最近車検整備について非常に悩んでジレンマを感じています。
それはいかにして会社の枠組みの中で、満足度の高い車検整備を提供するか!?ということについてです。
車検って昔から乗用車なら2年に1度くるものでお金がかかる。というイメージが付いて回ってきます。僕も子供の頃ドラゴンクエスト2が欲しくて、オヤジにねだったことがあるのです。
オヤジの答えはこうでした。
オヤジ「馬鹿野郎!何がドラクエだ!こちとら車検が控えてそんなもん買う金なんかねぇ!」
このオヤジの言っている意味が当時子供の僕にはあまりよくわからなかったんですが、車という物には車検がつきものでそれはドラクエ2よりも大事な物なのだ!と心に刻み込むには十分でした。結局ブームが相当去った後に友達から借りてドラクエをプレイしましたけど・・。
その後、僕が高校生くらいになった時、またまたオヤジが言っていました。
オヤジ「ひろの野郎、セドリックを車検に出したら30万も取られたみたいだ!いやいやいや。高すぎて本当に笑えねぇ!」
ちなみに「ひろ」というのは従兄弟です。僕ら兄弟よりも年上の従兄弟なんですが、そんなひろくんが日産ディーラーにセドリックの車検を出したら30万円もかかったと!
うおーなんと恐ろしい車検・・・。ここで僕が抱く車検というイメージはとにかく金がかかる恐ろしいシステムだ!ということに定着しました。
僕も19歳になって400ccのバイクを買ったんです。ゼファーXというカワサキのかっこいいバイクです。400ccなので車検があるんです。当時親元を離れていた専門学生の僕は、バイトのお金をためてオヤジに内緒でバイクを買った。友達からの個人売買です。
そのゼファーXが車検の時期にきたんですよ。車検はやらないと乗れなくなる!ということはわかっていたので、僕は電話帳で調べまくりました。とにかく格安で車検をやってくれる業者を。
いくつかの業者をピックアップして、一体総額いくらで車検をやってくれるのかを調査しました。その中でバイクを取りに来てくれて、2日後にまた持ってきてくれる格安業者に車検を依頼したのです。専門学生の僕はビンボーです。今も変わらずビンボーです。ですがゼファーがないと、行動範囲が狭すぎて何もできなかった。
バイクがないと移動に困ってしまうので生活必需品だったんですよね。
ここで生まれて初めて車検というものを自分で受けた。その時の印象は、やっぱり車検はお金がかかるんだなぁと。
車に乗っている世間のユーザー様も僕と同じような考えを持っている人が山ほどいると思います。そうかと思うととにかく定期点検も必ずやって、車に関するトラブルだけは避けたい!と安心整備を望む人も大多数いることが整備士になってわかりました。
車検でかかる費用というのは
重量税
自賠責保険料
印紙代
この3つだけなんですよね。本来は。ここに業者で車検をとる場合、法定諸費用と言われて
重量税
自賠責保険料
印紙代
代行料
代行料という1つがプラスされます。代行料は車検の登録を代行して行うという費用ですね。業者への報酬になるわけです。
軽自動車であれば、法定諸費用の相場は代行料を含めても45000円〜50000円程度ですね。年式で重量税が免税になったり減税になったり増税になったりするので一概には言えませんけど。
この法定諸費用の中で
自賠責保険
重量税
印紙代
この3つは業者の取り分にはなりません。重量税は税金です。そして自賠責保険は保険会社へ支払います。印紙代は陸運局へ支払うわけ。つまり、車検案内で法定諸費用をお客さんに用意してもらわないと、業者が立替える必要が出てきてしまうお金になります。
お客さんの中にはなかなかに代金を支払ってくれない人もいるんです。そうなると業者は立て替えたお金すら回収できなくなって代行料のプラスどころか大損こいてしまう。なので、ずーっと付き合いのあるお客様以外の人の車検を初めて受ける場合、必ず前払いで払ってもらう必要が出てきます。
なぜなら、車検をするのに諸費用までこちらが立て替えて後で集金ができなかったら困るから。法定諸費用というものを用意すれば業者の儲け分を含めてギリギリ最低ラインで車検を通すことができる金額になってきます。当然追加整備が必要になったらプラスアルファでもらわないといけませんけど。
目次
法定諸費用と整備代
法定諸費用については前述したとおりです。車検整備を指定工場などで行う場合、整備代というものがプラスでかかってきます。
整備代の内訳は24ヶ月点検料・検査費用。主にこの2つ。24ヶ月点検というのは車検をする時に整備したという分解記録簿の写しを陸運局へ提出する必要があります。ユーザー車検なら自分でやった!ということで記録簿を書いていけばOK。指定工場や認証工場はきちんとブレーキまで分解して確認します。
その上で必要な整備を行って、完成検査をする。検査費用というのが指定工場でいうところの自前の検査ラインで自動車検査員が完成検査を行うためのお金になってきます。
