのアクチュエーターに繋がるバキュームホースを辿っていったら、エンジンルーム内にソレノイドバルブがあるのがわかりました。
4WDにした時にフロントのタイヤの左右をつなげるためのソレノイドバルブの位置はエアクリーナーボックスの横あたりです。
とりあえずエアクリーナーボックスを外します。
すると、ブレーキのブースターの斜め下に切り替えのソレノイドバルブを発見。
このバキュームホースが繋がっているソレノイドバルブが怪しい。
とりあえずソレノイドバルブを外します。10mmのボルト2本で止まっています。
ソレノイドバルブの抵抗を測ってみることにしました。黄色のマーキングがついている方は約60オーム
続いて青いマークが付いている方は・・・無限大・・・。
断線している可能性があります。が、制御がはっきり分かっていないので、この時点ではソレノイドバルブはグレーとしておきます。
今使っているテスターはこれです。安いものでもとりあえずはOK。こういった電子部品はデジタルテスターで計測。
ソレノイドバルブに繋がるカプラーから電源電圧を計測すると一応2つのカプラーとも電源電圧が測定できたので、こちらはシロとしておきます。
続いて車両の下からこのソレノイドバルブが負圧を与えているアクチュエーターを手動で動かしてみます。
このマイティーバックという工具を使って負圧を発生させます。
アクチュエーターに繋がっているホースを1本ずつ外してマイティーバックからのホースにつなぎかえて、擬似的に負圧を与えてみます。
これでアクチュエーターが動けばアクチュエーターはシロということになります。
マイティーバックは負圧の点検に必ず使う工具です
ちょっと見えにくいんですが、画像をクリックして読み取ってください。
アクチュエーターの左側に繋がっているバキュームホースがどうやら2WDに戻す側のホースになる模様です。このホースを引っこ抜いて、マイティバックのホースにつなぎかえます。そしてマイティバックで煽って負圧を作り出すと
アクチュエーターのロッドがデフの方へ移動していくのがわかりました。
しばらくその状態を保持。きちんとロッドは保持されているのでアクチュエーターはシロであるといえます。
この2WD側のバキュームホースをまたエンジンルーム側に辿っていくと先ほど抵抗を測ったら無限大になった方の青いマークのソレノイドバルブにぶち当たります。
一応各バキュームホースやパイプなどを点検して損傷がないということを確認しましたので、このソレノイドバルブが不良という結論に達しました。
部品を注文。平成27年現在の価格では6150円。
新品のソレノイドバルブ。
一応気になってみたので、抵抗を計測すると青いマークの方は約37オーム
黄色いマークの方も37オーム。
故障している方のソレノイドバルブはやはり青いマーキングの方の中身が断線しているということで間違いないことがわかりました。
あとはソレノイドバルブを付け替えればOK
2WDにもどしたときにきちんと前輪のインジケーターランプの点滅が消えました。
よかった。
今回は何も資料がなかったので、一つ一つしらみつぶしに潰して故障診断しましたが、一番最初にソレノイドバルブの抵抗値を測ってみて、青いマークのソレノイドバルブの抵抗値が無限大と出た場合は故障と見て間違いないと思います。
その時はソレノイドバルブを交換してください。
デリカスペースギア PD6W 4WDランプが点滅する 修理でした
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。