そして24ヶ月点検を行い、完成検査をする。その検査結果を元に保安基準適合証に署名します。ここでユーザーに登録業務をどうするか聞きます。車検整備が終わって、検査も合格しました。この書類を陸運局へ持って行って登録するのはユーザー自身です。だけどそんな面倒なことだけをするユーザーはほとんどいません。登録業務も行ってくださいとなりますので、法定諸費用の中の代行料を支払ってもらい新しい車検証を発行して納車する。
これが車検の費用についての内訳になります。
ですが車検案内のチラシを見ると、法定諸費用を貰えば車検が通せる!と読み取れるような表記をしている工場もあるのです。
うちの会社もその1つで、法定諸費用を記載した後「別途整備代金がかかります」と書いてはあるんですがわかりにくい。
誤解がないようにするとしたら、その車種に相当する24ヶ月点検料と検査費用をプラスした金額で車検案内を出しておけば間違いない。そこから先の追加整備はお金が別途かかるとわかりやすいですからね。
当然車検で車を預かる際には、概算見積書をお渡しして法定諸費用以外にこの整備代金がかかります。と説明をします。
この整備代金が工場の特色が出てくる場所ですね。本当に安い車検なんかは代行料に若干の金額をプラスして、軽自動車なら5万円で車検を通してくるところもあります。それに比べると我が社は高いわけです。
ではこの金額に対する差別化をどこではかるか?ここがお客様満足度に関わってくると思うんです。
他の整備工場よりも高いお金をいただいているにも関わらず、格安車検と内容がさして変わらない場合お客様満足度は下がってしまいます。これは当然の話。
お客さんが求めているもの以上のものを提供して、初めてお客様満足度が上がるからです。
ではどうやってお客様満足度をあげるのか?
そこの工場でしかできないプラスアルファを加えろ!
単純に考えれば、その工場でしかできない何かを持つということ。
例えばそうですね、他の整備工場では整備ができないような車の車検にターゲットを絞るなど。具体的に言えば古〜い外車とか。
新しい外車ならそれこそ国産車とあまり変わらず、年式が新しければ車検を通せます。ですが、ふるーい外車で他の工場で整備が難しいものを行える技術。
これはオンリーワンになるので、そういったターゲット層を囲むことができる。そういった技術がなかなか難しいとなってくると他の方法を考えないといけない。
他の整備工場にはない何かを持つ。これは簡単なようで難しいです。ディーラーなどに専用車種で技術面において一般の整備工場が太刀打ちするのははっきり言って難しいです。専用診断機がないとできないことが今の車には多すぎる。
汎用の診断機でできる整備となると、イモビライザー関係などはいじれません。ディーラーに整備をしてもらなわないといけないわけですから。かといって最近のディーラーはすごいですよ。うちの整備工場の周りにあるディーラーは対応がすごく丁寧。
業者相手には冷たいところもあります。これは本当にあるんです。この前モグリでディーラーに整備をお願いしたことがあるんですが、リコールをやっただけなのに子供に風船までくれたしバッチリ洗車もしてあった。
これが、整備工場経由でリコールをディーラーにお願いするとどうか?洗車をしてくれないディーラーが8割くらいです。うちの整備工場の近所のディーラーですけどね。さすがにリコールのみでお客さんの車を預かって、納車の時間ギリギリの場合頼むことがあります。
僕「すみませんけど、納車に間に合わないので洗車もお願いできますか?」
某ディーラー「え?洗車もですか?」
って。この前言われました。こちらはお客さんのお車を預かってるわけであって、車に不具合がでたリコールです。洗車して返すのが当然でしょう。貴重な時間をさいて車を預かってるんですからね。
これが対業者になると急に態度を冷たくするディーラーが多い。本当の話。
こういう対応をされちゃうと、逆に勉強になるんですよ。ああ、このディーラーは我が社のことをお得意様と思っていないな・・。と。対応が良いフロントマンがいるディーラーは強いです。
車検整備でお客様満足度をあげるって言葉にすれば簡単なことなんです。
お客様の期待を超えるサービスを提供できた時。これがCS向上へ繋がる。こんな当たり前のことなんだけど、周りのレベルが上がっていくにつれお客様目線も高くなってくる。ハードルが上がるわけですね。
このハードル以上を提供する。本当に整備業界ってこの10年でガラッと変わったって実感します。不良チックなヤンチャな整備士にいちゃんが、かっこよく整備して直す時代だけでは通用しなくなってきています。
それをしたければ他の工場以上の技術力がなければダメです。最後の砦というか駆け込み寺的存在にでも慣れない限りはサービス業としての初心を思い出して、誠心誠意向き合っていかないとダメダメ。
これから先の整備業界って、顧客目線をもっていかないとどんどんと他にお客様を取られてジリ貧を迎えて行ってしまいます。そこにすら気づいていないところは激ヤバです。
技術があるのは当たり前。愛想よく丁寧に。子供や女性の入りやすいお店造りをしていかないとこの先整備工場は氷河期を迎えるのは明白なのです。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。